法改正で、マンションの建て替えは進むのでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2026.11.3

ご質問

中古マンションの購入を検討しています。2026年に法律が改正され、古いマンションの建て替えがしやすくなったと聞きました。これから、築年数の経ったマンションの建て替えがどんどん進んでいくのでしょうか?

2026年4月に改正区分所有法が施行され、マンションの建て替え等に関するルールが大きく変わりました。背景にあるのは、「マンションの老朽化」と「区分所有者の高齢化」が同時に進む、いわゆる「2つの老い」の問題です。修繕や建て替えの必要性が高まるなかで、合意形成が難しくなっていくことが懸念されているのです。今回の改正によって建て替えが進んでいくのでしょうか。

今回は、旧耐震マンションで管理組合の理事を務めたこともある、マンション管理士で宅地建物取引士の“こっしー”が、法改正のポイントと今後の建て替えの見立てについて解説してまいります。

マンションの建替えは、どのように変わったのか

これまで、マンションを建替えるためには、原則として区分所有者と議決権のそれぞれ5分の4以上の賛成が必要でした。例えば、100人の区分所有者がいて、全員の議決権が同じマンションであれば、80人以上の賛成が必要ということになります。

今回の法改正では、「一定の客観的な事由」があるマンションについて、建替え決議に必要な賛成割合が5分の4から、4分の3へと緩和されました。100人の区分所有者の例に当てはめれば、75人の賛成があればよいということです。ここで対象となっている一定事由は以下の5つになります。

1.耐震性の不足:地震に対する安全性が所定の基準を満たしていない
2.火災に対する安全性の不足:火災時の安全性が所定の基準を満たしていない
3.外壁等の剥落の危険性:外壁などが落下し、周囲に危害を及ぼすおそれがある
4.給排水管等の著しい劣化:改修が著しく困難な配管設備の劣化により、衛生上有害となるおそれがある
5.バリアフリー基準への不適合:律で定められたバリアフリー基準を満たしていない

なお、法改正によって、先ほどの4分の3以上の賛成を計算する際に、裁判所の決定によって所在等が不明な区分所有者を決議の母数から除外できる制度も設けられました。所在が分からなくなった区分所有者が増えることで、建て替えが困難になってしまうという課題への対策もとられているのです。

加えて、今回の改正では、建替えだけでなく、建物と敷地を一括して売却する方法や建物を取り壊す方法などについても、新たな決議制度が整備されました。老朽化したマンションの再生や処分に向けた選択肢を広げることで、区分所有者が将来について判断しやすくするものといえるのではないでしょうか。

法律が変わっても、建替えは簡単ではない

それでは、今回の法改正によって、これからマンションの建替えは一気に進むのでしょうか。私は、必ずしもそうはならないと考えています。建て替えの条件が緩和されたとはいえ、まだまだそれを実施するには高いハードルが立ちはだかっているからです。

そもそも分譲マンションは、多くの区分所有者が建物や敷地を共同で所有しています。そのため、建物が古くなったからといって、一部の所有者だけの判断で建て替えることはできません。このまま住み続けたい方もいれば、建て替えに前向きな人もいれば、売却したい方もいるでしょう。年齢や家族構成、経済状況もそれぞれ異なりますから、こうした方々の意見をまとめることは、決して簡単ではないのです。

さらに合意形成をさらに難しくしているのが、建て替えにかかる費用です。マンションを建て替える場合、既存の建物を解体し、新しい建物を建設する必要があるため、当然、多額の費用がかかります。建て替えによって住戸数を増やすことができれば、その売却収入によって区分所有者の費用負担を抑えられることもありますが、最近ではそのような区分所有者にとってうま味のある建て替えはほとんど行われません。

国土交通省が示した建て替え事例のデータによると、2017年から2021年に建替え後のマンションが竣工した事例では、区分所有者の平均負担額は約1,941万円となっています。1996年以前では約344万円となり、好条件で建て替えできるマンションは、既に建て替えが完了しているととらえてよいでしょう(図1)。

図1. 建て替えに伴う区分所有者の平均負担額の推移

建て替え自体には賛成したい気持ちがあっても、現実的な費用負担を踏まえると賛成はできない、というケースも珍しくないのでしょう。高齢者に向けた金融面でのサポートとして、住宅金融支援機構のまちづくり融資(高齢者向け返済特例)がありますが、負担額が増えている状況においては、それでも費用の負担が難しいという方も少なくないと想像できます。建て替えを決議するためのハードルが下がったとしても、建て替えを実現するための経済的なハードルがなくなったわけではないのです。

中古マンションを購入するとき、何を考えるべきか

では、これから中古マンションを購入する方は、今回の法改正をどのように捉えればよいのでしょうか。まずお伝えしたいのは、将来の建て替えを期待してマンションを購入することには慎重になっていただきたい、ということです。

例えば、価格も手ごろで立地もよい、築50年のマンションを見つけたとします。「あと10年もすれば建て替えになって、新しいマンションに住めるかも」と考える方もいるかもしれません。しかし、建て替えには区分所有者の合意形成だけでなく、事業採算性や法規制、資金計画など、さまざまな条件が絡み合い、いつ実現するか、そもそも実現できるかを見通すことは容易ではありません。将来の建て替えを前提にするのではなく、今ある建物を長く使い続けることを考えて、マンションを選ぶことが重要なのです。

そのために確認していただきたいのが、適切な維持管理が行われていることと、現行の耐震基準に相当する安全性が確保されていることの2点です。

まずは、維持管理について。これまで必要な修繕が行われてきたか、今後の長期修繕計画が適切に立てられているか、修繕積立金が十分に確保されているかなど、管理状態を確認することが重要です。マンションは、建てられたときの品質だけでなく、その後どのように維持管理されてきたかによっても、建物の状態が大きく変わるのです。以下のコラムも参考にしてみてください。

つぎに、耐震性能について。1981年6月以降に建築確認を受けた建物は「新耐震基準」に基づいて設計されています。それ以前の「旧耐震基準」で建てられたマンションについては、耐震診断や耐震改修の実施状況を確認することが大切です。旧耐震基準のマンションであっても、耐震補強等によって、新耐震基準に相当する安全性が確認されているものがあるのです。こちらについては、以下のコラムもご参照ください。

適切な維持管理が行われ、十分な耐震性能を備えたマンションであれば、専有部分のリノベーションをすることで、長く安全・快適に暮らしていくことができるのです。

今回は、2026年の区分所有法改正を踏まえて、マンションの建替えについて解説しました。一定の条件を満たすマンションでは建て替えの決議要件が緩和された一方で、建て替えに必要な費用や区分所有者の合意形成など、解決すべき課題は残っています。中古マンションを購入する際には、将来の建替えに期待するのではなく、今ある建物の管理状態と耐震性能をしっかりと見極めるように意識しましょう。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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