管理を買え、は本当でしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2022.3.22

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「中古マンションについて調べていると、『マンションは管理を買え』という言葉をよく目にします。立地や築年数など、マンションの価値を決める要素はさまざまだと思いますが、『管理を買え』というのは本当なのでしょうか」。

立地・広さ・間取り・方位・築年数・周辺環境などと同様に、マンションの価値を決定するひとつの要素である、マンションの管理状態。「管理を買え」といわれればその通りだと思う一方で、具体的にはどういう意味なのか、あまりピンと来ない方も多いのかもしれません。今回は、本当に「マンションは管理を買う」必要があるのか、マンション管理士である私が解説してまいります。

古いマンションが、これから急増する

早速ですが、「『マンションは管理を買え』は本当か」というご質問にお答えすると、「管理を買え」は本当です。マンションの管理の良し悪しによって、日々の暮らしやすさや今後の資産価値などに大きな差が生まれますから、マンションを選ぶ際に管理状態のチェックは欠かせません。例えば、ゴミが散らかっているようなマンションでは気持ちよく暮らせませんし、適切な修繕計画や資金の積み立てがなければそのマンションの持続可能性が心配になります。

築年数の経ったマンションが激増していくことはすでに確定しており、図1の通り、現行の耐震基準を満たす築30年超のマンション戸数は令和2年末時点では128.6万戸ですが、わずか10年後には2.3倍の301.3万戸、20年後には3.7倍の475万戸になる見込みです。古いマンションの流通が当たり前のこれからの時代においては、丁寧な手入れがなされ、持続可能性のあるマンションが高い評価を得るようになるのは必然的な流れだと考えています。

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図1. 高経年マンションストック数の予測

国・業界団体が始める、新たな制度

高経年マンションの増加に伴い、マンション管理の重要性が増していくということは、国や業界団体も認識しており、2022年4月からはマンション管理の評価に関する2つの新制度が始まります。2022年は、区分所有法改正(1983年)、マンション管理適正化法施行(2001年)に次ぐ、マンション管理における重要なターニングポイントといえるかもしれません。

マンション管理計画認定制度
改正マンション管理適正化法に基づいて始まるこの制度は、マンション管理組合が地方公共団体からマンション管理計画に対するお墨付き(=認定)をもらえるものであり、認定を受けたマンションは中古マンション市場で高く評価されることが期待されています。表1の17項目が対象となり、全項目に適合した場合に認定を受けることができます。長期修繕計画において一時金の徴収があるとNGなど、厳しく感じる項目もありますね。なお、マンション管理適正化推進計画を作成していない地方公共団体においては、本制度の対象となりません。

表1. マンション管理計画認定制度の評価基準

管理組合の運営 ・管理者等が定められていること
・監事が選任されていること
・集会が年1回以上開催されていること
管理規約 ・管理規約が作成されていること
・災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等について定められていること
・管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付について定められていること
管理組合の経理 ・管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること
・修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
・直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内であること
長期修繕計画の
作成及び見直し等
・「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及び修繕積立金額について集会にて決議されていること
・長期修繕計画の作成又は見直しが7年以内に行われていること
計画期間が30年以上で、かつ、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されていること
将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと
・計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
・計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること
その他 ・組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること
・都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること

マンション管理適正評価制度
こちらは、一般社団法人マンション管理業協会による評価制度で、マンションの管理状態を定量的に評価する仕組みとなっています。国が主導する管理計画認定制度では〇か×かで結果が出るのに対し、こちらの制度ではマンションの管理状態が100点満点で表され、得点に応じて6段階での評価がなされます。全30項目での審査となりますが、表2では審査の大項目と各項目の配点をまとめました。管理組合の収支に重きが置かれていることから、持続可能なマンション運営のためにはお金が大切だということがわかりますね。

表2. マンション管理適正評価制度の評価基準

評価項目
(大項目)
評価項目数 評価内容例 配点
管理体制 6 ・総会議事録(直近5年分の議事録が保存されているか)
・規約改正状況(標準管理規約に準拠して、主要な改正項目が規定されているか)など
20P
建物・設備 11 ・特定建物定期調査(実施状況及び報告書の保管があるか)
・直近5年間の共用部分の修繕等の履歴情報(修繕等の竣工図書の保管があるか)など
20P
管理組合の収支 8 ・修繕積立金会計収支(修繕積立金資金計画の設定 [均等積み立て方式 / 段階増額方式])
・管理費滞納額【戸数】(直前の事業年度終了時点における、管理費の滞納発生状況)など
40P
耐震診断関係 1 ・耐震性(新耐震基準適合 / 耐震診断及び耐震改修の実施状況) 10P
生活関係 4 ・消防訓練の実施状況(法令上の義務に基づく当該事業年度の消防訓練の実施状況)など
・防災対策(災害への対策が講じられているか)
10P

マンションは、管理を買うべし

ここまで解説した通り、マンション管理の重要性は日に日に増していくだろうと考えています。2022年3月現在では、同じような立地、同じような築年数であれば、管理状態によらず同じような相場となりますが、これからの時代は、管理のよいものは高く評価(=価格を維持)され続け、そうでないものは相応の評価(=価格が下落)となる可能性が高いのではないでしょうか

マンション管理の定量評価はまだまだ黎明期ですから、際立って管理がよいマンションは現時点では多くはありません。ですから、マンションを選ぶ際に意識していただきたいのは、最低限の基準をクリアしているか(修繕積立金の滞納状況や徴収額、長期修繕計画に問題が無いか)を確認した上で購入するということです。そして、住み始めてからは自身の持つマンションの評価を高めるために、管理組合の理事に立候補するなど、マンション管理に積極的にかかわることをおすすめいたします。

今回は「マンションは管理を買え」というテーマについて解説しました。これまで明確な尺度が無かったマンション管理に対して、間もなく定量的な評価制度が始まります。いよいよ、誰でもマンションを管理で買える時代がやってきそうですね。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、専門スタッフによるマンション選びからのお手伝いからワンストップでサービスを提供しております。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

持家のある方でリノベーションをお考えの方には、3月27日(日)まで大相談会を開催します。

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みなさんからのご質問もお待ちしています!/

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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