リノベ済みマンションのリスクを教えてください

リノベーションなんでも相談室 | 2025.6.24

ご質問

ポータルサイトでよく見かけるリノベーション済み物件ですが、さまざまなリスクがあるということも耳にします。リノベ済みマンションにはどのような懸念があるのでしょうか

中古マンションを探していると必ず出会うリノベ済み物件。すぐに暮らし始められるという魅力がある一方で、見えないところに問題を抱えていたらどうしようという一抹の不安を抱える方も少なくないでしょう。実際のところ、リノベ済みで売られているマンションとはどのようなリスクが潜んでいるものなのでしょうか。

今回は、これまでリノベ済みも含めて数多のマンションを見てきた、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、リノベ済みマンションのリスクについて解説してまいります。

建築のプロは警戒する、リノベ済みマンション

今回のお話においては、リフォーム済み・リノベーション済みと謳われる物件のなかで、販売のために新規で内装工事が行われた物件、いわゆる買取再販物件に着目します。不動産会社がリフォーム前の物件を買い取り、住める状態まで内装を整えたうえで販売されている物件です。

一部の買取再販物件では質の高い設計・施工がなされているものの、表面的なリフォームが行われているだけで、古いマンションが抱える課題を解決できていないものもあります。住宅や建築の仕事に携わる人でも、壁や床や天井などの裏側を見ることができない場合はリスクの判断が難しく、以下のような懸念が残ります。

懸念(1)安全性
予算の都合から表面的なリフォームしか行われていない場合は、本来は更新すべき下地や配管・配線などが手つかずのままということもあります。漏水や雨漏りなど、開けてみないと発見できないトラブルもたくさんありますから、壁や床の向こう側を想像すると不安になります(図1)。

図1. スケルトン解体時に見つかった漏水の様子

また、施工の品質・精度という面で不安を感じることはしばしばあります。以前のコラム「今後、リノベ費用はあがるのでしょうか?」でも指摘したように、腕のよい職人を確保するためにはそれなりのお金が必要ですから、コスト圧縮のために安い職人を手配しようという現場については品質もそれなりのものになってしまうのです。

懸念(2)断熱性能・省エネ性能
住宅の省エネ化を目指す国の方針もあり、将来的にはリノベ済み物件における省エネ性能は重視されるようになるでしょう。最近では性能向上を売りにしたリノベ済み物件も登場し始めましたが、残念ながら、業界全体としては中古住宅の省エネ化は進んでいません。築40年のマンションであれば、リノベ後も性能水準は40年前のままで売りに出されてしまうこともあるのです。省エネ性能の低さは、光熱費の負担が大きくなるだけではなく、健康状態の悪化、将来的な資産価値の低下にもつながりますから、無視できない問題だといえます。

懸念(3)設備・仕様のグレード
コストダウンのために安全性や省エネ性がないがしろにされているということに加えて、使用される設備機器などについても一段グレードを落とさざるを得ない場合もあるようです。高い設備を使えばいいというものではないのですが、ぱっと見では分譲なのか賃貸なのかわからないような現場を見ると、少し残念に思うこともあります。

中古マンション流通から考える、リノベ済みマンション

ここまではリノベ済みマンションの懸念について触れてきましたが、不動産屋さんに相談に行くと、リノベ済みマンションを積極的にすすめられることも多いようです。中古マンション流通の仕組みから考えてみると、不動産屋さんが積極的にリノベ済みマンションを紹介する背景が見えてきます。

背景(1)リノベ済みを売ると儲かる
買取再販業者がつくったリノベ済みマンションを、仲介業者が販売する、というのが一般的な市場の流れになります。もちろん買取再販業者が自ら販売活動を行うこともありますが、基本的にはつくり手と売り手がわかれるような形態となります。仲介会社がリノベ済みマンションを売ることができると、買取再販業者と購入者の双方から仲介手数料をもらうことができるため、通常の流通物件で成約するよりも利益が出やすい構造になっています。すぐに住める状態になっている分、その他の物件よりも成約価格が高くなりますから、よりメリットの大きい物件といえるのです(図2)。

図2. 通常の物件とリノベ済み物件の仲介手数料の違い

背景(2)リノベ済み物件は売りやすい
売りやすい、というと語弊があるかもしれませんが、未改装の物件を購入してリノベーションをする場合と比べると、圧倒的に仲介業者の業務量が少なくなります。リノベ済みマンションを売る場合は、ユーザーが目で見て判断することができますから、未改装の物件を購入する場合によくある「イメージができないから決断できない」というような迷いをなくすことができます。物件の引渡しが終われば、仲介としての業務は終了することになりますから、引渡し後にリノベーション工事が始まる場合と比べて手間がかからなくなるのです。

不動産屋だけで完結させない

ここまでリノベ済みマンションのリスクや流通の実態について触れてきましたが、最終的には家を買う人自身の判断に委ねられることになります。とにかくすぐに住める物件を買いたいという人もいるでしょうし、短期的な住み替えが前提で長期的なリスクには目をつむるという人もいるかもしれません。誰もが限られた予算の中で物件の質や立地、広さなどを検討することになりますから、自分の場合は何を優先にしたいのか、ということを冷静に考えてみるとよいでしょう。

また、リノベ済みマンションの購入や「中古マンション購入+リノベーション」という住まいの持ち方に興味を持っている方は、不動産屋さん以外の意見を取り入れることもおすすめです。不動産流通のプロ、建築のプロ、マンション管理のプロなどから幅広い知見を吸収したうえで、ご自身の住まいに対する価値観と照らし合わせてみてください。

今回は、リノベ済みマンションのリスクについて解説しました。一見すると魅力的にも思えるリノベ済みマンションですが、必ずしも十分な工事がなされているものばかりではありません。納得感のある住宅購入・住まいづくりのためには、目に見えないリスクを正しく理解し、十分な検討を行うとよいでしょう。時間に余裕があるのであれば、中古マンションを購入して、自分の好きなようにリノベーションをするというのもひとつの手かもしれません。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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