マンションを相続したらどうしたら良いでしょうか?
リノベーションなんでも相談室 | 2026.8.5
先日、実家のマンションを相続しました。当面自分たちで住む予定はないのですが、将来的には住むこともあるかもしれません。売却するか、賃貸に出すか、そのまま置いておくべきか、どのように考えればよいでしょうか
高齢化が進むなかで、実家や親族のマンションを相続するケースは今後さらに増えていくと見込まれています。「今は住む予定がないが、将来的には住むかもしれない」というように、気持ちが定まらない方も増えていくのかもしれません。2024年4月には相続登記が義務化され、2026年4月には区分所有法も大きく改正されるなど、高齢化や相続は重大な問題となっていますが、マンションを相続した際にはどのように考えるべきなのでしょうか。
今回は、マンション購入の現場で日々相談を受けている、マンション管理士で宅地建物取引士の“こっしー”が、相続したマンションの活用方法について解説してまいります。
売却するなら、10か月以内に。
まずは相続の基本的な内容からおさえていきましょう。相続税の申告・納税期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(図1)。マンションを売却して納税資金を用意しようとする場合、この10か月のなかで、遺産分割協議、査定、売却活動、売買契約、引き渡しまでを終える必要がありますから、思っているよりも時間の余裕はありません。

ただし、相続財産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除の範囲内であれば、そもそも申告・納税自体が不要となるので、10か月に縛られる必要はありません。一方で、自宅の土地評価を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」を利用することで相続税をゼロにする場合などにおいては申告書の提出が必要で、遺産分割の確定と申告を10か月以内に終えることが必要となります。相続財産額や申告の有無については家庭によって状況が異なりますが、まずは「10か月以内」を意識して動き出すとよいでしょう。
また、少し時間が経ってから売却する場合には、相続税額の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」を使える可能性があります。相続税を納めた人が、相続開始の日から3年10か月以内に不動産を売却した場合に、譲渡所得税の負担を軽くできる制度です。マンションでも利用できる制度となるので、あわせて覚えておくとよいでしょう。
売却・賃貸・放置のメリット・デメリット
住む予定が今すぐには決まっていない場合、選択肢は「売却」「賃貸」「そのまま置いておく(放置)」の3つのいずれかになります。それぞれの選択肢のメリット・デメリットについて簡単に見ていきましょう(図2)。

まずは売却する場合です。わかりやすいメリットは、不動産を現金化できるということです。その現金を相続人で分配したり、相続税の支払いに充てることも可能です。お部屋の維持管理の手間も無くなり、管理費・修繕積立金や固定資産税の支払いも不要となるので、身軽にもなります。一方で、売却してしまうと、将来的に自分で暮らすということはできません。将来住む可能性が高い、という方については売却することは悪手といえます。
賃貸についてはどうでしょうか。メリットとしては、賃料収入を得ることができる、将来的に自分が住むという選択肢を維持できる、ということがあげられます。デメリットとしては、賃貸管理の手間がかかる、不動産所得として確定申告が必要になる、賃貸借契約の内容によっては賃借人の方に退去をお願いすることができない、などが考えられます。将来的に自分で住む可能性がある場合、普通賃貸借契約ではなく定期賃貸借契約にすることで退去されないリスクを回避するとよいでしょう(図3)。

放置することのメリットは、相続したお部屋の扱い方について、判断を先送りできるということでしょう。税制の特例を特段受けなくてよい場合などは、とりあえず置いておくという判断ができると気が楽になりそうです。デメリットは、管理費・修繕積立金や固定資産税といった固定費の支払いが所有している期間ずっと発生するということです。賃貸に出す場合は固定費の支払いに賃料を充てることができますが、放置する場合はそうはいきません。また、放置しているとお部屋が傷んでしまうということもあり、時々はお部屋の窓を開けにいくなどの労力も加味したいところです。
個人的な見解としては、将来的に住むことがあるかもしれない、という不確定な状況であれば、一旦は定期賃貸借契約で貸しに出すというのが合理的な選択肢のように思えます。
自分で住む可能性が高ければ、リノベーションもおすすめ
ご自身やご家族が、1〜2年後には住むことになりそうだ、というくらい具体的な想定ができるのであれば、いまのうちにリノベーションを済ませてしまうのもひとつの手です。以前のコラム「今後、リノベ費用はあがるのでしょうか?」でも触れたとおり、資材価格や人件費の上昇によって工事費は右肩上がりの傾向が続いています(図4)。先延ばしにするほどリノベーションの施工費用が膨らむ可能性があるため、住むタイミングが近いのであれば、早めに着手してしまう方がお得になるかもしれません。

間取りのつくり方についても工夫が必要です。誰が住むのかが決まっている場合はよいのですが、自分が住むかもしれないし、こどもが住むかもしれないし、誰が住むかはっきりしないという場合には、ある程度の柔軟性を持たせた間取りをつくるとよいでしょう。以前、住まい手が定まらない状況のお客様のリノベーションを担当した際には、間取りをつくり込み過ぎず、家具で仕切ることで1LDKとしても2LDKとしても使えるような空間をつくりました。
工事を終えてからすぐに住まないようであれば、前述のように定期賃貸借契約でお部屋を貸し出すとよいでしょう。賃貸借期間満了とともにお部屋の明け渡しを受けられるので、賃借人が退去しないから自分が住めない、という事態を避けることができます。
今回は、相続したマンションの活用方法について解説しました。まずは10か月・3年10か月といった期限を意識しつつ、売却・賃貸・放置のメリット・デメリットを整理してみてください。1〜2年後の入居が見込めるならインフレの動向も踏まえて早めのリノベーションもおすすめですし、お部屋を使わないのであれば売却によって身軽になるのもよいでしょう。ご事情によって最善策は異なりますから、まずはマンションや不動産のプロ、あるいは税理士さんなどに相談してみてください。
無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、相続したものも含め、ご所有マンションのリノベーションについても承っております。ご興味をお持ちの方は、リノベーションセミナーや相談会、見学会にぜひお越しください。

“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。



