都心から離れてマンションを購入するメリットはありますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2026.9.4

ご質問

マンション価格が高くなり、都心では希望する広さの住まいを買うことが難しくなってきました。少し場所を変えれば広いマンションも選べそうなのですが、都心を離れて近郊で暮らすという選択もよいものなのでしょうか

マンションを探していると、「立地」と「広さ」のどちらを優先するかという壁にぶつかる方がたくさんいらっしゃいます。通勤や買い物に便利な都心のマンションは魅力的ですが、価格が高騰するなかでは、予算内で購入できるお部屋がどんどんコンパクトになってしまいます。一方で少しエリアを広げてみると、同じ予算でひと回り広いマンションが見つかることもあります。いっそ都心を離れて、利便性と環境のバランスのとれた近郊で暮らすというのはどうなのでしょうか。

今回は、自身も3度の中古マンション購入を経験し、家族の変化に合わせて広さや場所を変えて住み替えてきた、ファイナンシャルプランナーで宅地建物取引士の“こっしー”が、立地と広さのバランスについて解説してまいります。

都心では「広さ」で調整されている

まずは、いまの中古マンション市場を確認してみましょう。(一社)東日本不動産流通機構のデータによれば、2026年7月に成約した中古マンションの1平米あたりの単価は、東京都区部で135.77万円、東京都多摩地域で58.44万円、千葉県で41.37万円となっています。70平米に換算すると、それぞれ約9,500万円、約4,100万円、約2,900万円ですから、同じ首都圏であっても立地によって大きな差があることがわかります。

ただ、同データで見るべき違いは単価だけではありません。実際に成約したお部屋の平均専有面積に着目すると、同じ月の平均専有面積は、東京都区部が56.18平米、多摩地域が64.93平米、埼玉県が67.22平米、千葉県が71.24平米となっています(図1)。都区部と千葉県では平均で約15平米(約9畳分)もの差があり、かつ、4,810万円も安くおさえられているのです。

図1.首都圏エリア別 中古マンションの成約状況

つまり、都心では価格が上がった分だけ「広さを削る」という選択を多くの方がとっているようです。誰しも予算には上限がありますから、立地を優先するためにコンパクトな物件を選ぶという考えは納得できますが、「立地」か「広さ」で悩むようであれば、一度立ち止まって考えてみる価値はありそうです。なお、今回は、都心への通勤・通学が現実的な都心周辺エリアを便宜的に「近郊」と呼ぶことにします。

面積は、リノベーションでも増やせない

マンション選びでは「立地は後から変えられないので、なるべく立地を大切にしましょう」といわれることがよくあります。これはその通りで、リノベーションで間取や設備、内装は大きく変えられますが、マンションそのものを駅に近づけることはできません。そのうえで、もうひとつおさえておきたいのは、面積はリノベーションでも増やせないということです。

もちろん、コンパクトなお部屋を広々と使えるようにすることは、リノベーションのいちばんの得意分野です。以前のコラム「家族で暮らすマンションは、何平米あれば十分ですか?」でもお話ししたように、使われていない廊下をなくし、寝室を必要以上に大きくせず、収納を適切な位置にまとめれば、数字以上に広く感じられる住まいは十分につくれます。それでも、できることには限界がありますから、「広さがあると何ができるのか」も一度具体的に思い浮かべてみるとよいでしょう。

ゆったりした暮らしの事例もたくさんあります

「MUJI INFILL 0」でリノベーションされたお住まいから、広さを活かした事例を3つほどご紹介します。いずれも近郊エリアの、80平米台から100平米近くの住まいです。


「生活動線を考え抜いて、回遊できる空間をつくりました」
神奈川県横浜市/82.97平米/ご夫婦
ピアノの演奏とリモートワークができるワークスペース、大きめのウォークインクローゼット、キッチン脇のパントリー。充実した各スペースに加えて、住まいのなかをぐるぐると回遊できるつくりにもなっています。


子どもたちが遊んでいるところを見て、この住まいにしてよかったと感じています
千葉県千葉市/99.87平米/ご夫婦+お子さま2人
ご家族で過ごす時間を何よりも大事にしたいと考え、広々としたLDKを確保しました。新築であれば、一般的には4LDKあるいは5LDKの間取がつくられる広さですが、細かく区切られた間取とはまったく異なる豊かな住まいとなっています。


さまざまな要素がいい具合に「溶け込んだ」住まいになったと感じています
東京都多摩市/83.88平米/2人暮らし
リモートワークが主流というお仕事に合わせて、都心から離れて広さのある物件を選ばれました。80平米超の空間で、間仕切りを最小限にした大空間をつくることで、これまで集めてきた家具や雑貨などのインテリアが心地よく収まっています。

大きなダイニングテーブルを囲む団らんの時間。季節のものまで無理なく収まる収納。あきらめずに置けたピアノや好きな家具。仕事に集中できる場所。広さがあるからこそ実現できることは、こんなにもあるのです。ちなみに、こうした80平米台の広さを都区部の平均単価で購入するとすれば、1億円を超えてしまいます。近郊という選択が、この暮らしを可能にしているわけです。

私自身「車は一生持たない」と思っていました

少し私自身の話をさせてください。東京都中野区で子ども2人の4人家族で住んでいたときには、「車を持つことは一生ないだろう」と本気で思っていました。駐車場代も含めた維持管理のコストを考えると、どうしても優先順位が下がってしまうのです。ところがその後、大阪に移り、住まいにも家計にも少しゆとりが出たことで、自然と車のある暮らしになりました。

実家にも車がなく、車のある暮らしには馴染みがなかったのですが、いざ乗るようになると暮らしが想像以上に変わりました。休日に出かける先の選び方が変わり、買い物や送り迎えの負担も軽くなりました。いまは家族が5人になりましたが、中野区にずっと住み続けていたら、もしかしたらこのような暮らしはできていなかったかもしれません。住宅にどれだけお金を配分するかという判断は、住まいの外側にある暮らしまで変えることになるのです。間取や駅距離と同じくらい、「残ったお金で何ができるか」もぜひ並べて考えてみてください。

都心部だけが資産価値が高い、わけではない

最後に、資産価値という面についても少し触れてみます。マンションを選ぶ方であれば、将来の資産価値も気になるのではないでしょうか。たしかに都心部のタワーマンションなどでは大きな値上がりが見込めるものがあったり、流動性が高かったりと、魅力的な部分は多いと思います。

一方で、「都心でなければ資産価値がない」というほど単純でもありません。(一社)東日本不動産流通機構の2026年7月のデータでは、成約単価の前年同月比は東京都区部がプラス2.7%、多摩地域がプラス10.5%。成約件数は都区部が7か月連続で減少している一方、多摩地域は4か月連続で増加しています。単月の数字で市場を語ることはできませんが、「都心だけが強い」という前提が少しずつ動きはじめている、とはいえそうです。

近郊であっても、都心アクセスのよい駅、生活利便性の高い街、一定の規模があるマンション、適切に管理され修繕計画が整っているマンションは、将来も需要を維持できる可能性があります。以前のコラムで繰り返しお話ししてきたように、中古マンション選びでは立地だけでなく、耐震性や管理状態、省エネ性能なども重要になります。近郊だから資産価値が低いということではなく、マンション選びとリノベーションの内容を間違えないことが肝心です。

今回は、近郊でマンションを購入することの価値について解説しました。過去のコラムではコンパクトな暮らしに言及することも多かったのですが、改めて自分の暮らしの変化も見つめ直すと、近郊のゆったりした暮らしも気に入っているなと感じています。自分たちがこれから長い時間をどう暮らしたいかを考え、その暮らしに合った立地や住まいを選んでみてください。マンション探しに行き詰まったときには、一度地図を広げてみるとよいかもしれません。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、資金計画や立地・マンション選びから、暮らしにあわせた設計・施工・アフターサポートまで、ワンストップでサービスを提供しております。ご興味をお持ちの方は、リノベーションセミナーや相談会、見学会にぜひお越しください。

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

開催予定の「イベント・相談会・物件見学」