古いマンションのデメリットを教えてください

リノベーションなんでも相談室 | 2021.3.16

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「中古マンションのリノベーションは、とても魅力的な住まいの持ち方だと思うのですが、古いマンションではいろいろな問題があるのではないかと心配です。新しいものと比べて、どのようなデメリットがあるのでしょうか」。

古いマンションに対しての漠然とした不安というのは誰もが抱くものですよね。どこからが「古い」マンションなのか、という問題もありますが、築年数の経ったマンションの購入を検討する際にはデメリットも把握しておくべきです。今回は、あまり語られることのないネガティブな側面、中古マンションのデメリットについて解説してまいります。

「古い」マンションとは?

ひとことで「古い」といっても、感じ方は人それぞれですから、まずは「古い」マンションの定義づけをしてみます。たとえば、このような考え方はどうでしょうか。

・新築~築20年程度は、「新しいマンション」
・築20年~築40年程度は、「やや古いマンション」
・築40年以降は、「古いマンション」

という定義付けです。2020年の首都圏の中古マンション市場を見ると、平均築年数が21.99年となっていますから、築20年頃というのはひとつの目安といえそうです。築40年というのは、1981年の建築基準法の大改正(耐震基準の分かれ目)や、1983年の区分所有法の大改正の付近ということになりますから、ざっくりした分類としては悪くなさそうです。

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図1. 「古い」マンションの分類

中古マンションのデメリット

ここからは、中古マンションのデメリットをひと通り紹介した上で、「古さ」別の注意点というかたちで整理していきます。今回、中古マンションのデメリットを考えるにあたっては、(1)安全性、(2)快適性、(3)資産性という3つの軸に絞って考えてみましょう。

(1)安全性に対してのデメリット
安全性を考える上で、まず思いつくのは、【耐震基準】を満たしているか否か、ということではないでしょうか。詳しくは以前のコラムをご覧いただければと思いますが、幾度の大地震と安全な建物をつくるための研究を経て、現在の基準がつくられています。安全な住宅を増やすためには、耐震改修建替えが必要になりますが、それらを劇的に推進することは難しいというのが現実です。

マンションの共用配管等を含めた、【メンテナンスの容易性】という点についても、古いマンションにおいては問題になる場合があります。例えば、図2のような、下階住戸の天井裏に排水管を通す「スラブ下配管」というつくりになっている場合や、給排水管がコンクリートに埋まっている場合などは、配管更新が困難になる場合もあります。

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図2. スラブ下配管の模式図

(2)快適性に対してのデメリット
快適性という切り口でいうと、【断熱性能】が思い浮かびます。こちらも以前のコラムでお話したことがありますが、適合義務化こそされていないものの、住宅に求められる断熱性能は高くなる方向で進んでいます。マンションが建てられた年代ごとの断熱性能の基準の違いや、サッシの劣化等によって、新しいマンションに比べて古いものは断熱性能が低く、快適性に劣るといえます。

【騒音】という点についても、古いマンションならではのデメリットがあるといえます。スプーンを落としたような軽い音については、リフォーム・リノベーションの際に改善しやすいのですが、子供が飛び跳ねるような、コンクリートを伝わる重い音については、コンクリートスラブの厚さが重要な意味を持ちます。古いマンションでは、コンクリート躯体が比較的薄いことも多く、問題になりやすいかもしれません。もっとも、新しいマンションでも古いものでも、マンションで暮らす以上、近隣騒音については常に考える必要がありますが。

細かなところで、【電気・ガス容量】なども、古いマンションでは問題となることがあります。たとえば、主に14畳用以上のエアコンでは、200Vの電源を必要とするものが多くなりますが、マンションの電気設備上、200Vの電源を設置できない場合もあります。あるいは、電気のアンペア数やガス給湯器の号数を上げたくても、十分に大きくできないこともあるのです。

(3)資産性に対してのデメリット
資産性については、上記でご紹介した耐震基準への適合可否が非常に重要な要素となりますが、それに加えて【管理運営】という点もポイントとなります。古いマンション=管理が悪いなどということは一切ないのですが、もしも不十分な管理運営が続いてしまった場合、築年数が経てば経つほど挽回が困難になります。2022年4月からは「マンション管理計画認定制度」も始まる予定となっており、これまで以上にマンションの管理運営状況が資産性に与える影響が大きくなりそうです。

なお、単純に「築年数が古い=資産性が低い」という考えを持つ方もいるようですが、それは正しくありません。東日本不動産流通機構の2021年2月の発表によれば、新築時から築年数を経るごとに成約価格は下落していくものの、築26~30年程度以降では横ばいとなるということも見て取れます。資産性とは絶対的な価格ではなく、価格の安定性(+流動性)を意味しますので、誤解のないように。

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図3. 中古マンションの築年帯別平米単価(2021/2/26, 東日本不動産流通機構)

最後に、ご紹介したデメリットがどのくらい該当するのかを、新しい・やや古い・古いの分類ごとに、表1にまとめてみます。あくまで主観的に〇△×をつけておりますが、「新しい」と「やや古い」の差があまりないことが見て取れますね。また、古いマンションの中には、良好な管理状態で耐震補強も実施済みというものもありますが、それでもメンテナンス性や断熱・騒音等の新しいものとの違いを、中古マンション購入検討者は理解する必要がありそうです。

表1. 「古さ」の分類別のデメリット

安全性 快適性 資産性
耐震 メンテナンス 断熱 騒音 電気ガス
容量
管理運営
新しい
マンション

問題ない場合が多い。

問題ない場合が多い。

適合義務は存在しないため、性能が不十分なものも多い。

集合住宅である以上避けられない。

問題ない場合が多い。

現時点で問題があったとしても挽回する期間が長い。
やや古い
マンション

ただし、建築確認申請の時期に注意。

年代によっては注意が必要。

既存の断熱性能は不十分と考えるべき。

サッシの性能等による音漏れにも注意が必要。

物件毎に注意が必要。

致命的な問題がなければ、まだ挽回が可能。
古い
マンション
×
特殊な場合を除き、旧耐震基準に該当。

更新性に劣る構造が増える年代。
×
無断熱の場合もあり、断熱改修は必須。
×
特にスラブ厚の薄いものが存在する年代。

200Vが使えないマンションも存在する。

問題がある場合、挽回のための時間が短い。

今回は、中古マンションのデメリットというネガティブな部分について解説しました。ご紹介したデメリットの中には、手の打ちようがないものがある一方で、物件の見極めやリノベーションによって解決・改善できるものもあります。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、物件探しのお手伝いから快適な住まいづくりまで、ワンストップサービスを提供しております。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

みなさんからのご質問もお待ちしています!/

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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