古いマンションは寒いですか?

リノベーションなんでも相談室 | 2020.5.4

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「リノベーションに興味がありますが、古いマンションだと冬は寒いのではないかと心配しています。実際どうなのでしょうか?」

そのご心配、よくわかります。リノベーションで自分に合った間取りや内装にできそうだとワクワクする一方で、古いマンションだと新築と比べて断熱性能が低いのではないかというご不安があるのですね。今回は、マンションの断熱性能とリノベーションでできることについて解説してまいります。

古いマンションは、確かに寒い

みなさんはマンションにどのようなイメージをお持ちでしょうか。比較的冬でも暖かく、気密性も高いイメージを持つ方が多いかもしれません。では、古いマンションについてはどうでしょう。鉄筋コンクリート造のマンションだから、ある程度は断熱性能が高そうだけど、すきま風が入り込んできたりして寒そうだな、などと感じる方もいるのではないでしょうか。確かにその通りで、古いマンションでは断熱性能や気密性が新築には劣る場合がほとんどです。

断熱について、少しだけ具体的に考えてみましょう。例えば、上下左右ともに別の住戸があるような、いわゆる中住戸を想像してみてください。この場合、断熱が必要となるのは、バルコニーに接する壁面と共用廊下に接する壁面になります。断熱が必要になるのは外気に接する面なので、中住戸の場合はその2面だけですね。お察しの通り、角部屋の場合は断熱が必要な面がもう1面増えますし、最上階であれば天井面、最下階であれば床面にも断熱が必要です。断熱性能の基準も存在し、昭和55年の制定後、平成4年、平成11年、平成25年に省エネルギー基準の改正がなされています。住宅の場合はこれらの基準に適合させる義務はないものの、新しいものの方がより厳しい基準のもとで建てられていることがわかります。

実際のリノベーションの現場では、新築時に全く断熱の施工がなされていないマンションに出会うこともあり、さぞかし寒い冬を越えてきたのだろうと想像したりします。また、新築時に施工された断熱材や窓サッシが経年劣化することで、断熱性能や気密性をさらに低下させることになりますから、やはり古いマンションは断熱性能という面では新しいものに劣っているといえます。

リノベーションで、解決できます

ただし、これらの断熱性能についての問題は、実はリノベーションで解決できます。古いマンションだからそれなりにしかならないだろう、と諦める必要はありません。これまでお話してきた通り、古いマンションは断熱性能に劣るというのは事実ですが、その欠点は正しくリノベーションをすることで補うことができるのです。

外気と接する面には断熱が必要になることについては、先ほど説明した通りです。ですので、リノベーションを行うときに、外気と接する面、例えば中住戸であればバルコニー面と共用廊下面に十分な断熱材を施工することが効果的です。新築時に施工された断熱材が残っていることもありますが、それだけでは性能として不十分な場合がほとんどですので、新たに断熱材を足すとよいでしょう。

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熱の出入りで忘れてはならないのが、窓です。冬場の熱の流出の約5割、夏場の熱の流入の約7割が窓からであるという調査結果もあります。マンションの場合、性能の高いサッシの採用率は非常に低く、国土交通省の調査によれば、平成28年度に新築分譲されたマンションでさえペアガラスや二重サッシを採用したものは46.9%にすぎません。古いマンションのほとんどは断熱性能の低い1枚ガラスのアルミサッシが採用されていますから、十分な対策が必要です。サッシはマンションの共用部にあたるため、規約によりサッシ自体の交換が制限されている場合が多く、リノベーションを行う際にインナーサッシを取り付けることが一般的です。

断熱性能向上は、想像以上に大切です

最後に触れておきたいのが、断熱性能向上の重要性です。住まいの断熱性能を向上することは、もちろんエネルギー消費量や光熱費の削減につながりますが、それだけではありません。例えば、住居内の温度差が原因で発生するヒートショックでは、年間19,000人もの命が奪われているという推計もあります。断熱性の高い住環境ではより風邪をひきにくくなるという研究結果もあります。住まいの断熱性能は、暮らす人の健康や生命にかかわる問題なのです。リノベーションによって古いマンションの断熱性能を向上させることができるという事実は、ぜひ頭の片隅に記憶しておいてください。

今回は、マンションの断熱性能についてお答えしました。リノベーションというと、見た目の格好良さや間取りづくりの自由さに目が向きがちですが、健康や生命にかかわる断熱性能の向上も実現できるのです。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、こちらの記事のように断熱性能にこだわった住まいづくりを提供しております。ご興味を持たれた方はリノベーションセミナーや相談会にお越しください。

\みなさんからのご質問をお待ちしています!/

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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