すべては「感じ良いくらし」のために

コラム | 2019.10.21

連載「平屋が理想の家になる」、前回のコラム「平屋なのに吹抜けがある?」では、「陽の家」のかたちが織りなす、内と外のつながりと空間についてお話してきました。
これらの目に見える家のかたちや空間は、「目に見えない性能」に支えられています。
これまでも、何度か無印良品の家の「構造性能」や「温熱性能」についてご紹介してきましたが、あらためて「陽の家」の「見えない性能」についてお話ししたいと思います。

一室空間を支える「見えない性能」
無印良品の家の構造は全て、特別な木造軸組構法(SE構法)です。
「木造軸組」は、縦軸(=縦にのびる木の柱)と横軸(=梁)で構成されており、古くから日本の建造物に使われている構法です。日本には、柱や梁(はり)に加工しやすい「木」が豊富にあり、石やレンガを積み上げてつくる西洋式に比べて、柱と柱の間を「開口部」にできる軸組構法は、夏に高温多湿な日本の風土に適したつくり方であることは広く知られているところです。

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しかし、木を削って組み合わせる柱と梁の接合部分は、一定の柔軟性があり良い面もありますが、柱と梁だけでは耐震上有効な強度が担保できないため、壁の少ない大空間の設計には、制約が出ることがあります。

間取り設計の制約を少なくし、より耐震性能を高めるために、木と木の接合部に強靭な金具を使用するSE構法は、簡単にいうと木造と鉄骨造の良いとこ取りをしています。
従来の木造軸組構法では、耐震性能の観点から実現しづらい「かたち」や「大空間(一室空間)」を、鉄骨と同じ構造計算をすることで耐震性能を確かなものにしているのです。

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コラム「平屋なのに吹抜けがある?」でご紹介した、吹抜けのように天井がすとんと抜けている勾配天井も、実は従来の木造軸組構法では実現しにくいかたちです。

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従来の木造軸組構法で「陽の家」をつくるとすると、上記のように水平梁を入れて、その梁の上に束(つか:梁を支える小柱)を立てて屋根を支えることになります。

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「一室空間、かつ、梁も束もない勾配天井」を実現するには、SE構法の構造計算で安全性を確認した「登り梁(水平ではなく屋根勾配と同じ勾配の梁)」を使うことができます。そうすることで室内には、水平梁も束もでないシンプルな勾配天井となります。

このように、大きな開口部(窓)があり、かつ柱や水平梁も束も壁すらない勾配天井のある一室空間は、日本の風土にあった木造軸組構法に鉄骨造の強靭さを加えた「SE構法の構造性能」があってはじめて実現するのです。

陽の家の「一室空間、かつ、梁も束もない勾配天井」を支えるもう一つの「見えない性能」が「断熱性能」です。
コラム「冬、エアコンなしでも暖かい家」でもご紹介したように、無印良品の家の「一室空間」は、室温を一定に保つダブル断熱・トリプルガラスで支えられる高い断熱性能により、最小限のエネルギー(エアコン)で家中を冷暖房できるのが特長です。

「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」という吉田兼好の名台詞の呪縛により、時代が変わっても日本の暮らしは家全体を暖める全館暖房に違和感とエコ視点での罪悪感を持ち、「人がいる時間・部屋だけを暖める局所・間欠暖房」が採用されてきました(コラム「日本の家はずっと無暖房住宅でした」参照)
それゆえ、無印良品の家のような「一室空間」は、常に全体を冷暖房しなければならないので、莫大なエネルギーが必要、もしくはいくら暖房(冷房)をしても寒い(暑い)のでは?と誤解される方が多いようです。
しかし、実はその逆で、間仕切りのない一室空間は高い断熱性能があれば、わずかなエネルギーでトイレや洗面なども含めた家中の冷暖房が可能で、省エネかつどこに居ても快適な家となるのです。

「見えない性能」を見える化
このように、「陽の家」の一室空間は「木の家」や「窓の家」と同様に、構造と断熱という2つの見えない性能によって、これまでの家では想像できないくらい高い安全性と快適性を実現しています。
これらの性能は目には見えませんが、1棟1棟構造計算と温熱シミュレーションを実施することで、「性能の見える化」をしています。
見える化とはつまり、経験と勘に頼るのではなく、無印良品の家が考える「感じ良いくらし」のために必要な性能をきちんと論理的に裏付けながら設計をする、ということです。

目に見えるかたちや空間、素材や設備の心地よさに加えて、「目には見えないが1棟1棟計算することで裏付けされた性能」により、もたらせる快適性。すべては「感じ良いくらし」のために考えつくされています。

みなさんは、このような家づくりについて、どのように考えられますか?
ぜひご意見ご感想をお寄せください。お待ちしております。