このウッドデッキは何のためにあるのでしょう

コラム | 2019.10.15

連載「平屋が理想の家になる」、前回までは「陽の家」全体のかたちや、そのかたちが織りなす、内と外のつながりについてお話しました。
今回は、内と外をつなぐウッドデッキについてご紹介します。

「縁側」はなぜ、いまの家にないのでしょう
昔の日本家屋は必ずといっていいほど、「縁側(えんがわ)」や「濡れ縁(ぬれえん)」を、室内と庭の間に設けていました。

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とくに「縁側」は、畳の居室と庭との間に設けられ、さまざまな役割を果たしてきました。
「全く断熱性能がない」といっても過言ではない昔の日本家屋では、縁側があることで、居室の障子が直接外気に接しなくてすむので、寒さ暑さを和らげる「緩衝帯」の機能もはたしていたといえます。

そして、この内と外との緩衝帯である「縁側」が、近所の方々とのコミュニケーションの場として活用されていました。
日常的な「近所づきあい」は、いちいち訪問の約束をしたりしません。偶然顔があっての挨拶から、ちょっとした世間話がはじまったりするものです。そんな際に、ご近所さんを外に立たせ放しでは無粋ですし、かといって、家に上げるほどの要件もないと相手も遠慮するでしょうから、家と外の中間地点に座っていただいてのおもてなしがちょうど良かった、というわけでしょう。

ところがこの縁側は、日常の生活スペースとしては、寝ることも食事をすることも収納として使うこともなく、たまに「通路」の役目を果たすくらいです。
現代は土地の価格が上がって大きい家が持ちづらくなったり、家そのものがある程度断熱性能を備えていたり、また近所づきあいが希薄になったこともあり、この縁側が廃れてきたのは、仕方のないことかもしれません。必然的に現代の家のリビングは、窓を開ければいきなり外(庭かテラス)というのがスタンダードになってきています。

ウッドデッキで何をしますか?
陽の家」では、コラム「内と外/家と庭の関係を考える」でご紹介した通り、防腐処理を施した国産杉材のウッドデッキを、家と庭を「シームレスにつなぐ緩衝帯」として設定しています。

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陽の家」は標準的な家よりさらに高い断熱性能を持っていますから、ウッドデッキに昔の縁側が担っていた、暑さ・寒さを和らげる役割は必要ありません。
だからといって、ご近所とのコミュニケーションの場に特化しました! というつもりもありません。
陽の家」は、これからの時代の新しい暮らしのかたちを念頭に置いていますから、例えばこの家で、人気がないような場所での「田舎暮らし」となった場合、そもそもご近所付きあいするお相手がいないかもしれないからです。

では、このウッドデッキは何のためにあるのでしょう?
断熱性能のためでも、近所づきあいのためでもなく、内と外のいいとこ取りをして、気持ちの良い時間を自由なかたちで過ごすため、なのです。
陽の家」のフラットな一室空間が、大きな開口によって室内だけに留まらず外にも延長し、庭はリビング空間に生まれ変わります。本来なら室内で行われる営みを、庭に出して陽を当ててみると暮らしに新たな潤いが生まれるはず。もちろん、結果的にそこにご近所さんが集うことになるかもしれませんが(笑)。

軒からはみ出して広がるウッドデッキには、強弱、向きなどに揺らぎのある気持ちの良い「外の空気」が流れますが、足もとのウッドデッキは、自然の地面から浮いた状態で「外」とは緩く結界をつくりながら、緻密に設計された「内」につながり、外の「計算外」の不安定感を和らげてくれます。

例えば、敷地の境までウッドデッキをめいっぱい広げて、途中にある樹木は切らずに残すことで、さらに「自然」(外)の荒々しさと「人工」(内)の繊細さが溶け合う、気持ちの良い場が生まれます。

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または、ウッドデッキを一部掘り込んだ居場所をつくれば、家のなかのような暖かさと外気の爽やかさが交じり合い、いつまでも寛いでいたい、心地良い時間が流れる空間となるでしょう。

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このように、外に張り出したウッドデッキは、「シームレスに外とつながる」最も外側に位置し、屋根も何もありませんが、自由自在にデザインできる「半外部空間」となります。
ここで何をしたいか、何ができるかは、暮らす人の工夫次第で無限に広がりそうです。

このような、屋根のない半外部空間について、みなさんはどのようにお考えになりますか?
ぜひ、ご意見・ご感想をお聞かせください。お待ちしております。