平屋なのに吹抜けがある?

コラム | 2019.10.8

連載「平屋が理想の家になる」、前回のコラム「内と外 / 家と庭 の関係を考える」では家の内と外(家と庭)の関係についてお話ししました。今回は、「内部空間」をご紹介します。

間取りのない一室空間
陽の家」には、「木の家」「窓の家」と同様に「間取り」はありません。

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このプランは、「陽の家」Webページに掲載されているものです。このプランをWebで見られた方から、以下のご意見が寄せられました。

『陽の家、素晴らしいコンセプトであると思います。しかしながら、老夫婦2人で住まう日常には事欠かない間取りではありますが巣立った子どもたちの家族が帰省した際、泊めるスペースが不足です。
そのイベントは私達にとって唯一無二の楽しみです。とても残念に感じました。』

一室空間」という間取りは、夫婦2人もしくは子どもが巣立った時期には、広々と暮らせて気持ち良いかもしれないけれど、子どもが成長してある程度プライバシーの守られた空間が欲しくなったときや、巣立った家族が里帰りするときに困るのでは?と思われる方も多いようです。
しかし、実は「間取りのない一室空間」だからこそ、住まい手が間取りを自由に編集することができるのです。

永く使える、変えられる

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先ほどの間取りに、玄関からキッチンの動線をつくっておけば、引き戸を何ヶ所か追加することで、日頃は開放的な一室空間を楽しみつつ、必要に応じて引き戸を閉じることで、瞬時にプライバシーの確保された寝室2つをつくり出すことができます。

引き戸の長所の1つは、このように容易に追加できて、追加した後、開けたまま一室空間を保持したり、しっかり閉めて空間を仕切ったりできるところですが、「開けたり閉めたり」の必要がないのであれば、「家具」で緩やかに仕切ることも可能です。

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「木の家」「窓の家」と「陽の家」の一室空間の違い

ところで、同じ「一室空間」を標榜している「木の家」や「窓の家」は、実は「1階」と「2階」で間取りは仕切られています。その大きな仕切りを「吹抜け」でつないで、立体的な「一室空間」としているのです。
この「吹抜け」は、1階と2階を縦に空間をつなぐだけでなく、部分的に天井が吹抜けること(一般的に天井を一部抜いて、1階と2階をつなぐ空間を「吹抜け」といいます)の開放感をもたらしているのです。

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一方「陽の家」は平屋ですから、間仕切りをなくすことで、フラットな「一室空間」になります。
ほぼすべての空間を見渡せるので、その利を生かすためにキッチンは「アイランドキッチン」(島の様に壁から離れて独立して配置されるキッチン)を標準としています。
このアイランドキッチンにより、料理をしながら外の景色を鑑賞したり、テレビを観たり、家族の様子をうかがったり、と、視野の広い料理タイムを楽しむことができるからです。

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逆に「2階がない」ために、天井が吹抜ける開放感が出せない、というのが開発途中の悩みでした。それならいっそのこと全体に天井高を上げる…ということも検討しましたが、「天井が吹抜ける」開放感は、たとえ天井高を全て3m以上にしても出せない、ということは自明でした。
「吹抜け」の開放感は、「普通の高さ」、いえ、むしろあえて少し低い天井が一部「ポン」と吹抜けているから感じられるものだからです。

平屋の吹抜け=勾配天井

前々回のコラム「無印良品の家史上『最もシンプルな箱』ができました」でもご紹介したとおり、平屋であるからこそ「最もシンプルな箱」でなくてはならず、この外観デザインを決めていく際には、屋根のかたちのバランスをくずすことなく、この屋根であればその下の天井を高くできると考えたのが、「一部を勾配天井にする」という方法でした。
内外全てのデザインの課題が一気に紐解くようにするすると解決し、「陽の家」のデザインが決定した瞬間というわけです。

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このような梁(はり)も束(つか)もない勾配天井は、高い耐震性能をもつSE構法が一室空間を支え、詳細にわたる設計配慮によって実現しており、この「陽の家」モデル棟の場合で最も高い部分の天井高さは4.1mに達します。
リビング・ダイニング以外のキッチンや寝室部の天井高さは、サッシと軒と連続するように配慮された高さで2.3m(木の家、窓の家と同じ)です。

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この「高さのコントラスト」により、寝室から見る、または移動すると、「吹抜け」と同様の開放感を味わうことができるのです。

「陽の家」は、ワンフロアだからこそのシンプルな一室空間でありながら、空間の単調さを避ける「勾配天井」を持ち、全開口サッシで外とつながる開放感に加えて、天井が吹抜けるという空間そのものの「気持ちよさ」がデザインされています。

みなさんは、このような「平屋の一室空間」をどのように感じられますか?
ぜひ、ご意見ご感想をお寄せください。お待ちしております。