内と外 / 家と庭 の関係を考える

平屋が理想の家になる | 2019.10.1

無印良品の平屋の家「陽の家」が「性能の良いただの箱」にいきつくまでの開発の経緯を前回のコラム「無印良品の家史上『最もシンプルな箱』ができました」でご紹介しました。
「シンプルな箱=一室空間」であることの気持ちよさや永続性についてもお話ししましたが、今回は一段積み(平屋)のシンプルな箱が、いかに外とつながる快適性も追求しているか、についてご紹介します。

平屋は「陽の家」に限らず、基本的に外とつながりやすいわけですが、無印良品が目指したのは「内と外を一体化する」です。

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上の写真は「陽の家」のモデル棟がある、グランピング施設「FOREST LIVING」内にある「ダイニング・デッキ」です。
森をウッドデッキと木製のフレームで切り取っているだけのこの空間は紛れもなく「外」ですが、いったんこの木製フレームの中に入れば外とは一線を画した「住空間」となります。

実際の「家」は、雨風を防ぐだけでなく、寒さ暑さもしのがなくてはなりませんから、こうはいきません。「外部と閉ざしたいときはしっかり閉められ、開放したいときは思い切り開けられる」のが理想です。その思いを叶えてくれたのが、陽の家の「全開口サッシ」です。

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陽の家全開口サッシを開け放てば、内と外をさえぎるものは何もなくなるので、あたかも外が内になだれ込んでくるようです。ウッドデッキと床の段差がないため、室内と屋外が水平方向で緩やかにつながります。
ここで、全開口サッシからいきなり外の空間につながるのではなく、ワンクッション置くのに重要な役割を果たすのが、「ウッドデッキ」と「深い軒(のき)」です。ウッドデッキは、かつての日本の家では普通にあった「縁側」となります。

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このウッドデッキ深い軒(のき)によって、森のなかの「ダイニング・デッキ」のように「外」でありながら「内」とも感じられる空間となり、さらに全開口サッシから「内」へとつながっていくことで、「内と外がシームレスにつながる」ことが実現しています。

陽の家では、「内と外がシームレスにつながる」ことが、家と庭とが仲良く暮らすためにとても重要なことと考えています。
「窓を開けたら別世界」であっては、たとえば「天気が良いから今日の朝食は庭で食べよう」と思っても気軽に外に出づらくなるからです。シームレスでないということは、垣根がある、一貫していない空間になりますので、窓を開けて天気を確かめて、靴を履き替えて、アウトドア用のテーブルと椅子とパラソルを出して…と、大掛かりになります。
内と外がシームレスにつながっていれば、思い立ったら窓を開けて裸足のまま、部屋の中の営みを外に向けて少しだけ平行移動すればよいだけです。
こんな生活が可能なら、家の内部はそんなに広くする必要もないのではないでしょうか。

ところで、「外とつながるシンプルな箱」は、「外」をシームレスに「内」に導き入れるだけでなく、この箱自体が「外」の空気、雰囲気を変える、という効果も期待できます。
実際、「陽の家」のモデル棟の現地は、建設前は「雑木林」でした。

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ここに、「陽の家」が置かれると、途端にリラックスできるリゾートに様相が変わります。

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雑木林をリゾートに変えるように、普通の住宅地でも、庭のしつらえ方ひとつで、内外一体の空間が家と庭の空間を変化させ、暮らしを彩ることができそうです。

このように、「陽の家」の内と外(家と庭)の関係は、「外とシームレスにつながり庭を楽しむ家」と「シンプルで美しい箱(家)が置かれた庭」という相乗効果で、その場の空気感さえ変えていくことができるのではないかと考えています。

みなさんは、このような「陽の家」の内と外の関係についてどのようにお考えでしょうか。
ぜひご意見をお聞かせください。お待ちしております。