マンションは都心に買うべきでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.12.3

ご質問

マンションは都心の一等地に買うべきだ、という言説を目にすることがあります。せっかくマンションを買うのであれば、やはり都心を選ぶのが正解なのでしょうか

土地の値段が高い都心に住まいを構えることができるというのは、マンションのメリットのひとつといえます。土地を購入して戸建住宅を建てるほどの資金力が無かったとしても、マンションであればギリギリ手が届くかもしれないと考える方もいるのではないでしょうか。不動産は一にも二にも立地が重要という言葉にならい、都心のマンションを選ぶのが正解なのでしょうか。

今回は、自身も都心でのマンション購入と売却経験を持つ、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、マンション購入時の立地の選び方について解説してまいります。

資産価値の高さなら、都心が有利

東京でいえば、都心3区(中央区・千代田区・港区)や都心5区(3区+新宿区・渋谷区)という表現があるように、都市の中心部には人気の高い地域が存在します。人気がある場所ほど不動産の価格は下がりにくくなりますから、資産価値の高さを求めて都心のマンションを購入するという選択はきわめて合理的です。

実際、(株)東京カンテイが発表している「2023年 中古マンションのリセールバリュー(首都圏)」を見ると、都心の駅が上位を独占していることがわかります(表1)。築後10年が経過したマンションを対象とした調査なのですが、都心部においては新築時の2倍の価格になっているものも珍しくないようです。海外投資家や富裕層からのニーズもある東京都心では、他の地域に比べても顕著に不動産価格が上昇しているのです。

表1. 首都圏のリセールバリューランキング

これからも同様のペースで東京都心の価格上昇が続くとは限りませんが、価格が大きく下落する可能性は低いといえるでしょう。人口減少による都市部への人口集中が進むにつれて、相対的な都心の不動産価値は高まりますから、資産としての安定性という面においては当面心配する必要がなさそうです。

ただし、ひとつ難点があるとすれば、都心のマンションは価格が高いということです。表1には70平米換算の中古価格も記載しておりますが、上位20駅のうち19駅については1億円超えとなっています。高所得者または富裕層でなければ購入が難しい市況になっているのです。

しっくりくる街選びも大切

資産価値という軸だけで考えるのであれば、都心の駅近・タワーマンションを選びたいところですが、そもそも住まいに求められるものは資産価値だけではありません。自分の暮らしにあった街を選んだり、旅行や車など住宅以外の支出を踏まえて予算を決めたりと、資産価値とは別軸で暮らしやすい住まいのあり方を考えることもまた重要なのです。ですから、「都心を選ぶのが正解か」というご質問にお答えするとすれば、それが正解だと考える人にとっては正解である、という回答になるでしょう。

マンションを購入するということは、同時に住む街を決めるということでもありますから、自分が住まいや街に求めているものについて棚卸をしてみてください。活気のある商店街での買い物を楽しみたい方もいるでしょうし、大型ショッピングモールがあった方がありがたいという方もいるでしょう。子どもと遊ぶための大きな公園がほしいという方もいれば、学習塾が充実した地域に住みたい方もいるかもしれません。自分にとってしっくりくる街とはどのような場所なのか、じっくり考えてみるとよいでしょう。

図1. 団地内の商店街(若葉台団地)

私自身、はじめてマンションを購入した時は山手線の真ん中あたりの、いわゆる都心の地域を選んだのですが、自分たちの生活と周囲の環境や物価にギャップがあり、なんだか暮らしにくいなと感じたことをよく覚えています。売却の際に困らなかったのは立地のよさゆえですが、人気のある場所が住みやすいとは限らないということは勉強になりました。

都心でマンションを購入するなら

街選びについても検討した結果、やはり都心でマンションを買いたいが、新築・築浅は予算的に厳しいという場合にはどのような解決策があるでしょうか。マンションは、立地・広さ・築年数の掛け算で価格が決まりますから、立地を重視するのであれば、広さ・築年数・予算のいずれかで調整をすることになります。

対策(1)コンパクトなお部屋を選ぶ
たとえば、(公財)東日本不動産流通機構の月例速報によれば、2024年10月度の東京23区の中古マンションの成約平米単価は115.14万円となっています。リノベーションの工夫によって、10平米コンパクトな物件を購入することができれば、1,151万円も安く購入することができますから、可能性は広がりそうです。本当に必要な広さについては、以前のコラム「家族3人、50㎡台で暮らせるでしょうか?」もご確認ください。

対策(2)築年数の経ったものを選ぶ
相場上昇の影響を除けば、築年数が経つにつれて価格が下がるのがマンション市場の基本的な動きになります(図2)。新築・築浅は購入できなくても、築35年のものなら購入することができるかもしれません。ただし、古いものを選ぶ場合には、長期的に価値を保てるのか、という視点で物件を選んであげるとよいでしょう。具体的には、旧耐震の物件はできるだけ選ばないようにする、管理状態の良いマンションを選ぶ、などのポイントがありますから、「旧々耐震とはなんですか?」「買ってはいけないマンションはありますか?」もご参照ください。

図2. 築年数別成約平米単価(首都圏)

対策(3)予算を再検討する
誰しも予算を決めたうえでマンション選びをしていると思いますが、そもそも適正な予算設定ができているのかという点も再検討してみてもよいかもしれません。ファイナンシャルプランナーさんなどと相談し、無理のない予算・少し背伸びした予算など、いくつかのパターンで金額を提示してもらうのもよいでしょう。また、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税もありますから、親御さんや祖父母にも一度相談してみてはいかがでしょうか。思いがけない援助があるかもしれません。

今回は、マンション購入時の立地の選び方について解説しました。資産価値を求めるなら都心・駅近・タワーマンションという選択もよいですし、自身の叶えたい暮らしにあわせた予算や立地を選択するのもよいでしょう。家づくりに正解はありませんから、都心にこだわることなく、自身の価値観にあわせたマンションを選んでみてください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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