買ってはいけないマンションはありますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2022.5.31

ご質問

マンション購入に向けた情報収集を開始しました。なんとなくマンション選びで見るべき点はわかってきたのですが、「このようなマンションは買ってはいけない」というポイントがあれば教えていただけますでしょうか。

玉石混交の中古マンションですから、正しく良し悪しを見極めることはとても大切です。「買ってはいけない」というと少々言葉が強すぎる気もしますが、「できれば避けたい」「注意した方がよい」マンションは実際にあるものです。

今回は、失敗しないためのマンション選びの注意点について、宅地建物取引士でマンション管理士の“こっしー”が解説してまいります。

できれば避けたいマンション

はじめに、できれば避けたいマンションから見ていきましょう。これらの特長を持つものについては、どうしても立地を重視したい、どうしてもこのマンションに住みたいなど、よほど強い理由がなければ避けた方がよいでしょう。

管理不全に陥っているマンション
以前のコラム「マンションの寿命を教えてください」で取り上げたとおり、コンクリート自体の耐用年数は120年とも150年とも言われていますが、適切な維持・管理がなされなければ価値のある住まいとして長持ちさせることはできません。維持・管理のためにはお金が必要ですから、修繕の計画を立て、それに従ってお金を集め、然るべき時期に修繕工事を行う、というサイクルを繰り返していかなければならないのです。ところが、修繕のためのお金も、計画も、やる気もないマンションでは、そのサイクルが実行されず、管理不全に陥ってしまいます。2017年に横浜市の築30年以上のマンションを対象としたアンケート調査(表1)を見ると、約2割がDランクに該当しており、管理不全リスクのあるマンションは少なくないことが見て取れます。

表1. 築30年超マンションのアンケート調査結果

アンケート調査
管理ランク
D C B A S 全体
マンション件数 [棟] 8 6 8 7 8 39
構成率 21.6% 16.2% 21.6% 18.9% 21.6% 100%
平均戸数 [戸] 61.3 181.7 181.9 180.4 351.4 201

齊藤広子「管理不全マンションの実態と予防・解消のための施策と検討」より

旧耐震(とくに旧々耐震)のマンション
耐震基準については、新耐震・旧耐震・旧々耐震の3つに分類されます。阪神・淡路大震災の被災状況を見ると、大破したものの割合が、新耐震0.8%・旧耐震2.3%・旧々耐震8.5%と大きな差があることから、安全性という観点からは、旧耐震、とくに旧々耐震は避けた方がよいといえます(表2)。また、旧耐震・旧々耐震のマンションでは住宅ローンが借りにくい現実があり、資産性という面からも不安が残ります。

表2. 阪神・淡路大震災のマンション被災状況

大破 中破 小破 軽微 損傷無し
新耐震 0.3% 1.3% 5.6% 39.7% 53.0%
旧耐震 2.3% 2.7% 8.7% 35.7% 50.5%
旧々耐震 8.5% 4.9% 6.0% 32.0% 48.6%

違法建築となっているマンション
古いマンションでは、敷地の売却等により違法建築となっている場合が稀にあります。「ヴィンテージマンションが気になります」でも法規的問題として触れましたが、敷地売却により建ぺい率・容積率を超過している場合や、接道がないケースなどです。これらの違法建築にあたるものについては、旧耐震のもの以上に住宅ローンを組むことが困難になります。割安に感じるマンションを見つけた場合は、違法建築になっていないか、確認してみるとよいかもしれません。

注意した方がよいマンション

ここからは、「買ってはいけない」「避けた方がいい」というほどではないものの、注意が必要となる特長について見ていきます。必ずしも悪い特長というわけではないのですが、出くわしたときには個別具体的な調査をするとよいでしょう。

自主管理のマンション
自主管理のマンションとは、何ですか?」で解説したとおり、管理会社に管理業務を委託しない形式が自主管理です。プロの管理会社が入らない分、管理組合の力量によって管理の質が左右されてしまうという特長があります。一概に自主管理が悪いということではないのですが、気に入ったマンションの管理形態が自主管理となっていた場合は、より慎重に管理の中身の確認を行いましょう。

小規模なマンション
以前のコラム「大規模マンションってどうですか?」では、100戸を超えるマンションを大規模としてお話しましたが、小規模となると20戸以下というのがひとつのボーダーラインになりそうです。小規模マンションでは、修繕のためのお金が貯まりにくいこともあり、新築当初から計画的な修繕、修繕積立金の改定などがなされていないと築年数が経ってからの挽回が難しくなります(図1)。過去の修繕履歴や修繕積立金の改定時期なども確認できると安心です。

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図1. 規模ごとの修繕積立金の目安

修繕積立金が安いマンション
マンションの情報を見ると必ず載っている管理費・修繕積立金ですが、これらのランニングコストは安ければよいというものではありません。とくに修繕積立金については、「管理費・修繕積立金が高いマンションはどうですか?」でも解説したように、必要なお金を計画的に集めることが重要ですから、修繕積立金が安いマンションは要注意です。もちろん、修繕積立金が安くても、駐車場収入などによってお財布に余裕があるマンションもありますから、必ず財政状況を確認しましょう。

また、いくつかの特長が重なっている場合には、さらに気を付けたいところです。「自主管理」かつ「小規模」かつ「修繕積立金が低い」マンションでは、管理不全(=できれば避けたいマンション)に近づいているかもしれません。

今回は、買ってはいけないマンションというテーマについて解説しました。不動産のプロであれば、さまざまな懸念のあるマンションに価値を見出して購入することもありますが、自分が住む家を購入しようということであれば、そこまで攻めることもないでしょう。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、安心できるマンション選びから、設計・施工までワンストップサービスを提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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