「間取りのない家」のすゝめ(その2)二世帯住宅も、収益住宅も選べる家
無印良品の家づくり | 2026.8.26
無印良品が考える「これでいい」住まいとは、どのようなものなのか。
既存の住宅産業の枠組みにとらわれない家づくりとは、どのようなものなのか。
2004年の「木の家」発売から20余年が経った今、私たちが目指す「真に価値ある家づくり」について、改めて整理してみたいと思います。
いつでも、誰にでも、ずっと、快適な家であるために。(その2)
前回の「おさらい」を少ししましょう。
無印良品の家が、15年後も30年後も、さらにその先で住み継ぐ人も、ずっと快適であり続けるために、高い性能に裏付けられた「一室空間」を提案しています。
その例として「間取りのない家」をご紹介しました。
前回の記事はこちら >
この一見、伽藍洞のような「箱」は、3つの暮らしのフェーズごとに常に暮らしやすいように、引き戸や家具、つまりDIYで家人の「エリア」を創出しながら、暮らしの変化に空間が寄り添っていく様をご紹介しました。
その中で、最後の第3フェーズは子ども達が成長し、高校生、大学生になり、初めてDIYではなく、専門家に依頼して間仕切りをつくる、という想定でした。
さて、この第3フェーズもやがて、変えるべき時が来ます。その子どもたちも社会人になり、独立して、子どもたちのためのエリアは必要なくなるからです。
今は暮らしのかたちが多様化しているので、このように夫婦二人でスタートして、子育て→子どもの独立を経て、また最初の夫婦二人に戻る、というライフサイクルが、多くの人に当てはまるわけではないかもしれません。
しかし、どのような暮らしの変化だとしても、35歳で家を建ててから30年後には65歳。周りの環境が大きく変わっているのは間違いないでしょう。
人生100年時代、この家を建ててから30年後、まだまだ暮らしを楽しむために、この家がどのように暮らしにフィットしていけるのか、もう少し考察を膨らませてみましょう。
30年後、誰と、どのように暮らすか。
いずれにしても、60歳を超えて二人、もしくは一人で暮らすには、この家は大きすぎるのではないでしょうか。
60歳を超えてから、二人、もしくは一人で、この家でずっと暮らしていくとなると、問題は「間取り」より「広さ」と「二階への上り下り」にあるかもしれません。
したがって、一番合理的なのは、次の若い世代に、この家を譲って、もっとコンパクトな家に移ることかもしれません。譲り受けたその方も、また自分の暮らしに合わせて編集できるので、中古住宅を買う際にありがちな、「自分にフィットしない、暮らしづらい」ということは少ないはずです。もともと、それを見据えての「一室空間」であるわけですから。
そうなると、地震に強い躯体や高い温熱性能も相まって、「売りやすい」というメリットも出てくるはずです。
しかし、せっかく建てた愛着のある家ですから、他人に譲るのではなく、別の選択肢も考えてみましょう。
もし子どもが独立していて、家の購入を検討しているなら、いっそ再び、一緒に暮らす、というのはどうでしょうか。最初の「一室空間」を二世代・三世代で暮らすことを念頭につくっておけば、30年後に多世代でも暮らしやすい家にすることは、それほど難しいことではありません。
インフレ時代に入り、土地も建物も価格高騰の中、30年間住み続けた家をリニューアルして、再び親子で暮らす、というのは賢い選択肢の一つかもしれません。
前回ご紹介した「スタータープラン」と大きさや構成は同じですが、キッチンの勝手口を、将来二つ目の玄関とできるように、ゆとりを持たせました。
また、水回りを少しコンパクトにすることで、最初は土間のフリースペースをたっぷりと取れ、将来は床を張って、プラスワンの部屋をつくることも想定した、「間取りのない」プランです。

独立した子どもと「共生」する、という暮らしのかたち
例えば、前回での第二フェーズ「プライバシーを尊重しながら家族の気配を穏やかに感じる家」へは、引き戸と家具で容易に編集できます。

ここから、子ども達が成長し、「個室」が必要になれば、専門家にお願いして、壁やドアを増設していくことを前回は考察しましたが、今回は、子ども達が独立して夫婦二人になったあと、本格的に手を入れて、全く違う暮らしのかたちを選択することについて考えてみました。
まずは、広さを生かして、独立した子ども(とその新しい家族)と再び一緒に暮らすとしたら、どのようにこの「間取りのない家」を編集できるでしょうか。

キッチンや、お風呂周り、玄関などはすべて別々で、完全に独立した生活をしながら、必要なところは補完し合える。全く別の場所で暮らすよりも、ずっと合理的、かつ楽しそうです。
完全分離の二戸一でありながら、木の家の魅力の一つである大きな吹き抜けはそのまま生かされています。
そして、その吹き抜けの下が子世帯のリビングなので、ここは両世帯の交流の場となりそうです。3代目=孫ができれば、ここで日中の世話は、親世帯が担うことも可能ですね。
親世帯は1階のみの暮らしとなるので、将来にわたって階段の上り下りの心配はなくなります。
もちろん、この工事は、かなり本格的に専門家に改装工事を依頼することになりますが、基本的な骨格や外装はそのままに、間仕切りや設備を変えるだけなので、新たに家を取得するよりはリーズナブルにできるはずです。なにより、思い出の詰まった家・庭でふたたび一緒に暮らせる、という喜びは他に変え難いのではないでしょうか。
「収益型住宅」という選択肢
独立した子世帯と一緒に暮らす、というのも楽しそうですが、「広さを生かす」発想として、「人に貸す」という選択肢も、この「間取りのない家」ならできてしまいます。

子世帯と暮らす家の、両世帯で行き来できる1階の2ヶ所の扉を壁にしてしまえば良いのです。(この境の壁や床を最初から特別に耐火と遮音を考慮した仕様にして、それぞれの入り口から道路への通路を確保しておけば建築確認上も問題ありません。)
賃貸管理は、その道のプロにお任せして、気に入った家に暮らしながら、収益も得られる、という発想です。場合によっては、最初からこのような「収益型」にしておいて、若いうちは自分達が広い1-2階で暮らし、老後は入れ替えて1階のコンパクトな方で暮らす、という方法もあるかもしれません。
「一室空間=間取りのない家」は、どう暮らすか、誰と暮らすか、自由形です。
「家を(30年以上)永く使う」ということは、そこで暮らす人間も変わっていく、ということを想定すべきでしょう。それを想定せずに、「自分だけのこだわりの家」を固定的につくってしまうと、住人が入れ替わることが難しくなり、まだまだ使える家なのに、建て替えられてしまうという憂き目に遭うのではないでしょうか。
「無印良品の家」は、「永く使える、変えられる」を基本コンセプトとしていますが、この「永く」とは30年から先のことも考えています。ですから、「変えられる」とは、単に間仕切りを変えられるにとどまらず、将来にわたって、誰とどう暮らすか、について自由に選べる、ということなのです。
みなさまなら、この自由な「一室空間=間取りのない家」で、30年後にどのような暮らしを想定されるでしょうか?
ぜひ、ご意見をお聞かせください。

株式会社MUJI HOUSE元取締役商品開発部長。
「無印良品の家」の開発を統括し、ブランドの基盤を築く。
現在はフェローとして、開発者としての専門知見を生かし、豊かな暮らしのヒントや住まいの魅力を、コラムや動画を通じて住まい手へ発信している。



