長押を活用して壁面アレンジが自由自在|新シリーズ「MUJI×UR Plan+S」紹介その2

団地再生物語 | 2022.2.15

2012年に大阪でスタートしたMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトは、これまでに首都圏から九州まで全国展開を行い、供給戸数は1,000戸に達し、今年は10年目という節目を迎えます。この10年目を迎えるにあたり、賃貸住宅リノベーションのスタンダードを目指すというプロジェクトの原点に立ち戻り、団地の特長である押入や長押を生かし、住宅の基本性能である収納(Storage)を充実させた新シリーズ「MUJI×UR Plan+S」が登場しました。

新シリーズ「MUJI×UR Plan+S」の特長は、前回のコラムでもご紹介したように、間取りを変えずに、本来あるべき収納(押入)をそのまま生かしたプランとした部分です。これにより、ファミリーであっても寝室をしっかり2、3部屋つくることができ、また、各部屋に必ず収納(押入)がある住まいとなっています。収納を充実させることで、余計なものを出さないすっきりとした暮らしができそうです。

そして、もう一つの団地の特長でもある「長押(なげし)」をリビングや玄関の壁面に加えました。長押を上手に利用することで、自分なりに壁を収納にしたり飾ったりすることができます。今回はその長押について詳しく解説していきたいと思います。

※長押とは:和室の壁にある木部。元来、柱と柱を水平につなぎ固定させる構造材だったが、建築技法が進化した現在では、その役割は変化しつつある。(詳しくはこちらの記事参照)

220215_01<事例1>腰の高さに長押を追加した壁。有孔ボードを設置したり、住みながら自由に編集することができる

「MUJI×UR Plan+S」の特長である「長押」のアイデアは、現在展開しているコラム「団地から考える暮らしの知恵100」で紹介した「団地の壁の使い方」から考える暮らしの知恵から生まれました。

そもそも団地の壁は、コンクリートの構造体でできている壁式構造であることが多く、その場合、住んでいる人が壁に画鋲やビスをつけることできません。しかし、団地の壁には、床から180cmほどの高さの位置に「長押」がもともとついており、唯一の木部である長押にはビスを打つことができます。この場合、ハンガーや帽子を掛けるにはちょうどよい高さですが、壁一面を生かそうと思うと、長押の位置が高すぎます。
そこで、手もとの高さ(床から90cmほど)にも長押をつけたインフラを初めから整備してあげれば、この追加した長押を「きっかけ」に、住みながら自由に壁を編集することができるのではと考えました。

220215_02コラム「団地から考える暮らしの知恵100」で紹介したアイデア。「団地の壁の使い方」から考える暮らしの知恵

たとえば、これまでただのコンクリートの壁だった寝室に、長押を「きっかけ」に有孔ボードをつけることで、鏡や化粧品を置くことができるようになり、壁を化粧棚にアレンジすることも可能です。また、上下の長押に木板を渡して設置することで、服やカバンを引っ掛けてワードローブのように使うこともできます(事例1)。

また、玄関においても同様です。玄関もコンクリートの壁に囲まれていることが多いのですが、これまでコンクリートの壁に可動棚の金物(ガチャ柱)をDIYで設置することは、まず不可能でしたが、上下の長押に木板を渡して設置することで、取り付けも可能になります。狭い玄関空間でも、壁を生かして充実した靴棚収納を設置することができそうです(事例2)。
そして、床から90cmの高さは、傘を引っ掛けるのにもちょうどよい高さになっています。

リビングの壁においては、木板を長押と同じ横方向に設置することで、Bookスタンドのように壁をアレンジすることもできます(事例3)。

220215_03<事例2>玄関の壁も長押を利用すれば、ガチャ柱を設置して靴棚にアレンジすることができる。傘を引っ掛けるのにもちょうどよい高さに

220215_04<事例3>リビングの長押はbookスタンドとして壁を利用できます

このような、「MUJI×UR Plan+S」シリーズでリノベーションされた住戸が、今年から募集を開始します。そのなかで令和4年2月17日から抽選募集の申込受付が開始する、国立富士見台団地のPlan+Sの間取り3DK(63.88㎡、妻側住戸のみ65.57㎡)をここでご紹介したいと思います。

もともと増築タイプの広い間取りで、増築タイプとは、建設当初(1965年頃)は45㎡ほどだった住戸に後からプラス15㎡ほどの部屋をバルコニー側に増築(1970~80年頃)した住棟のことをいいます。その際、もともとバルコニーだった空間をユーティリティスペースとして洗濯機置き場の設置も行っており、5人家族があたり前だった当時の時代のファミリー向け住戸として改修をされました。そんなファミリーで住むにはちょうどよい間取りをそのまま生かし、充実した収納と居室のある住まいとしました。

そして、南面の増築棟の居室のふすまを開け放つことでリビングとして使用し、明るく開放的な空間にも変化します(写真1)。
また、外したふすまのための収納場所(ふすま収納)も確保することで、住みながら間取りを可変できる暮らしをスムーズに実現することができます(写真2)。

キッチンには、持出しキッチンを設置することで、MUJI×URの特長でもある「見せる収納」と、吊り戸棚をそのまま残すことで見せたくないものを「隠す収納」の2つ収納スタイルを両立することができています(写真3)。

220215_05<間取図>増築タイプの広い間取り。押入を残すことで各部屋に充実した収納のあるプランとした

220215_06<写真1>ふすまを外すことで、南面の増築棟の居室から明るい光が通り抜け、開放的な空間に変化する

220215_07<写真2>外したふすまのための収納場所を確保した「ふすま収納」

220215_08<写真3>持出しキッチンによる「見せる収納」と吊り戸棚による「隠す収納」を両立させたキッチン

220215_09<写真4>住みながら壁をアレンジできる長押。押入は収納としてもワークデスクとしても使用が可能

いかがでしたでしょうか。今回ご紹介をした国立富士見台団地3DK(63.88㎡、妻側住戸のみ65.57㎡)の住戸は、令和4年2月17日より抽選募集の申込受付が開始します。募集のご案内はこちら(応募期間は、令和4年2月22日の正午まで)。

また、令和4年1月22日に行ったインスタLIVEによる「ルームツアー@国立富士見台団地」もIGTVにてご覧いただくことが可能です。

より多くの方にMUJI×URの住戸に住んでもらえるように開発された「MUJI×UR Plan+S」シリーズは、今後も新しいアイデアを模索しながら進化をしていきます。
今後の「MUJI×UR Plan+S」シリーズの展開にご期待ください。