「団地の壁の使い方」から考える暮らしの知恵

コラム | 2021.5.25

第十四回
「団地の壁の使い方」から考える暮らしの知恵

団地の環境や間取りが気に入って住み始めて、しばらくしてから気づくことがあります。それは壁のほとんどがコンクリートで、壁にお気に入りの絵やカレンダーをかけようとすると画びょうやビスが壁にささらない!ということです。
団地の多くは「壁式構造」でできているので、柱や梁の代わりに壁がコンクリートの構造体になっています。なので、画びょうやビスが壁にささらないことが多いのです。
せっかく気に入って住み始めた団地で、そのようなことがあるとテンションが下がってしまいますよね…

そこで活躍するのが「長押(なげし)」です(「付け鴨居」も同類のものとみなします)。「長押」はもともと和室の壁にある木部で、URの賃貸住宅において木部である「長押」は、穴を開けたりしても良い部分になります。高さは床から180cmほどの高さにあり、ハンガーや時計をかけるにはちょうど良い高さになります。これがあるだけでも十分便利ですが、普段の床座や椅子座の生活においては少し高い場所にあるため、うまく壁を生かすにはもう少し低い場所に長押があっても良さそうです。

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もともと和室の壁には「長押(なげし)」があり、コンクリートの壁において唯一の木部になる(MUJI×UR plan24保津川団地)

コンクリートの壁全体を画びょうやビスが刺さるようにすることは、大変な建築工事になってしまいますが、「長押」を追加するだけならちょっとした建築工事で済みます。
この「長押」を内装のインフラとして、適切な高さにはじめから整備しておくことはできないものでしょうか。

<暮らしの知恵(1) ちょっとした工夫「長押に最適な高さを考える」>

では具体的に、「長押」の位置はどの高さが適切なのでしょうか。

たとえば、既存の「長押」の位置は床から180cmなので、頭の高さから上部で棚を設置するには良さそうです。そこからもう少し低い目線の高さだと120cm、90cm、手もとに近い位置で物を壁に固定したいと思うと、床から70cm、60cm、40cmの位置にあると、いろいろアレンジができそうです。

床から120cmの高さは目線の位置になり、絵やカレンダー、スイッチやリモコンを設置するのに最適で、90cmの高さは人が立った状態で作業台やカウンターにするのにちょうどよい高さです。70cmはテーブルの高さに合わせることができ、60cmはハイスツールのようにちょっと腰を掛ける高さになります。40cmは椅子の座面やローテーブルの高さに合わせることができます。

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「長押」の高さのSTUDY。既存の「長押」は、床から180cmの高さに一本のみ

<暮らしの知恵(2) ちょっとした工夫「長押で壁のインフラを整備する」>

いろいろな高さに「長押」があると便利ですが、たくさんありすぎるのも見栄えが良くありません。ここでは数を絞って、既存の床から高さ180cmの位置に加えて、床から高さ70cmと40cmの位置に新規で2本だけ追加した場合の具体的なアレンジを考えてみたいと思います。

床から180cmの既存の「長押」には、ハンガーや時計をかけることに加え、カーテンレールの上にもちょっとした小棚をつけることができそうです。

床から70cmの新規の「長押」には、壁から持ち出したデスクやBOX型収納、ドレッサーが設置できます。

床から40cmの新規の「長押」には、ベッド横のスマホスタンドや床座の場合のサイドテーブルが設置できそうです。

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高さの違う「長押」をはじめからインフラ整備しておくだけで、コンクリートの壁でも自由にアレンジができる

このように、高さの違う「長押」をはじめから内装インフラとして整備ができていれば、そこをきっかけに「住んでいる人」がDIYでどんどんアレンジしていくことができます。賃貸住宅である団地の住み方も、自分たちのライフスタイルに合わせて豊かになっていきそうです。

いかがでしょうか? このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見お待ちしております。

※使用する材料、仕様及び施工方法によっては、原状回復義務が発生します。