団地が理想の家になる

団地再生物語 | 2017.9.26

MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトは、2012年にスタートし今年度で6年目に入りました。今回は今までの5年間をあらためて振り返りたいと思います。
プロジェクトは大阪の3団地5プランからスタートし、主に昭和40年代~50年代の団地の住戸をリノベーションしました。テーマは、古い団地の良さを発見するところから始めて、未来に住みつないでいくことができるような暮らし方の提案です。この5年間で全国首都圏、中部圏、近畿圏、九州圏で32団地500戸以上の住戸をリノベーションしたプロジェクトとなりました。

danchi_170926_img01MUJI×UR Plan01 LDKをゆるやかに仕切って広々と使う。
danchi_170926_img02MUJI×UR Plan02 リビングと個室がひとつながり。

新しい暮らしの提案
プロジェクト発足の直前に実施した「団地について」のアンケートでは、「間取りを自由にできるとよい(自分で改装できるとよい)」と答えた方は、86%でと最も多く、このアンケート結果を取り入れて賃貸住宅であっても可変性を大切にしました。具体的には、「リビングの延長としても収納としても使える押入れ」、「洋間でも和室でも床座と椅子座を選べる麻畳」、「キッチンとテーブル、スツールが組合せできるキッチン」といった、工夫をこらして住む人の自由度の高い住まいを考えました。

danchi_170926_img03MUJI×UR Plan04のリビングの延長としても収納としても使える押入れ
danchi_170926_img04MUJI×UR Plan14の床座と椅子座を選べる麻畳
danchi_170926_img05MUJI×UR Plan08のL字型に組合せたキッチン
danchi_170926_img06MUJI×UR Plan34の2列に配置した組合せキッチン

また一般的なリノベーションでは、古い部分は撤去されてしまいます。MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトでは、古いからといって全てを新しくしていません。新しくすると失われてしまうような、古くても魅力的な部分(飴色に変化した柱や鴨居、独特の模様と質感のガラス、最低限の機能をもった建具の取手など)は、できる限り残しています。ただ表面的に変更するのではなく、団地の暮らしの課題を解決し、逆に団地の魅力を生かした設計を行いました。

danchi_170926_img07MUJI×UR Plan01の飴色に変化した柱や鴨居
danchi_170926_img08MUJI×UR Plan05の独特の模様と質感のガラス
danchi_170926_img09MUJI×UR Plan02のドアの取手
danchi_170926_img010MUJI×UR Plan01の引き戸

暮らしを変えるパーツ
プロジェクト発足当時、既製の部材では解決できない課題があったので、団地の暮らしを良くするようなパーツ(組合せキッチン麻畳ダンボールふすま半透明ふすまなど)をオリジナルで開発しました。このMUJI×UR共同開発商品によって、少しずつ団地の課題を解決していきました。パーツまで丁寧に考え、それを積み重ねることで、新しい暮らしの提案ができたといえます。いまではプロジェクト以外でも採用される事例が増え、パーツという小さな部分でも大きな影響を住まいに与えました。

いままでの5年から、これからの5年へ
いままでは主に団地の住戸内のリノベーションを行い、その団地のもっている良い部分を生かしたさまざまな提案をすることができました。今後は住戸の外側のリノベーションもありえるかもしれません。住戸の外へ出てみると、階段室、エントランス、庭(コラム「庭のある団地の暮らし」)、集会所(コラム「もしも団地の集会室をキッチンスタジオにできたら」、コラム「もしも団地内にキッチンスタジオがあったら」)といった場所から、表札、ポスト、案内板、掲示板といった小さな部分までいろいろありそうです。団地の暮らしを丁寧に考えることで、団地がさらに魅力的になりそうです。また団地自体が魅力的になれば、団地を起点とした地域のリノベーションまで発展することがあるかもしれません。

いかがでしょうか、団地の未来はまだまだ明るそうです。これからのプロジェクトに期待することなど、ご意見をいただければと思います。