この冬の「鎌倉の家」の電力、エアコン、快適温度をご報告します

住まいのかたち | 2018.4.3

昨年のコラム「この夏、鎌倉の家は1日中27℃でエアコン電気代は1,406円(8月)でした」で、鎌倉の家「窓の家」の夏が、いかに快適で省エネかをご紹介しましたが、今回はその冬編です。

冬は、よく言われるように、例えばリビングだけ暖房をして廊下やトイレ・浴室が寒いということになると、快適性以前の問題として、ヒートショックの危険性につながります。ですから、家中を24時間快適温度に保つのは、健康維持のためにとても重要なことになります。
しかし、その実現のためにはセントラルヒーティング(全館集中暖房)のような高価な設備と高いランニングコストが必要、と諦めている方も多いのではないでしょうか。

長い間、家全体を暖める「暖房」ではなく、寒い家で冷えた体を温める「採暖」という暮らし方をしてきた私たち日本人にとって、人がいない部屋や時間まで家を快適な温度に保つということ自体、お金の問題ではなく、精神的に「もったいない」という思いで、受け入れにくいのかもしれません。(コラム「日本の家はずっと無暖房住宅でした」参照)

しかし、最近のエアコンは、消費電気エネルギー1に対して、ざっくり言うと5倍の熱エネルギーを生みます。「家のつくりやうは、夏をむねとすべし。」と諭した吉田兼好の時代にはなかった、この素晴らしい文明の利器と、「無印良品の家」の「高性能な箱」と間仕切りのないオープンな「一室空間」の組み合わせで、本当に少ないエネルギーで家中快適温度に保つことができることを、「鎌倉の家」のデータが証明してくれています。

実録「鎌倉の家」の冬の計測値

1月(2018.1/9~2/7)

上記のグラフは、今年の2018年1月9日から2月7日まで(30日間)の鎌倉の家の温度と1、2階に1台ずつ設置してあるエアコンの使用量です。
グラフの折れ線グラフが1時間おきに計測された■外気温■1階室温■2階室温で、平均室温は、■1階室温21.9℃、■2階室温20.6℃、■外気温4.7℃です。
日中の■外気温は、日中の15℃から明け方の-3℃以上まで大きくグラフが上下に変化している中、室内は■1階室温は22℃、■2階室温も21℃前後でほとんど一定なのがよくわかります。

エアコン使用量をみてみましょう。棒グラフ■1階エアコン使用量■2階エアコン使用量(右軸の数字が消費電力量Wh)です。
「鎌倉の家」に住む、大使のみーさんには、基本■1階エアコンは1日中(外出するときも!)つけっ放し、もし少し「寒い」と感じることがあれば我慢せずに■2階エアコンもつけていただくようお願いしています。
■1階エアコンの棒グラフは、常に■1階エアコンは作動していることを示していますが、その消費電力は朝方など外気温が5度以下に下がるときに500w(家庭用ヘアドライヤーの弱運転程度)以上になるくらいで、日中は少しの電力しか消費していないのがわかると思います。
そして、■2階エアコンをつけたのは30日間でわずか4日間の数時間のみとなっています。

180403_img02

1月(2018.1/9~2/6)

電気使用量 基本料金を除いた電気料金 1kWhあたりの電気料金 エアコン使用量 エアコンのみの電気料金 シミュレーションの想定電気料金
1月 515kWh 13,275円 25.8円/kWh 338kWh 8,720円 3,071円

この1ヶ月の電気使用量は515kwhです。1月の電気料金から基本料金1,404円を差し引いて13,275円、これを515kWhで割ると、1kWhあたりの単価は25.8円/kWhとなります。
1、2階あわせてのエアコン使用量は、338kWhですので、このkWhあたりの単価からエアコンの電気代を割り出すと、25.8円/kWh×338kWh=8,720円/月となります。

ここで補足です。夏のコラム「この夏、鎌倉の家は1日中27℃でエアコン電気代は1,406円(8月)でした」でご紹介した冷暖房使用エネルギーのシミュレーションの想定電気料金は、1月の暖房費が3,071円となっており、鎌倉の家の今回のデータ(8,720円)の方が大きくなっていますが、これは実際の環境とシミュレーションの前提の違いによるものです。このシミュレーション(「年間暖冷房負荷計算」と言います)は、前提条件が決められていて、気象庁の地域ごとの気温データ(鎌倉の1月は平均6.3℃)と家の断熱性能を基に、常に室温18℃を維持するために必要な暖房エネルギーを計算したものです。対して、今回レポートの鎌倉の家の測定環境は、平均気温が4.7℃、1階(リビング)の室温平均が21.9℃となっているので、先のシミュレーションより暖房エネルギーかかっているという結果になっています。
そういった意味では、いま決められたシミュレーションの前提は実際から少し離れている、と言えるかもしれません。しかし逆に、夏の使用電力はシミュレーションよりも実際の方がはるかに冷房エネルギーが小さくなっているので、年間を通すとプラスマイナス帳尻があってくるようです。
鎌倉の家の年間の使用電力も、後日まとめてご報告予定です。

1ヶ月8,720円(1日290円)というランニングコストで、24時間 家中が快適温度になっていることも驚きですが、実はエアコンの設置コストも鎌倉の家は、普通の家よりかかっていません。
通常の3LDKの間取りの家なら、エアコンは4台となりますが、鎌倉の家は1階と2階にそれぞれ1台ずつ、計2台しか必要ないからです。
しかも廊下・トイレが間仕切られている通常の3LDKの間取りの家では、この全室に設置した4台のエアコンをフル稼働したとしても、個室以外の廊下やトイレはこれほど暖かくはならないでしょう。
小さなランニングコストと設置コストで、家中を24時間快適温度に保てること。これが、ダブル断熱・トリプルガラスによる「高い断熱性能」と「一室空間」のなせるワザなのです!

「無印良品の家」の「一室空間」
「無印良品の家」の、間仕切り壁なしの「一室空間」には、

・それほど大きくない家でも、細かく仕切らずに開放的な空間の中で暮らしていただきたい
・家族が自分の「部屋」に引きこもるのではなく、緩やかに気配を感じながら暮らしていただきたい
・時の経過と共に、変わっていく「暮らしのかたち」に、家具などで仕切りを変化させながら暮らしに寄り添う家でありたい

という、これまでの「3LDK」という家を細かく間仕切る家とは全く異なる暮らし方への想い、理由(わけ)が詰まっています。
実際に、無印良品の家をご覧になられて体感された方には、この新しい暮らし提案にはすぐピンときていただけるようですが、「夏暑く、冬寒そう。光熱費もかかりそう。」という不安を抱く方もいらっしゃるようです。
しかし、一室空間こそ、「無印良品の家」の高い断熱性能との組み合わせで、小さいエネルギーで家中快適温度を実現するかたちであることを、鎌倉の家は証明してくれているのです。

みなさんは、このような一室空間の暮らし、どのように考えますか? ぜひ、ご意見をお寄せください。