「鎌倉の家」の太陽光発電、この夏のすべてをご報告します

コラム | 2017.10.24

実は「鎌倉の家」は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)なのです
前回のコラム「この夏、鎌倉の家は1日中27℃でエアコン電気代は1,406円(8月)でした」では、鎌倉の家大使みーさんが暮らす「鎌倉の家」がいかに家中快適かつ省エネであるかをお話ししました。家中を少ないエネルギー消費で快適温度に保つことを、大げさな空調システムではなく、ごく普通のルームエアコン2台で実現しているのは、開放感ある一室空間と、高気密・高断熱性能の賜物です。

無印良品の家では、なるべく設備に頼ることなく、永く快適に暮らせるように、家そのもののデザインや性能を決めています。ですから、家に付属するキッチンや浴室、給湯器やエアコンなどの設備について、特別に高性能で高価なものや特殊なものをお勧めすることはしていません。
しかし暮らし方として、オール電化住宅などを選ぶ方のために、IH調理器や貯湯式ヒートポンプ給湯器(エコキュートなど)に加えて、太陽光発電システムも選択できるようにご用意しています。 鎌倉の家(窓の家)は、実は太陽光発電システムを屋根に設置しています。ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に対応しているので、今回はこの夏の全てのエネルギーについてご報告します。
※参照コラム:「ZEHって・・・何?」、「無印良品の家が考える太陽光発電

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、「正味(暖冷房、換気、給湯、照明に)使うエネルギーがゼロである家」のことです。ZEHの要件は「暖冷房、換気、給湯、照明に1年間で使うエネルギーと相殺できるエネルギーをつくれるかどうか」、つまり使うエネルギーと、太陽光発電などでつくるエネルギーがプラマイゼロになることを意味しています。

では、正式に「ZEH」として認められ、補助金などの特典を受けるための基準とはどんなものでしょうか。

まずは、断熱性能です。
空調などにエネルギーをたくさん使う家でも、その分大きな太陽光発電を載せて発電すればZEHとして認められるかというと、そうではありません。地球温暖化抑制施策の一つがZEHですので、家の断熱性能が一定の基準以上(平成25年省エネ基準適合住宅の断熱性能の約3割増し)であることと定められています。
無印良品の家はプランにもよりますが、このZEHの断熱基準のさらに平均3割増しの性能ですので、家の性能面では全く問題ありません。

次に、家ごとに断熱性能や生活スタイルを考慮して、使うと想定されるエネルギー量を国で定められた方法で計算をし、それを相殺できるだけのエネルギーをつくることのできる設備(一般的には太陽光発電システム)を設置していなくてはなりません。
このエネルギー計算は、一般的な日本の家の間取りと暮らしが前提になっていて、(無印良品の家とは異なり)3LDKや4LDKというように、細かく壁と扉で仕切られた間取りで、それぞれの部屋を人が居るときだけ冷暖房する(これを「局所間欠冷暖房」といいます)という生活スタイルがモデル化されて、冷暖房に必要なエネルギーを計算する仕組みになっています。

この断熱性能の計算そのものはかなり簡素化されています。計算を簡素化するには、広く普及している生活スタイルをモデル化することが早道だったと推測されますが、たいへん残念なことに、この「局所間欠冷暖房」をモデルとすることは、無印良品の家が最も避けたいと常々考えている、家の中に不快な温度差が残ることを容認することになっています。

無印良品の家では、家中を24時間快適温度に保つために必要なエネルギーをシミュレーションする「全棟温熱シミュレーション+AIR」を2011年より実施しています。この計算手法は、「暖冷房負荷計算」というもので、これはかなり複雑で時間のかかる計算ですが、長年の実績があり、信頼度の高い計算手法です。
無印良品の家の一室空間という間取りを、24時間快適な温度に保つ前提で試算を重ねるうちに、「全棟温熱シミュレーション+AIR」でいつも使用している「暖冷房負荷計算」よりも、国で定められている計算方法の方が、使用エネルギーのシミュレーション値が大きくなることがわかってきました。

しかしながら、まずはルールに従おう、ということで、鎌倉の家(窓の家)では国で定められた計算手法で算出しました。その結果が、太陽光発電パネル24枚、能力として約6kwの太陽光発電システムを設置することで、使用エネルギーと相殺できる、というものでした。

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実は、無印良品の家の「全棟温熱シミュレーション+AIR」による「暖冷房負荷計算」では、ここまでの太陽光パネルの設置は必要ないと出ているのですが、とにもかくにもまずはルール通りの計算値にしたがって、鎌倉の家の屋根に太陽光パネルを設置しました。
そして、4月から鎌倉の家大使のみーさんが暮らし始めるのと同時に、家の内外温度、エアコンやその他にどのくらいエネルギーを使い、この太陽光発電パネルがどのくらいのエネルギーをつくっているのかの実測を行っていました。

実録!「鎌倉の家」のエネルギー収支
前置きが長くなりしたが、この夏の結果をご報告しましょう。
以下は「鎌倉の家」の7、8月の電気とガスの使用量と料金です(この「電気使用量」はZEHで定められているところの暖冷房・換気、給湯、照明だけではなく、テレビやパソコン、掃除機などなど、日常生活で使う全ての使用量です)。

電気使用量 電気料金 ガス料金 電気+ガス料金
7月 109kWh 3,496円 1,279円 4,775円
8月 116kWh 3,637円 1,424円 5,061円

補足ですが、前回のコラムについて「深夜電力でお湯を沸かしているから安いのでは?」というご質問をいただきましたが、「鎌倉の家」の電気契約は深夜電力料金が適用されない「従量電灯B」という契約になっています。コラムで、電気の基本料を差し引いた1kWhあたりの電気代が約19円となっているのは、1ヶ月の使用電力が120kwhを超えていない(!)からです。120kWhを超えると、26円/kWh、300kWhを超えると30円/kWh と単価が上がっていくので、一般家庭では、平均すると26〜8円/kwhとなるのが普通のようです。

さて「鎌倉の家」に設置した「太陽光発電パネル24枚、能力として約6kw」の太陽光発電パネルはこの夏、どのくらいの電気をつくってくれたのでしょうか? その実測値が以下になります。

7月 電気使用量 エアコン使用量 電気料金 ガス料金
109kWh 81kWh 3,496円 1,279円
発電量 売電量 売電金額 ガス使用量
883kWh 748kWh 23,188円 4m³
8月 電気使用量 エアコン使用量 電気料金 ガス料金
116kWh 74kWh 3,637円 1,424円
発電量 売電量 売電金額 ガス使用量
639kWh 523kWh 16,213円 5m³

驚きの結果ですね。お金の換算だけみても「余って」いることがお判りいただけると思います。
7月は支払った電気料金+ガス料金=4,775円に対して、売電金額が23,188円。差し引き18,413円の黒字です。8月は11,152円の黒字でした。ちなみに、この差額は電力会社から利用者の口座に現金で振込まれます。

お金基準で考えると(考えるまでもなく)大きく黒字なのですが、基準を本題のエネルギー使用量で見てみましょう。
注意が必要なのは、上の表で「電気使用量」には、太陽光発電の発電量は含まれません。7月の場合、「発電量」883kWhから「売電量」748kWhを引いた残り135kWhと、「電気使用量」109kWhを足した244kwhが、鎌倉の家の電気使用量になります。8月は232kwhになります。

鎌倉の家は、調理器具はIHで電気ですが、給湯は基本的には電気(ヒートポンプ)で沸かして貯湯し、貯湯タンクで足りなくなった分は補助的にガスを使用しています。
この使用ガスは13A都市ガスで、7月が4m³、8月が5m³となっています。これを電気料と同じkWh単位に置き換えると、それぞれ50kwh、62.5kwh となりますので、この家の全使用エネルギー量は、244kWh+50kWh=294kw(7月)、232kWh+62.5kWh=294.5kwh(8月)ということになります。

一方で太陽光発電がつくったエネルギー(発電量)は、7月が883kWh、8月が639kWhですから、7月は使用エネルギー294kwhに対して約300%、8月の使用エネルギー294.5kwhに対しては216%となり、この鎌倉の家では、太陽光発電によってつくられたエネルギーの半分〜1/3以下のエネルギーしか使用していないことがわかります。
通常、冬の使用エネルギーのほうが夏より多くなりますので、最終結論は冬まで待たなくてはなりませんが、夏の時点では十分、決められたZEH基準以上の要件を満たしていることになります。

ZEHのさらに先へ
ここで思い出してください。ZEHの要件は「暖冷房・換気、給湯、照明に1年間で使うエネルギーと相殺できるエネルギーをつくれるかどうか」でした。鎌倉の家がこの夏使った電気量と、太陽光発電でつくった電気量は、つくった電気量の方がはるかに多く、掃除機やテレビ、パソコンなどの生活全部の電気量もまかなってあまりある、というものになったのです。

計算では圧倒的につくる電気が余っている(春・秋はもっと余ります)ものの、太陽光発電は日中しか発電してくれないので、夜間は電力会社から普通に電気を買って(買電)います。
以前は、電気を売る価格が買う価格より高かったので、日中の余った電気を売る、というのも悪い考えではなかったのですが、この売電価格(売る価格)は年々下がってきており、2017年度でほぼ同額、今後は買電価格(買う価格)より売電価格(売る価格)の方が安くなることが確実視されています。

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つまり今後は電気を売るよりも、自分で使ったほうが得、という時代になるわけです。
そこで、日中つくった電気を売らずに自分で使うためには「蓄電池」が必要なります。現時点では、まだまだかなり高価で、しかも耐久性に問題があるといわれており、実用的とはいえないようですが、「発電した電気は全部自分で使う」という要望が高くなれば、必ず解決されていくでしょう。

もし、鎌倉の家に、十分実用的な蓄電池があったら、と想像してみてください。日中に余った電気を、蓄電池に貯めておいて、夜にそれらを使っても、まだまだ余裕がありそうです。そこで、一部ガスを使っている給湯も全てヒートポンプにして電気でまかなえば・・・そう、電力会社から電気を買う必要がなくなるのです。電柱から電線を引き込む必要もありません。建築業界では、エネルギーを時給自足して、送電線に繋がっていないことを、「オフグリッド」といい、まだまだ法的な整備も含めて実用域にはありませんが、今後オフグリッドの家の可能性は十分にありそうです。

ZEHのように限定的な使用エネルギーの計算上の相殺ではなく、本当にエネルギーを自給自足でき、外からのエネルギーに頼らなくて良い家ができるなら、もっともっと大きな意味がありそうです。限られたエネルギーの中で生活するのですから、自ずと省エネルギーな暮らし方が身につくでしょうし、万一災害や事故で長期間、電気が送電されないことになっても、耐えられる家となるでしょう。電気やガスのインフラを気にせず好きなところで暮らせるようになるかもしれません。
無印良品の家そのものには、オフグリッドを実現できるだけのポテンシャルが十分にあると思いますが、本当にオフグリッド=送電線なしで生活するには、どれだけの太陽光発電システムと蓄電池、その他の設備が必要か、ということを見極めていかなければなりません。
家の温熱性能が、この必要設備の要件に関わってくることはもちろんですが、それだけでなく、限られたエネルギー(太陽光発電は悪天候が続けば、発電エネルギーは少なくなります)の中で、どのような暮らしができるのか、したいのか、というソフト面も非常に重要な要素になります。
エネルギー垂れ流しの暮らし方では、どんな家・設備があってもまかない切れないでしょう。だからといって、オフグリッドのために「がまん」や「不快」な暮らしを強いられたくはありません。

無印良品の家では、この「鎌倉の家」の計測数値を通して、ZEHのさらに先にあるオフグリッドの家の可能性を探っていきたいと考えています。まずは、この冬のエネルギーを検証してまたこのコラムで報告いたします。ご期待ください。

みなさんは、家のエネルギー収支やオフグリッドについて、どう思われますか? ぜひご意見をお聞かせください。