空き家が増えると、マンションは安くなりますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2025.5.27

ご質問

空き家が増えているというニュースを目にします。しばらく待って空き家が増えていけば、マンションを安く買えるようになるのでしょうか

日本中で空き家の増加が社会問題となっています。空き家が増えることで景観や治安の悪化につながることが懸念される一方で、このまま空き家が増えていけば、過熱気味のマンション価格が下がるのではないかと期待する声もあります。空き家が増えれば、マンションを安く買えるようになるものなのでしょうか。

今回は、中古マンション市場を日々ウォッチしている、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、空き家とマンション価格の関係について解説してまいります。

空き家は、たしかに増えている

まずは、空き家についての基礎的なデータを確認してみましょう。総務省が行った令和5年「住宅・土地統計調査」の結果によれば、全国の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%と、いずれも過去最高の数字を記録しています(図1)。空き家が増えている、というのは紛れもない事実のようです。

図1. 空き家数・空き家率の推移

また、図1を見ると、「賃貸用の空き家」「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の割合が大きいことが見て取れます。無計画に建築されて空室だらけの賃貸アパートや、相続したが誰も住んでいない住宅など、流動性の低い空き家が増えているのです。

分譲マンションについては、国土交通省が行った令和5年度「マンション総合調査」を参考にしてみます(図2)。空室戸数が0%~20%のマンションの割合は33.2%となっており、この33.2%のマンションの空室割合がすべて10%だと仮定すると、空き家率は3.3%程度ということになります。マンションごとの詳細なデータが存在しないため概算にはなりますが、分譲マンションの空き家率は戸建住宅や賃貸アパートと比べると小さいようです。

図2. 空室戸数割合の推移

空き家の増加で、マンション価格は下がる?

それでは、このまま空き家が増えていった場合、マンション価格にはどのような影響が出るのでしょうか。結論からいえば、「一定の条件を満たしているマンションであれば、大きな値下がりはない」ということになるだろうと考えています。

条件のひとつとしてあげられるのは、「需給バランスの取れた地域である」ということです。先ほど参照した「住宅・土地統計調査」によれば、空き家率(特に、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家)は、地方都市ほど高く、大都市圏ほど低いということが報告されています。人口減少局面では人口が都市部(あるいは地方都市の中心部)に集中することが知られていますから、今後人口が増える、あるいは相対的に人口減少が緩やかなエリアに立地するマンションについては、空き家の増加が値下がりの理由にはならないという見立てです。

また、地方都市で空き家を安く買えるのであれば、そちらに移住しようと考える人が増え、都市部の不動産の需要が減る、という考え方もあるかもしれません。しかしながら、仕事をする上での利便性なども考慮すると、地方移住がメインストリームとなることはないでしょう。実際、コロナ禍において地方移住に対する意識の高まりがみられたものの、実際の移住は進まず、むしろ都心部のマンション需要が高まりを見せる結果となりました。

価値が下がりにくいマンションの選び方

ただし、需給バランスの取れた地域であれば、どんなマンションでも価格が下がらないかといえば、そんなことはありません。築年数の経った中古マンションが増えていくこともすでに確定した未来ですから、これからマンションを購入するのであれば、将来的にも価値が維持されるマンションを選びたいところです。

値下がりにくいマンションのその他の条件としては、「耐震性」「管理状態」があげられます。耐震性については、現行の耐震基準(新耐震基準)を満たしているものを選ぶようにしましょう。安全性の不安に加え、住宅ローンが借りにくくなっているなどの背景もありますから、できれば新耐震基準のマンションがおすすめです(図3)。以前のコラム「不動産屋さんから、旧耐震のマンションを勧められて不安です」「築50年のマンションを買ってもよいでしょうか?」なども参考にしてみてください。

図3. 阪神・淡路大震災の被災状況

「管理状態」については、今後より重要性を増していくと考えられています。2022年からは管理計画認定制度やマンション管理適正評価制度が始まるなど、マンションの持続可能性が求められるようになっているのです。管理面については「マンションの修繕積立金は上がり続けますか?」「長期修繕計画とは、なんですか?」「管理費・修繕積立金が高いマンションはどうですか?」などもご覧ください。

今回は、空き家の増加とマンション価格の関係について解説しました。もちろん、都市部のマンションでも空き家が増えるということは予想されますが、空き家が目立つものは「立地」「耐震性」「管理状態」に難のあるマンションに集中するでしょう。マンション価格が将来的に下落するだろうと期待せず、自分にとっての必要なタイミングでマンション購入を検討してみてください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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