築50年のマンションを買ってもよいでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2023.4.11

ご質問

マンションを買いたいものの、新築は高すぎて手が届きません。思い切って古いものを選択することも考えているのですが、例えば築50年経つようなマンションを買っても大丈夫なのでしょうか

首都圏の新築マンション価格は2年連続で平成バブル超えの高値水準となり、簡単には買えない代物となりました。それならば、と中古マンションに目を向ける方も増えているようですが、そこで気になるのはマンションの築年数です。ある程度の古さは許容できそうですが、築50年を超えるような古いものを選んでもよいのでしょうか。

今回は、自身も築50年のマンションを購入してリノベーションした経験を持つ、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、古いマンションを選ぶ際の注意点について解説してまいります。

古さゆえのリスクを理解する

今回のご質問をよく読んでみると、住宅購入の第一希望は新築マンションであり、妥協案として中古も検討しているという印象を受けます。このように、新築と中古を並行して検討する場合には、新築と中古の違い、特に古いマンションがもつリスクについて正しく理解することからはじめるとよいでしょう。築50年ということは1970年代に建てられたものになりますから、建物に求められる性能が現代とは大きく異なるのです。まずは、古いマンションのリスクから見ていきます。

リスク(1)耐震性が低い
以前のコラム「旧々耐震とはなんですか?」でご紹介したように、日本の耐震基準は、度重なる地震の被害を受けて強化されてきました(図1)。築50年を超えるマンションとなると、旧耐震か、年代によっては旧々耐震に該当するものも出てきます。阪神淡路大震災により大破したマンションの割合は、新築で0.3%、旧々耐震では8.5%という調査結果もありますから、その差は歴然です。耐震補強により現行の基準まで耐震性を引き上げているマンションもありますが、特に対策をしていなければ耐震性の低さが一番のリスクといえるでしょう。

図1. 震災と耐震基準の変遷

リスク(2)断熱性能が低い
最近の新築マンションの動向をみると、断熱性能・省エネ性能の高さを売りにするディベロッパーが登場するなど、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが増えてきました。ですから、これから新築マンションを買うとなれば、どれを選んでも最低限の断熱性能を有しているはずです。一方で、築50年の中古マンションとなると、ほぼ間違いなく断熱性能は非常に低いレベルとなります。私が以前住んでいたマンションもそうなのですが、外気と接する壁面でもコンクリートに直接壁紙が貼られている、つまり無断熱状態で建てられているケースも珍しくありません(図2-a)。夏は暑くて、冬は寒い、そんな環境です。

図2. 中古マンションの断熱の様子

リスク(3)設備関係のスペックが低い
オートロックや宅配ボックスといった設備の有無も新築と築50年マンションとの違いといえます。さらに、建物のスペックという面で細かいところまで見てみると、床のコンクリートスラブの厚みや電気・ガスの容量などにも違いがあります。築50年のマンションとなると、床のコンクリートが薄く、振動音が伝わりやすくなってしまいますから、騒音注意の張り紙を見かけることもよくあります。電気設備面では、各戸の電気容量を30Aまでしか上げられない、200Vの電源が使えないというマンションもあります。その他にも高速なインターネット通信が行えない場合がある点なども、古さゆえのリスクとして捉えるとよいでしょう。

リスク(4)管理不全だと取り返しがつかない
マンションにおける管理の重要性は、このコラムでも幾度となく言及しておりますが、古いマンションを検討する際には特に慎重に確認したいところです。管理不全の状態で月日が流れると、修繕したいがお金がない。お金がなくて修繕できないから事態がさらに悪化する。それでもお金がないから修繕できない・・・と負のスパイラルに陥ってしまいます。築50年で管理不全となると、もはや取り返しがつかない状態ですから、そのようなマンションを買ってしまわないように気をつけましょう。

築50年でも安心できるマンションとは?

古さゆえのリスクというネガティブな面から話しはじめてしまいましたが、逆にそれらのリスクをうまくコントロールできるのであれば、安心して古いマンションを選べることになります。今回のご質問は「築50年経つようなマンションを買ってもよいか?」というものでしたが、できれば、これから解説するマンション選び・リノベーションの注意点を踏まえた上で買ってほしいというのが、私からの答えになります。

マンション選びの注意点
古いマンションのリスクの中でも、生命・財産に関わるのが耐震性です。もちろん、大地震が起こったから旧耐震はすべてダメになる、新耐震は絶対に安全だ、というものではありませんが、築50年のマンションを選ぶ場合は、耐震補強をして現行の基準を満たしているものや、調査の結果現行の耐震基準を満たすことが確認されているものを選ぶようにしましょう

また、管理不全に陥る可能性が高いものは避けるべきですから、購入前にマンションの財政状況や修繕の履歴、長期的な修繕計画について確認するようにしましょう。2022年4月からはじまった「管理計画認定制度」の認定を受けるマンションも今後増えていくことが予想されますので、将来的には認定マンションから選ぶというやり方もあるかもしれません。

リノベーションの注意点
築50年のマンションで安全・快適に暮らすためには、まずは配管や配線といったライフラインの部分を総取り換えしたほうがよいでしょう。その上で、古さゆえのリスクである断熱性能の低さを解決できるように、外壁面や窓面に対して十分な断熱改修を行い、新築同等の性能にすることをおすすめします(図3)。断熱性能が高まると、熱が逃げにくくなり、エアコンの容量が小さいもので十分になるという効果もありますから、電気設備面が弱いマンションでも快適に過ごすことができます。

図3. インナーサッシによる断熱性能強化

今回は、古いマンションのリスクや選ぶ際の注意点について解説しました。ご質問いただいたように、新築が高いから思い切って古いものにシフトする、という考えはとても合理的だと思います。しかしながら、あまり古くなりすぎると安全性や資産性についての懸念も出てきますから、今回の回答を参考にしていただき、ほどよい落としどころを見つけてみてください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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