今後、リノベ費用はあがるのでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.10.8

ご質問

インフレ局面に入り、あらゆるものの値段が上がっていることを実感しています。リノベーションの工事費も今後の上昇が予想されるのでしょうか。

日本では長らくデフレ状態が続いていましたが、ここ数年は世界的な金融緩和や国際情勢などによる物価の高騰が続いています。リノベーションでは多くのお金が必要になりますから、工事費用がどうなっていくのか、今後の動向が気になるところです。リノベーション費用は上がるのか、はたまた下がるのか、どのように考えればよいのでしょうか。

今回は、10年にわたりリノベーションの現場で働いている、ファイナンシャルプランナーで宅地建物取引士の”こっしー”が、リノベーション費用の動向予測について解説してまいります。

当面は上昇圧力が強く働く。

はじめに結論からお伝えしてしまうと、当面の間はリノベーション費用の高騰が続くだろうと予想しています。リノベーションをする際には「資材」と「人材」が必要になりますが、資材価格も労務費も高騰が続いている状況にあり、それらがすぐに下がる可能性は低いと考えられるのです。まずは、資材価格や労務費の動向と予測についてみていきましょう。

資材価格の動向
ものの価格が上がっているという点については、みなさんも日々の生活の中で実感しているでしょう。その感覚は正しく、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の推移を見ると、2020年を100としたときに2024年8月は108.7となっており、前年同月比は2.7%のプラスとなっています(図1)。

図1. コアCPIの推移

(総務省統計局 2024年9月発表データより)

さらに、消費者物価指数のなかで、トイレやキッチンなどの住宅設備に該当する「設備修繕・維持」の項目を抜き出してみると、2024年8月は118.3となっており、とりわけ上昇幅が大きいことがわかります(図2)。

図2. CPI「設備修繕・維持」の推移

(総務省統計局 2024年9月発表データより)

一般社団法人日本建設業連合会が発表している資材価格高騰についての資料(2024年9月版)を見ても、木材・金属・コンクリート・樹脂など、建設業に関連するあらゆる資材の価格が上昇していることが伝わってきます(図3)。

図3. 建設工事の資材価格の現状

(一般社団法人日本建設業連合会 2024年9月発表「建設工事の資材価格高騰」パンフレットより)

それでは、これだけ高騰が続いている資材価格が下がることはあるのでしょうか。価格高騰の原因としては、コロナ終息後の経済回復と需要の増加に加えて、エネルギー価格の高騰も大きく影響しています。ロシア産天然ガスからの脱却、液化天然ガスの需給のひっ迫などを背景に、エネルギー価格の水準は高値で推移すると予想されますから、少なくとも数年以内での資材価格の大幅な下落は起こらないと考えてよいでしょう。むしろ、AIやEVの発展による電力需要の増加など、エネルギー価格についてはもう一段の上昇があっても不思議ではありません。

労務費の動向
労務費の推移を確認するために、国土交通省の公共工事の労務単価を見てみましょう。直近(2024年3月からの適用)では23,600円となっており、5年前の2019年と比べると約21%の増加となっています(図4)。

図4. 公共工事設計労務単価の推移

(国土交通省2024年2月発表「建設工事の資材価格高騰」報道資料より)

家づくりにおいては、多種多様な職人さんが関わることになりますから、日本建設業連合会の労務単価についての資料(2024年9月版)も見てみましょう(図5)。こちらは2021年1月との比較となっていますが、どの工種においても労務費が高騰していることがわかります。

図5. 工種ごとの労務単価の現状

(一般社団法人日本建設業連合会 2024年9月発表「建設技能労働者の労務単価の上昇」パンフレットより)

さらに、同連合会の資料によれば、建設業においては他の業種に比べて高齢化が進み、若手が少ないという状況もありますから、今後も担い手不足が進むと考えられます(図6)。腕のいい職人は高単価で仕事を受けられる状況ですから、いいものをつくろう(=腕のいい職人に任せよう)と思うと、当然労務費についても高い水準になるのです。

図6. 建設業の年齢別就労者

(一般社団法人日本建設業連合会 2024年5月発表「建設業デジタルハンドブック」より)

安かろう悪かろうが如実に現れる?

資材価格も労務費も高騰するインフレの状況下においては、デフレ時代のような安さ追求では満足のいくものづくりができません。素材や仕上がりの質、働く人の労働環境など、どこかに大きなしわ寄せが及ぶこととなるのです。住宅のリフォーム・リノベーションの業界でいえば、コストを抑えるために本来やるべき下地の改修を行わないということがあったり、ひとりの担当者が手に負えないくらい多くの現場を掛け持っていたりと、現状でも抱えている多くの問題が、加速度的に顕在化するのではないかと考えています。

また、2025年からは新築住宅で断熱・省エネ義務化が始まることからもわかるように、将来的には中古住宅においても一定の省エネ性能を満たすことが社会的に要請されるようになるでしょう。そのような社会においては、きちんとリノベーションした住宅は相対的に評価され、安く済ませた住宅は相対的に評価を落とすことになると考えられます。どちらが良い悪いということではなく、お金はかかるが価値も向上する資産としてのリノベーションと、お金はかからないが評価もされない消費としてのリフォームに二極化していくのかもしれません。

リノベーションをするなら。

施工費用のさらなる高騰も予想される状況下において、リノベーションを検討する人はどのような動き方をすればよいのでしょうか。現在所有しているお住いのリノベーションを考えている方は、それぞれのタイミングもあるでしょうが、なるべく早い時期にリノベーションの具体的な検討を始めるとよいでしょう。1年後・2年後にはどこの会社も施工費用が上がっているということも起こりえますから、可能な範囲で早く動くという考えを持っておきましょう。

これから中古マンションを購入してリノベーションをしようと検討されている方は、マンション選びにもひと工夫するとよいでしょう。住まいとしての質を落とさずにリノベーション費用を抑えるのであれば、コンパクトなお部屋を選ぶというのもひとつの答えです。寝室は最低限にして、その分をリビングにあてるなどのメリハリをつけることで当初の想定よりも5~10平米狭いところでも満足して暮らすこともできます。あるいは、リノベーションにきちんとお金をかけられるように、比較的価格の落ち着いた古いマンションを選ぶというのもよい選択です。ただし、古いものを選ぶ際には、「買ってはいけないマンションはありますか?」「築50年のマンションを買ってもよいでしょうか?」なども参考にしていただき、間違いのないマンション選びをしてみてください。

今回は、これからのリノベーション費用の動向予測について解説しました。さまざまな検討材料を踏まえると、当面はじりじりと価格高騰が続く可能性が高そうです。安さに惹かれて施工会社を決めてしまうと、施工の品質が悪かったり、担当者がすぐに辞めてしまったり、数年後に会社が倒産してしまったりと、住まい手にとってのリスクもありますから、業者選定はじっくり考えることをおすすめします。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、安全性や快適性にもこだわった質の高いリノベーションを提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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