マンションが高くて買えません

リノベーションなんでも相談室 | 2023.12.5

ご質問

マンションを探しているのですが、とくに都内の新築などは高くて手が届きません。マンションの価格高騰の背景やこの先の展望、マンション購入のために自分たちができることについて教えてください

「マンションが高すぎる」というのは、新築・中古問わず、いまマンション探しをしている方に共通する悩みかもしれません。実際、直近の10年でマンション価格は大きく上昇しており、希望条件にぴったりと合致するものに出会うことが難しくなっています。それでもマンションを購入したいわけですから、この局面をどのように乗り越えればよいのでしょうか。

今回は、自身でも3度の中古マンション購入とリノベーションを経験している、宅地建物取引士でファイナンシャルプランナーの”こっしー”が、マンション価格高騰の背景と対策について解説してまいります。

マンション価格高騰の背景

まずはマンション価格がどの程度高騰しているのか、長期的な推移を見てみましょう。図1では、平成バブル前の1986年から2022年までの首都圏の新築マンション価格の推移を示しています。2021年・2022年においては、2年連続で平成バブルのピークを超えており、最近のマンションは高いな、と感じるのも無理はありません。

図1. 首都圏新築マンション価格の推移

図1を眺めていると、2013年頃からマンション価格の上昇が勢いを増していることにも気がつきますから、この期間に焦点を絞ってマンション価格の推移を検討してみましょう。図2で示しているのは、2010年1月を基準とした、新築マンション・中古マンションの平米単価の月次推移です。新築マンションにおいては、高額物件の販売開始などによる外れ値も存在するものの、新築・中古ともに2013年頃からは概ね価格上昇を続け、直近では、新築で約1.7倍、中古では約1.9倍という価格水準になっています。この10年ほどで2倍近い金額になっているとは驚きです。

図2. 2010年1月比のマンション価格指数

マンション価格高騰の要因についてはさまざまな考察がされていますから、詳細は経済のプロにお任せするとして、ここではマンション価格高騰の背景についての基本的な考え方を確認してみましょう。マンション価格高騰の引き金となっているのは、いわゆるアベノミクスです。デフレからの脱却のため、2012年に大胆な金融政策からはじまる「3本の矢」を掲げ、世の中にお金が回り、企業の利益や設備投資が増え、働く人の賃金も上がっていく好循環を目指しました。実際、この政策によって、世の中にあるお金の量ともいえるマネタリーベース(流通現金と日本銀行当座預金の合計値)が膨らんでいることがわかります(図3)。

図3. マネタリーベースの推移

世の中のお金の量が増えるほど、相対的なお金の価値が下がり、ものやサービスの価値が上がることになります。マネタリーベースの増加によって相対的に貨幣価値が下がるなかで、比較的流動性の高い資産であるマンションの価格が上昇していったということであればうなずけます。さらには、金融緩和が行われると銀行の貸出金利が低下します。マンション価格が高くなっても、住宅ローン金利が低くなれば毎月の返済額はあまり変わりませんから、低金利水準が続くこともマンション価格高騰に寄与しているといえます。

しばらく価格は下がらないと予想

マンションを購入する側としては、安いに越したことはない、というのが正直な思いでしょうから、近いうちにマンション価格が下がることを期待してしまいます。ところが、これまでのご説明のとおり、マンション価格はバブル的に高騰しているわけではありません。デフレからの脱却を目指す経済政策に伴って上昇しているということですから、都市部におけるマンション価格の暴落は起こらないと考えた方が賢明でしょう。もちろん、立地の悪さや管理不全などの理由で流動性が著しく低いマンションについてはこの限りではないことも添えておきます。

2013年頃から続くマンション価格の高騰に拍車をかけたのが、新型コロナウイルス感染拡大の影響です。在宅時間の増加により住宅購入意識が高まる一方で、他人との接触を避けるために売却を先送りする方も増え、需要と供給の不均衡が生じてしまいました。図4のように、コロナ禍以降、世の中の販売物件数(在庫件数)が大きく減少し、それと呼応するように中古マンション価格は上昇しました。

図4. コロナ禍のマンション価格と在庫件数の推移

さらに、コロナ禍による世界的な住宅需要の高まりに端を発するウッドショック、ウクライナ情勢などによる燃料価格の高騰も重なり、マンション価格が下落する要因を見つけることができないというのが、現在の率直な感想です。ここから日本経済がうまく回り、物価だけでなく賃金水準も上がるということになれば、マンション価格も含めてさらにインフレが進むことも想定しておいた方がよいでしょう。

マンション購入のためにできること

マンション価格が高い、下がる見込みがない、という状況であっても、「欲しいタイミングでマンションを購入するのが正解」だと私は考えています。住まいづくりの希望条件について、緩和できる部分や工夫できることはないのか、という点についてじっくり検討してみましょう。条件を見直す際のヒントをいくつかご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

できること(1)はやく買う
インフレ局面ではじりじりとものの値段が上がっていきますから、なにを買うにも、いまこの瞬間が一番安い、という状態がしばらく続くかもしれません。さらに、もう少し俯瞰して考えると、あるひとの人生における総居住費が一定である場合、賃貸の期間が短い方が住宅購入にたくさんのお金を掛けることができます。図5の(a)と(b)を比べた場合、(a)の方が住宅購入の予算を増やせますから、より希望に近い条件を選択できるようになるのです。

図5. 人生における総居住費のイメージ

できること(2)古いマンションも検討する
日本のマンション市場では、新しいものよりも古いものが安くなります。図6にはマンションの経年による価格の変化を示していますが、価格が落ち着いてくる築30年を超えるようなマンションを選ぶのもおすすめです。その場合、マンションの管理状態や耐震性を正しく見極める必要もありますから、以前のコラム「管理を買え、は本当でしょうか?」や「築50年のマンションを買ってもよいでしょうか?」なども参照してみてください。

図6. マンションの築年数別平米単価

できること(3)立地を見直す
便利なターミナル駅から徒歩数分という立地は誰もがうらやみますが、当然のことながら、マンション価格は隣駅のものよりも高くなるはずです。住宅購入において立地は最重要項目のひとつですが、「絶対にこの場所だ」とこだわりすぎず、これまで降り立ったことがない街も含めて、幅広く可能性を探ってみてください。馴染みはなかったけれども、なぜだか暮らすイメージが湧いてくる、という場所が見つかるかもしれません。

できること(4)広さを見直す
コンパクトなお部屋を選べば、その分価格を抑えることができます。首都圏の中古マンションの平均平米単価が70万円程度ですから、想定よりも10平米狭いお部屋を選ぶことができれば、700万円も得したことになります。限られた空間をかしこく使う、というのはリノベーションの得意分野ですから、コンパクトなお部屋を選ぶ際には、リノベーションの計画についても同時並行で検討するとよいでしょう。空間の使い方については、2022年11月に開始した「地方もいいけど、やっぱり都会に住みたいプロジェクト」での検討内容などもぜひご覧ください。

今回は、マンション価格高騰の背景と、そのような状況下でもマンションを購入するためのヒントについて解説しました。少し古いかな、少し狭いかな、と心配になるマンションでも、リノベーションの工夫によって希望通りの空間をつくることもできます。新築と比べて価格を抑えつつ、納得のいく住まいづくりができるリノベーションは、このような状況でこそ真価を発揮するかもしれません。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、物件探しからのワンストップリノベーションサービスの提供だけでなく、リノベーション済物件の販売も行っています。すぐに住み始められる物件を揃えておりますので、ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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