マンションでも風通しよく暮らせますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2023.11.7

ご質問

マンションと戸建で迷っています。マンションは戸建と比べて窓が少なく、風通しがよくないのではないかと心配しています。マンションでも、リノベーションによって風通しのよいお部屋にできるのでしょうか

一般的なマンションの住戸では、窓の数は3~4つ程度であることが多く、戸建と比べて風通しが悪そうだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。いくらリノベーションをするといっても、共用部である窓を増やすことはできませんから、気持ちよく風が流れる住まいをつくるためには、空気の通り道を考える必要がありそうです。どのような工夫をすれば、心地よく風が抜ける住まいをつくれるのでしょうか。

今回は、自身も3度の中古マンション購入とフルリノベーションをした経験を持つ”こっしー”が、マンションでも風通しのよい空間をつくるための工夫について解説してまいります。

一般的なマンションの風通し

間取の工夫について検討する前に、まずは一般的なマンションの風通しについて考えてみましょう。よくありそうな3LDKのマンションの間取(図1-a)をベースにしてお話を進めてみます。バルコニー側に掃き出し窓が2つ、共用廊下側に腰高の窓が2つというつくりで、廊下とリビングの間には開き戸が設けられています。

図1. 一般的な3LDKマンションの風通し

この間取で風を通そうと考えたときに、みなさんはどこの窓を開けるでしょうか。まずはリビングに近く、大きな窓である、「窓1」と「窓2」を開けてみようと考えるかもしれません(図1-b)。ところが、風の入り口と出口が別の面にないと空気が流れにくいため、このケースでは思ったよりも風が通らないのです。マンションの立地条件などにもよりますが、一般的には、図1-cのように両側の窓を開けると空気の流れがよくなります。ただし、廊下とリビングの間の開き戸・寝室の開き戸をそれぞれ開け放つ必要があるため、「窓3」や「窓4」ではなく、玄関扉を少し開いて換気を行うケースも多いかもしれません。

風通しのよい間取のつくり方

ご質問では「マンションは風通しが心配」ということでしたが、ご安心ください。当然、窓を増やしたり大きくしたりできないという制約はあるものの、リノベーションによって風通しのよいお部屋をつくることはできます。ここからは、リノベーションで取り入れるべき工夫について考えてみます。

工夫(1)開き戸ではなく、引き戸を利用する
先ほどの図1-cの例では、廊下や寝室の扉を開けておくことで、空気の通り道を確保することができます。このような開け放つことを想定した扉については、開き戸ではなく引き戸を利用するとよいでしょう。開き戸の場合はストッパーを使い開けたままにすることもできますが、扉自体やドアノブが通行の妨げとなりますから、開けた状態でも邪魔になりにくい引き戸がおすすめです。

工夫(2)廊下とリビングの仕切りを無くす
リノベーションで間取も変えるのであれば、そもそも廊下とリビングの間に扉を設けないという工夫もあります。図2は、図1のお部屋をフルスケルトンからリノベーションしたイメージプランになります。リビングや寝室といった居住空間と、廊下などの非居住空間をひとつながりの空間とすることで、空気の通り道をつくりやすくなります。

図2. 風が通りやすい間取

工夫(3)窓のある玄関土間をつくる
図2でもうひとつ特徴的なのが、広い玄関土間です。もともと寝室だったところを玄関の一部として取り込んでいるので、マンションでありながら窓のある玄関をつくることができています。プライベートな空間である寝室ではなく、家族の共用スペースである玄関に窓があることになりますから、いつでも気兼ねなく窓を開けて風を通すことができそうです。

工夫(4)複数の空気の動線を確保する
風が気持ちよく流れる空間をつくろうということであれば、複数の動線を確保した間取もおすすめです。図1に代表される一般的なマンションでは、廊下が唯一の空気の通り道となりますが、たとえば図3のような間取ではどうでしょうか。空気の動線がひとつに限られることがなく、窓を開ければ家中に空気が流れそうです。もちろん、風向きなどで空気の流れは変わりますが、一般的なマンションにはない風通しのよさを感じることができるでしょう。

図3. 複数動線で風が通りやすい間取

換気の際の注意点

春や秋といった過ごしやすい季節においては、窓を開け放つことで室内も心地よい環境をつくることができます。一方で、マンションのような高気密な住まいの換気の作法についても正しく理解することが大切ですから、過去のコラムも参考にしてみてください。

給気口は閉めてもよいのでしょうか?
窓を開けての換気以外に、給気口から新鮮な外気を取り入れ、洗面室やお風呂の換気扇から汚れた室内の空気を排出するという空気の循環が常に行われている必要があります。この循環を止めてしまうと室内の空気の質が悪くなってしまいますから、基本的には給気口は開けたままにしておくように意識しましょう。

乾燥対策について教えてください
空気が乾燥した冬場においては、室内の加湿を意識的に行うようにしましょう。窓を開けて換気をすると、室内に冷たく乾いた空気が取り込まれることになりますから、温湿度計を確認しながら、快適な室内環境の維持に努めてみてください。

マンションの暑さ対策はありますか?
高温多湿の夏場においては、窓を開けて換気することで、お部屋の中の湿度が高くなりすぎてしまいます(図4)。風が流れていても、室内の湿度が高まることで、暑く感じる・健康に影響がでる・カビやダニが増えるなどの問題も起こり得ますから、除湿器やエアコンを活用しながら室内環境を整えましょう。

図4. 2021年東京の月別絶対湿度

今回は、マンションでも風通しのよい空間で暮らすための工夫について解説しました。つながりのある大きな空間をつくることで風を気持ちよく通すことができますが、壁や窓の断熱性能が低いままの大空間では空調効率が悪くなるおそれもあります。風通しのよい間取を考える際には、目には見えない性能面についても意識を向けてみてください。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、光が入り風の抜ける心地よい空間を、リノベーションを通じて提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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