マンションの暑さ対策はありますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2022.7.25

ご質問

気密性の高いマンションは、暑さが逃げにくいと聞いたことがあります。マンションで夏も快適に暮らすためには、どのような対策をすればよいのでしょうか

ヒートアイランド現象や地球温暖化の影響を受けて、ここ最近は夏の暑さが厳しさを増しているように感じます。とくに、熱を貯め込みやすいコンクリート造のマンションでは、夜になっても室温が下がらずに寝苦しい夜を迎える方も多いかもしれません。

今回は、マンションで夏の暑さを乗り切るための対策について、低性能から高性能まで幅広い中古マンションでの居住経験のある“こっしー”が解説してまいります。

夏の室内の暑さには要注意

冬の寒さもさることながら、夏の暑さも健康に重大な影響を与えます。まずは、その危険性について考えていきましょう。暑さによる健康被害として、多くの方が真っ先に思いつくのは熱中症でしょうか。東京都消防庁によれば、令和3年6~9月の4ヶ月間に熱中症で緊急搬送されたひとが3,414人、そのうちの37.5%は住宅など家の中で発生しています(図1)。照りつける太陽のもとで発症するイメージのある熱中症ですが、じつは、家の中での被害が最多となっているのです

図1. 2021年東京都の熱中症発生場所

また、2010年から2011年にかけて大阪府内の約200名を対象として行われた調査では、夏季においては睡眠問題や疲労という健康被害が顕著に現れることが報告されています。睡眠の質の低下は生活習慣病の罹患リスクを高め、かつ症状を悪化させることも知られていますから、無視できない問題です。

温度と湿度をコントロールする

夏の暑さを乗り切るために考えなければいけないのは、温度と湿度のコントロールです。普段の生活では温度と比べると湿度を強く意識することは少ないかもしれません。ところが、快適な暮らしを実現するためには、温度・湿度の両方に意識を向ける必要があるのです。実際、同じくらいの気温でも、湿度が高くなることで暑さ指数(WBGT)が高くなり、熱中症の搬送者数も増えていることがわかります(図2)。

図2. 暑さ指数と熱中症被害の実例(環境省「熱中症予防サイト」)

それでは、温度と湿度をコントロールするためにどうすべきかといえば、お察しの通り、エアコンを使用することが有効です。扇風機を回したり、窓を開けて風を通したり、緑のカーテンを設置してみたりと、いろいろな暑さ対策がありますが、温度も湿度も下げることができるのはエアコンだけなのです。窓を開けることで涼しい空気を取り込めればよいのですが、残念ながら東京の夏は湿度が高く、換気をすることで余計に外気中の水分を室内に取り込むおそれもあります(図3)。

図3. 2021年東京の月別絶対湿度

とくにマンションの場合は、周辺の敷地が土ではなく舗装路であることが多く、夜になっても周辺の気温が下がりにくいことが考えられます。窓の数も限られており、風を通すにも限界がありますから、酷暑に見舞われる時期においては、エアコンに頼るという考えが賢明なのかもしれません。

エアコン効率を上げるための6つの工夫

エアコンに頼るのであれば、地球のため、社会のため、家計のためにも、なるべく効率的にエアコンを稼働させたいものです。それこそが、「マンションで夏も快適に暮らす」ための対策となるのです。すぐにできること、大掛かりなものなどさまざまですが、6つの工夫をご紹介いたします。

(1)エアコンの掃除をする
これはすぐにできることですね。説明書に従って定期的な清掃をしていただき、年に一度はプロによるクリーニングを受けてみるのもよいかもしれません。

(2)エアコンを常時運転する
常に動かすか、必要なときだけ動かすか、どちらが得かはケースバイケースなのですが、快適さと合わせて考えるのであれば、夏場はエアコンの常時運転がおすすめです。常時運転によって、温度が安定するだけでなく、湿度の過剰な上昇を防ぎやすくなります。これもすぐにできますが、気密性・断熱性の低い家においては、電気代が高くつく可能性もあるのでお気をつけください。

(3)サーキュレーターなどで空気を撹拌する
冷たい空気は重たく、下の方に溜まりやすいという特性を踏まえて、サーキュレーターでお部屋の空気を撹拌することも有効です(図4)。空気が混ざり、サーキュレーターからの微風を感じることで、エアコンの設定温度を高くしても十分に涼しさを感じられるようになります。これは、サーキュレーターさえ購入すれば実行できますね。

図4. サーキュレーターで空気を撹拌

(4)日射の侵入を防ぐ
古くから使われている「よしず」や「すだれ」といった、日射遮蔽効果のあるものの活用も大変有効です。できれば、室外にこれらを設置して真夏の厳しい日射しを防ぎたいものですが、マンションの場合は美観や事故防止の観点から、屋外への設置が禁止されることもあります。その場合は、室内側での対策となりますが、カーテンの代わりにハニカム構造のブラインド(図5)を使うという方法も考えられます。

図5. 断熱・日射遮蔽効果のあるハニカムブラインド

(5)断熱性能を強化する
古いマンションでは、断熱性能が大きく不足しているものもたくさんあります。夏の日差しで暖められたコンクリートの熱が室内に伝わりにくくなるように壁面(最上階であれば天井面も)の断熱強化を行いましょう。また、窓からの熱の侵入も防ぐ必要がありますから、Low-Eガラスへの変更、インナーサッシの設置などによる窓の性能向上にも取り組めるとよいでしょう。断熱と日射遮蔽を合わせて考えることで、省エネで快適な暮らしの実現につながりますが、これらは比較的大規模な工事が必要になりますね。

(6)空気の流れる間取りにする
リノベーションでゼロから間取りをつくるのであれば、空気の流れも考えるとよいでしょう。新築では、居住空間(リビングや寝室など)と非居住空間(廊下など)を壁や扉で明確に区切る間取りがよく見られますが、それでは快適な居住空間と不快な非居住空間という構図になってしまいがちです。どこにいても快適に過ごせるように、かつそれをなるべく少ないエアコン台数で実現できるように、リノベーションで工夫をしてみてください

今回は、マンションで夏を乗り切る工夫について解説しました。「エアコンを活用しましょう」という当たり前の結論となりましたが、高温多湿な日本の夏においては、湿度をしっかりと下げることが快適・健康に暮らすためのポイントとなるのです。簡単にできる工夫については、ぜひすぐに試してみてください。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、安全性・快適性を大切にした住まいづくりを提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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