団地を買って、長く住めますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2022.11.1

ご質問

団地のリノベーションに興味を持っています。築年数が経っているため不安もあるのですが、団地を買ってリノベーションして、長く住めるものなのでしょうか

広い敷地に十分な間隔を開けて住棟が建てられた団地には、最近のマンションにはない魅力があります。恵まれた環境に加えて、手ごろな価格帯ということもあり、団地を買ってリノベーションをする方も増えているように思います。一方で、築年数が経っているものも多く、いつまで住めるかなど、不安に感じることもあるでしょう。

今回は、多くの団地リノベのお手伝いをしている、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、団地の寿命や長く住むためのリノベーションのコツについて解説してまいります。

団地は、100年持つ?

まずは、団地を含む、鉄筋コンクリート造の建物の寿命というところから考えてみましょう。以前のコラム「マンションの寿命を教えてください」で解説している通り、団地やマンションの寿命については、47年、68年、117年、120年などさまざまな指標が存在します。総合して考えると、建物の物理的劣化を防ぐための維持管理が行われていれば、100年は持つと考えてもよいといえるでしょう

一方で、中低層でエレベーターなし、みなさんのイメージ通りの古い”団地”にフォーカスすると、別の課題も見えてきます。物理的劣化に対して、社会的劣化や機能的劣化という考え方になりますが、例えばエレベーターがないことによりバリアフリー化が難しいことや、メンテナンスしにくい給排水のつくりになっていること(図1)、電気容量が小さいことなどがあげられます。これらの課題に対して、住み手がどこまで許容するかということにはなりますが、共用部の給排水管更新の際に天井裏の配管も交換するなど、長く使うための一定の配慮がなされていると安心です。

図1. 団地浴室内のスラブ下配管

実際、いくつかの団地では「100年団地」を目指すなど、団地の長寿命化を目指した取り組みがなされています。NPO法人や地方自治体と連携を取りながら、空き家対策や高齢者・子育て世帯に向けた取り組みをするなど、ソフト面でも意欲的に取り組んでいる団地もあるのです。

団地の建替えは、現実的か?

長く使えるといわれても、どうしても気になるのが、団地の建替えです。一般的なマンションと比べて敷地をゆったりと使っている団地では、立地などの条件が整えば、建替え時の居住者の金銭的負担は小さくなります。図2のように、もはや金銭的負担のない建替えは難しくなりましたが、それでも少ない負担で新築に生まれ変われるのなら、住人としても建替えは歓迎でしょう。

図2. 建替え時の負担額の推移

ところが、大規模な団地においては、そう簡単に建替えの話はまとまらないものです。築年数の経った団地では住民の高齢化も進んでいるため、費用面や引越しの負担が重くのしかかります。住宅金融支援機構の「まちづくり融資」など、金融面でのサポートはあるものの、住民間の合意をとるプロセスには多くの時間と労力が必要となります。建替えを一度は検討したものの、手入れしながら長く使っていくという方向で着地する団地も多いようです。

現在(2022年11月)建替え工事中の石神井公園団地(東京都練馬区)においても、10年以上の歳月をかけて勉強と検討がなされ、ようやく建替えが成就したということですから、合意形成の難しさがうかがえます。団地を購入する際には、建替えの計画が具体的に持ち上がっているのか、過去に検討した経緯があるのかについても確認するとよいでしょう

長く住むために、リノベーションでやるべきこと

ここまでで解説したとおり、適切な維持管理がなされていないものや建替えの話が進んでいるものを除いては、団地を買って長く住む、ということはできそうです。ただし、以前のコラム「団地リノベについて教えてください」でも触れたように、古い団地には安全性や性能面ではさまざまな懸念もあります。それらを解消し、長く健康・快適に暮らすために、団地のリノベーションでは下記のような工夫をしてみてください。

(1)室内の配線や配管を一新する
室内の配管関係の寿命は長く見積もって30~40年程度ですから、それを過ぎると漏水のリスクが高まります。古くなった配管や電気配線をそのままにした状態で、表面だけお化粧するようなリフォームを行うのは時限爆弾を抱えているようなものですから、あとから重大な問題を引き起こすかもしれません。リノベーションの際には配線・配管といったライフラインを一新するとよいでしょう。

(2)アスベスト含有の有無を調査する
2022年4月からは、100万円を超える改修工事を行う際に、アスベストの事前調査・報告を行うことが義務付けられるようになりました。かつて団地の天井仕上げでよく使用されていた吹付材には、アスベスト含有の可能性があるため、リノベーションの工事を始める前に、吹付材の検体を採取して検査を行う必要があります。吹付材が使用されている団地を購入する場合は、万が一に備えて、アスベスト除去費用(200~300万円)も予算に組み込んでおくとよいでしょう。

(3)断熱性能を高める
団地は日当たりのよい建物配置がなされていることが多いものの、建物自体の断熱性能は劣悪である場合がほとんどです。古くなったサッシからの隙間風や、窓面・壁面の結露、カビの発生に悩まされるお宅も多いでしょう。躯体面の断熱強化、インナーサッシの設置(図3)、空気の流れる間取りなど、リノベーションの工夫をすることで、暑さ・寒さの問題を解決しましょう。「リノベーションで、結露対策はできますか?」も参考にしてみてください。

図3. インナーサッシで窓の断熱性能を高める

今回は、団地を買って長く住めるのか、という疑問について解説しました。適切な維持管理がなされた団地を選ぶことや、建替えの動きについて確認することに加え、きちんと性能不足を補うリノベーションをすることで、長く快適に暮らせる住まいづくりができます。団地の魅力と欠点をよく理解した上で、素敵な団地ライフを送りたいものですね。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、古い団地でも快適に暮らせる性能向上リノベーションを提供しております。また、リノベーション完成物件の販売も行っておりますので、ご興味を持たれた方は、ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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