マンションの寿命を教えてください

リノベーションなんでも相談室 | 2021.9.14

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「中古マンションの購入を検討していますが、中古である以上、マンション自体がどれくらい持つのかが心配です。実際、マンションの寿命はどれくらいなのでしょうか」。

おっしゃる通り、マンションがどれくらい長持ちするものなのか、というのは気になるところですよね。リノベーションで素敵な空間をつくっても、建物自体がすぐに寿命を迎えるようではもったいないし、なんだかとても残念な気持ちになります。今回は、マンションの寿命について解説してまいります。

マンションの4つの寿命?

一概にマンションの寿命は〇〇年です!と明言できる数字はないのですが、インターネットなどでマンションの寿命について調べてみると、いくつかの数字に行きつくと思います。まずは、そのなかでもとくによく目にする4つの数字について見ていきましょう。

47年、法定耐用年数

鉄筋コンクリート(RC)造の住宅の法定耐用年数は47年と定められています。このことから、マンションの寿命は47年だ、と主張する方もいるかもしれませんが、それは誤解です。法定耐用年数とは、減価償却を何年かけて行えるか、という税務上の数字ですから、建物の寿命とは全く異なる指標です。例えば、木造戸建て住宅であれば22年など、建物の構造や用途によって一律に決められています。

表1.建物の法定耐用年数の一例

構造 用途 法定耐用年数
鉄筋コンクリート造 事務所 50年
住宅 47年
鉄骨造 事務所 38年
住宅 34年
木造 事務所 24年
住宅 22年

68年、残存率からの推定寿命

小松幸夫氏(早稲田大学名誉教授)は、固定資産台帳の滅失データ、つまりいつ建てられたものがいつなくなったのか、というデータをもとに建物の平均寿命(残存率が50%となる年数)を推計しています。2013年の研究結果によれば、RC造住宅の平均寿命は68年となっており、これを寿命と捉えている方もいるかもしれません。ただし、この調査には現行の耐震基準を満たさない(旧耐震)建物や、経済的理由で建替えられた中小のRC造住宅も含まれるため、現行の耐震基準で建てられたマンションについては、68年よりも長い推定寿命になることが想像できます。

117年、RC造建物の物理的寿命

1979年に出版された『建物の維持管理』のなかで、著者である飯塚裕氏は、RC造建物の物理的寿命を117年としています。当時の電電公社の電話局舎を対象にした調査であり、住宅に特化した研究ではないものの、鉄筋コンクリート造の建物が当時設定されていた耐用年数である70年を大きく超えることを示しました。

120年、鉄筋コンクリート部材の耐用年数

1951年に大蔵省主税局が示した「固定資産の耐用年数の算定方式」では、建物を構成する主要な部位ごとの推定耐用年数が規定されています。コンクリートの中性化(もとはアルカリ性であるコンクリートが、空気に触れて徐々に中性になる現象)の速度などを踏まえて、鉄筋コンクリート部材については、一般建築物で120年、外装仕上げにより延命した場合は150年と規定されています。

求められるのは、マンションの長寿命化

上記のように、建物寿命についての推計値はいくつかありますが、どれを正とすべきでしょうか。以前のコラムで紹介した軍艦島(図1)のマンションが、一応建物の体を保っていることを考えると、鉄筋コンクリート自体が100年以上持つというのは、正しいように思えます。一方で、いくら建物の体をなしていても、そこで快適に暮らすことができなければ意味がありません。コンクリートに比べ耐用年数の短い、配線・配管やエレベーター等の設備については、定期的に適切なメンテナンスがなされる必要があります。

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図1. 軍艦島の鉄筋コンクリート造集合住宅

また、1981年6月の建築基準法改正で、地震により強い建物をつくることが義務付けられました。改正以前(旧耐震)のマンションと、現行基準(新耐震)のマンションを比較した際にも、寿命の差が出てくるのかもしれません。現実には、旧耐震のマンションであっても容易に建て替えをすることができず、資金的に余力のあるマンションは耐震化と定期的な大規模修繕によって長寿命化を図るケースが多くなるでしょう。

結論を出すのは非常に難しいテーマですが、これらのことを勘案すると、「RC造のマンションは概ね100年程度の寿命があると考えて良いが、適切な維持管理がなされること、現行の耐震基準を有すること(あるいは今後耐震化が図られること)が条件となる」といったところでしょうか。住人たちの維持管理に対する意識が低いマンションでは、大げさにいえば管理不全に陥ってしまう可能性もあります。そうなると、建物としての体をなしていても、ほぼ寿命を迎えている状況だといってもよいのかもしれません。

今回は、マンションの寿命について解説しました。実際には、「物理的劣化」「社会的・機能的劣化」「経済的劣化」というマンションの3つの劣化があり、その複合的な要因で寿命が決まります。今回はもっとも重要な「物理的劣化」にフォーカスしたお話でしたので、そのほかの劣化についてもいずれご紹介いたします。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、安心できる中古マンション選びから設計施工まで一気通貫でサービスを提供しております。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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