マンションは仮の住処でしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2021.8.3

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「マンション購入を考えていますが、何となくマンションは仮の住まいで最終的には戸建に住み替えるのかなというイメージもあります。マンションを選ぶみなさんは、どのように考えているのでしょうか」。

住宅購入は人生の一大イベントですが、一度買ったら一生そこに住み続けるのか、はたまたライフステージの変化に合わせて住替えていくのか、というのは悩ましい問題かもしれません。今回は、長い人生の中で、どのような位置づけでマンション購入を考えるべきか、解説してまいります。

住宅すごろくは、昔の話

今回ご質問いただいた方の頭の中には、「住宅すごろく」のイメージがあるのではないかなと思います。住宅すごろくとは、賃貸アパート→分譲マンション→庭付き一戸建て、という高度経済成長期の標準的な住み替えの様子を表現したものであり、1973年に新聞紙面で発表されたところがはじまりといわれています。経済成長と連続的な地価高騰を背景に、不動産購入と売却を繰り返し、最終的に郊外の庭付き一戸建を購入することがゴールとされていました。

現代から考えると、すごい時代ですよね。不動産の価格は上がるものだ、という共通認識のもと、人々はマンションを購入し、そして戸建への住み替えを目指す。ディベロッパーも、それに応えるべく郊外の宅地開発を進めていく。そんな時代があったからこそ、マンションは仮の住処である、というイメージが広く定着しているのかもしれません。

実際、国土交通省が約5年に一度行っている大規模調査である「マンション総合調査」を見ると(図1)、平成5年度の調査まではマンション居住者の永住意識は低く、いずれ住替えるつもりであるという方が多数を占めていることがわかります。

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図1. マンション居住者の永住意識の推移

ところが、1990年のバブル崩壊による地価の下落、景気の低迷が続くと、不動産価格はあがるものだという共通認識も崩壊し、住宅すごろくは過去のものとなりました。図1からわかるように、マンション居住者の永住意識は高まり続け、平成30年度の調査では6割以上の方が今のマンションに永住するつもりであると回答しています。

ほかにも、景気の低迷による共働き世帯の増加も、マンション居住者の永住意識を高める要因になっているかもしれません。図2を見ると、夫婦共働き世帯の数が増え、1990年代には専業主婦世帯の数を超えていることがわかります。夫婦ともに働くとなると、郊外から片道2時間近くをかけての通勤という選択が難しくなり、より利便性の高いマンションに住み続けようという意識の変化が起こっているのでしょう。

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図2. 共働き世帯の推移

選びたいのは、いい歳の取り方をしたマンション

マンションを選ぶ方がどのように考えているか、というご質問にお答えすると、一般論としては図1で示した通り永住志向の方が多いということになります。ところが、実際にマンション購入を検討されている方のお話を聞いていると「もちろん永く住むつもりだけど、何かあったら住替えるかもしれない」という方が多いように思います。住宅すごろくの時代のような積極的な住み替えは考えないとしても、数十年後のことはわからないよ、というのが率直なお考えのようです。

それでは、「永く住むつもり。だけど、何があるかわからない」という状況のときに、どのような視点でマンション選びを行えばよいのでしょうか。ポイントとなるのは、永く快適に暮らせる、将来の処分(売却や貸出し)に困らない、という2つです。実は、この2つのポイントは結びつきが強く、永く快適に暮らせるマンションを選ぶと、将来の処分にも困りにくくなります。

永く快適に暮らせるマンション選びにおいてとくに重要になるのは、
耐震性能管理状態です。例えば耐震性能が不十分なマンションの場合、大地震への恐さがあるだけでなく、将来的な耐震補強工事や共用部の保険料などの財政上の負担が大きくなってしまいます。管理状態の悪いマンションでは、漏水などの問題があってもお金がなくて実施できず状況が悪化するなど、負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。ですので、現行の耐震基準を満たしている、及第点の管理状態という2点は最低限クリアできるとよいでしょう。

そして、これらの耐震性や管理状態は、将来的なマンションの価値や売りやすさに直結すると考えられます。国土交通省の推計(図3)を見ると、今後古いマンションが爆発的に増えていくことがわかります。築40年以上のマンションが当たり前、その中から良いものが選ばれるという社会においては、最低限の耐震性を満たし、管理もしっかりなされている、いい歳の取り方をしているマンションが選ばれるようになるというのは疑いの余地がないでしょう。

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図3. 高経年マンションストック数の推移

今回は、マンションは仮の住処なのか、という疑問からはじまり、予測不能な時代のマンションの選び方について解説しました。永く暮らす前提ですから、もちろん住みたい街やご実家近くなどの立地条件も大切にした上で、賢いマンション選びをしたいものです。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、マンション選びからのワンストップサービスを提供しております。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

みなさんからのご質問もお待ちしています!/

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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