【MUJI×UR トークイベント】団地とまちなかに“インフラゼロ”を置いてみた。(前編)
MUJI×UR団地レポート | 2026.8.24
※このレポートは、2026年7月11日(土)に無印良品グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。
松枝
みなさんこんにちは。本日はお忙しいところ、またお暑い中お越しいただきましてありがとうございます。今日は「団地とまちなかに“インフラゼロ”を置いてみた」のトークイベントを行います。
進行を務めさせていただきます株式会社MUJI HOUSEの松枝と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

無印良品グランフロント大阪ではUR都市機構さんとMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトのトークイベントを定期的に開催しているのですが、今日は趣向を変えて「インフラゼロハウス」が主役になります。
さっそく登壇者のみなさんから自己紹介をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
1.登壇者紹介
松本
こんにちは、週末の貴重なお時間を割いてトークイベントにお越しいただき、誠にありがとうございます。
UR西日本支社大阪エリア経営部の松本です。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、MUJI HOUSEさんとURが、昨年の8月末から今年の3月にかけて共同研究を実施した、「インフラゼロハウス」を防災拠点・地域コミュニティ拠点に見立て、団地とまちなかに置いてみるという取り組みについてご紹介します。
みなさまにインフラゼロハウスや団地、まちづくり、防災やコミュニティについて、少しでも親近感や気づきなどを見つけていただけたら幸いです。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
吉田
こんにちは。UR都市機構の吉田と申します。

私はURの中でも都市再生という部門の担当をしていて、和歌山市のまちなかにインフラゼロハウスを置いたときの責任者をしておりました。私がURに入ったときはまだ住宅・都市整備公団という名前で、ニュータウンの宅地供給のようなことを担当しておりました。URに入社して30年近くになるのですが、ここ数年は地域に残された個性ある地域資源を生かしてまちづくりのお手伝いをする業務などを担当してきました。
今日はどうぞよろしくお願いいたします。
川内
みなさんこんにちは。MUJI HOUSEの川内と申します。

私は2012年から2025年まで無印良品の家・取締役商品開発部長、2015年くらいから数年間はリノベーションの事業部長をしておりました。
今は退任してWEBでコラムを書いたり、YouTube等で無印良品の家がどんなに素晴らしいかというようなお話をいろいろさせていただいています。
インフラゼロハウスは私の最後の開発商品になっておりまして、これからいろんな場で活躍できたら良いなという思いを込めて今日はお話をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
本多
みなさんこんにちは。MUJI HOUSE商品開発部の本多と申します。

私は商品開発部に所属しておりまして、いろいろな商品を開発していて、「陽の家」以外は携わってきているかたちです。今は戸建ての商品開発をしながらインフラゼロハウスの設計と施工の担当をしておりますが、ほぼほぼそちらの方がメインになっており、会社では「トラック野郎」と言われています。今日はよろしくお願いいたします。
松枝
ありがとうございます。今回の「インフラゼロハウス」の実証実験の取り組みの話の前に、先ほど少し触れましたUR都市機構さんとMUJI HOUSEの取り組み「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」と、インフラゼロハウスについて川内の方からご説明をさせていただきます。
2.URとMUJI HOUSE の出会い
川内
私どもとUR都市機構さんは2012年から「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」を進めておりまして、非常に好評につき以来14年続いております。

無印良品は1980年にスタートしています。一方URさんは1950年くらいから当時人々の憧れのくらしとしてスタートしているということで、どちらも人々のくらしについて、少しでも豊かに、そしてたくさんの方に広がるように活動をしてきました。

その中で私たちはURさんの団地にとても親和性を感じていたんです。2010年くらいからUR団地のリノベーションのトライアルがいろいろなところで行われていて、その事例を見に行く中でURさんの方とお話ができるようになりました。
そこで意気投合し、2012年に初めて「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」というかたちで無印良品がURさんの団地住戸をリノベーションしました。
MUJI HOUSEは新築戸建てを主な事業としていますが、一方で、借りて住むというのがすごく合理的だとも考えていました。いつでも身の丈に合ったところに引っ越せるからです。
新婚のときは二人なので40~50㎡で、こどもができたら70~80㎡。こどもが巣立ったらまた40㎡に戻るということが、借りて住む場合はいとも簡単にできるんですね。その素晴らしさを特に若い方にどんどん体験していただきたいなという思いがありました。

団地をいろいろ見させていただいた中で、「新しいことが古いことより良い」というのは違うのではないか?古いものの良さがあるよね?という考えになり、リノベーションをする際に古いものを全部取り除くのではなく、良いものは残したいと考えました。
それからなんといってもURさんの団地は棟間が広く、公園の中に住棟が立っているようなかたちです。日当たりや風通しが良いので、それを生かしたリノベーションをすることにしました。
また、URさんの団地は日本全国に70万戸あって、本当にたくさんの方がくらしています。元々URさんは、日本に新しいくらしのかたちをもたらしました。かつては寝る・ごはんを食べることを同じ部屋で行っていましたが、ダイニングキッチンをつくることで、寝食分離を日本で初めて広めたという功績があります。
そこからさらに、無印良品とURさんが考える新しいくらしを浸透させることができるのではないか?そういう大きな思いを持ってスタートしました。

無印良品は元々余計なデザインをしない「マイナスのデザイン」を今までずっと行ってきたので、それをそのままリノベーションに落とし込むことにしました。

古くても良いものは生かし、変えるべきものは変える。編集する余地・余白を残すという発想です。

この左上の写真が元々の団地の内部です。古い団地の住戸は50㎡前後が多く、元々広くない空間を細かく2DKなどに間仕切りしているので、今のくらしにはそぐわない間取りになっています。
そこで「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」では、間仕切りを全部取って広々と使えるようにしました。ただ、柱や鴨居などは良い感じにあめ色に変色しているんですね。新築では絶対に出せない色なのでこれらは残して、それ以外の取れる壁を全部取ると、URさんの団地は南と北の両方に窓が付いている住戸が多いので、明るく風通しの良い空間ができあがります。
入居した方が柱や鴨居を使ってカーテンを吊るしたり、家具を置いてみたり。自由に編集できる余白を残しています。
おかげさまで初年度20戸一斉に募集をかけたら非常に好評で、ほとんどが抽選になりました。

古いURさんの団地はエレベーターがないので4階や5階は高齢者の方に人気がなく空き室になりがちだったのが、「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」に関しては若い方の応募が多かったので5階から埋まっていきました。
5階は景色も日当たりも通風もよく、若い方にとって階段の上り下りは良い運動になると喜んでいただけました。しかも家賃がちょっとだけ安いんですね。
最初は大阪の団地で始めましたが、それから毎年毎年いろいろな団地でリノベーションを行うようになり、去年までで全国78団地、1,400戸のリノベーションをやらせていただきました。非常に好評で今も継続しています。

それからURさんの団地は敷地全体の植栽計画や外構計画、歩行者と車を分離する計画など、いろいろな計画が昔からなされていて、さらに何十年という時間の中で木が育ち素晴らしい環境になっています。
しかし一方で、現代においては使いにくい場所もありますので、住戸の中だけでなく、住戸の外の共用部をリノベーションする「MUJI×UR 団地まるごとリノベーション」という取り組みを始めました。

団地のくらしは、住戸の中と外とコミュニティが全部つながり素晴らしいものになっていくので、共用部のリノベーションと地域コミュニティの形成にも力を入れています。

情報発信は2012年に「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」がスタートしたときから行っています。無印良品のWEBサイトや、メールマガジンは多くの方に見ていただいているので、そこで団地がいかに素晴らしいかや、「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」の活動を発信しています。
共用部のリノベーションについてですが、広場に動かせる家具を置いたり、使われなくなったプールや土俵などの施設の見直しや、人が集まりやすい集会所を考えたりしています。

URさんの団地では、集会所に本格的なキッチンを置き、プロのシェフを呼んで本格的なパーティーができるとか、そのような仕掛けをしている団地もあります。
我々は家は永く快適に住めることが大事だと考え、新築や中古マンションのリノベーションの事業を行っていますが、団地はまさに永く快適にくらせる家の元祖だと考えており、もっと盛り上げていきたいと思っています。
3.インフラゼロとは?
川内
続いて、「インフラゼロハウス」の話に移りたいと思います。
URさんにも「インフラゼロハウス」に興味を持っていただいて今回の共同研究が実現したのですが、そもそもインフラゼロハウスとはどういうものか?をお話します。
インフラとは電気や水道などのことです。日本のインフラは本当に素晴らしく、日本の電気の普及率は100%といわれていて、人が住んでいるところには必ず電気と水道がきていて、100%に近い数字となっています。
逆にインフラがないところはどんなに景色が良くても人が住むことができないので、不動産的にはほとんど価値がないという扱われ方をしています。

満天の星空が見えたり、きれいな朝日や夕日が見えたりする場所があっても暮らすことはできません。でもそういうところにこそ住んでみたいよね?というのが「インフラゼロハウス」のスタートになりました。

「インフラゼロハウス」は、最初は「ゼロの家」という呼び方をしていました。太陽光発電と水浄化システムが付いていて、インフラがなくても暮らすことができます。

自然環境が良いところは意外と建築できないところが多いんです。市街化調整区域という言葉をご存じでしょうか?建物を建ててはいけない区域のことで、自然環境を守るために日本にはたくさんあるんです。
しかし、トレーラーハウスなど車両扱いの家であれば建築確認が不要になるので、自然環境が良いところに住むことができるのではないかと考えました。
また、ゼロカーボンで環境への負荷を小さくできるのも特長です。
大自然に囲まれて住みたいと言って、その大自然を壊しながら住んでいたら何の意味もありません。大自然に囲まれて、普段と同じ暮らしをしながらも自然に負荷を与えない仕組みを実現しています。

最近予期せぬ災害が多く、何か起こると停電になったりしますよね。過疎化によってインフラのメンテナンスが難しくなってきているのも原因だと思いますが、インフラに何かあってもふだん通りの暮らしができるのが「インフラゼロハウス」の特長です。また、川の氾濫が予想される場合などには建物ごと逃げることができます。
川内
それから、ミニマルであることが快適さにつながるのではないかと考えました。

この写真はフィアット500という今でも人気の車です。左側はルパン3世が乗っていた初期の頃のフィアット500で、右側は最新のものです。大きさがこんなに違うんです。
エンジンの大きさも違うのですが、最近の車はクラッシャブルゾーンといって、壊れることで人を守る部分を設けるので大きくなりがちです。フィアット500に限らず車はモデルチェンジをする度に少しずつ大きくなっていきます。
「新しい方が古いものよりえらい」とか「大きい方が小さいものよりもえらい」というイメージがなんとなくあると思いますが、実はそうではなくて、もし左側のフィアットが最新のフィアットと同じ性能・安全性能だったら、左側のフィアットの方が良いと感じると思うんです。そういう思いを込めて12.5㎡の家を開発しました。

こちらが「インフラゼロハウス」の間取り図です。2つありますが、上の図面が「リビング棟」といって、バイオトイレとベッドとちょっとしたテーブルがあります。
下の図面は「ユーティリティ棟」で、水循環システムが入っていて、きれいな水を使えるキッチンとシャワーがあり、この2棟建てで考えています。

無印良品の冷蔵庫や電子レンジが置いてありますが、インフラのない自然の中でふだんの暮らしができることを目指しています。
今回のURさんとの実証実験ではリビング棟だけを持って行ったケースが多いです。

リビング棟にはベッドと太陽光発電、エアコンがあります。水を使わないバイオトイレも付いていますので、こちらがあれば暮らせるんです。

さらにアンテナが付いていて衛星通信によるインターネットも使えます。

何回も「インフラゼロハウス」へ試泊をしているんですが、どこにでも手が届く広さというのは、ふだんの家とはまた違う快適性があるなと実感しています。

つくりは我々が普段つくっている住宅と同じように、木造で断熱材が入っていて、住宅用のサッシを採用しているので、断熱性・遮音性は住宅と等しい性能です。
川内
埼玉県戸田市に彩湖という調整池があるのですが、「インフラゼロハウス」は何かあったら移動ができるため許可が下り、ここにカフェや宿泊施設、倉庫やオフィスとして6台の「インフラゼロハウス」が配置されています。

来ていただく方のお役にも立てるし、運営の方にもお役に立てるということで、これからどんどんこういった事例を増やしていけたらと考えています。

最初は「こういったインフラのない景色がきれいなところで暮らしてみたいな」というイメージでいたのですが、インフラがあるまちなかでも役に立てるのではないかと思っています。
それが今回の「団地とまちなかに“インフラゼロ”を置いてみた」というところにつながっています。そのイメージがこちらです。

手前みそになりますけど、インフラゼロがこの場所に置かれることで、急に人間の営みが感じられにぎわいが生まれる。そんな効果があるのではないかと感じています。
実際に団地に置いてみたら「なんやこれ?」とみんな興味津々に聞いてくださいました。
まちににぎわいを生み出すという意味でもみなさんのお役に立つと良いなと考えています。
松枝
ありがとうございます。「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」と「インフラゼロハウス」について、みなさんの中で少し理解が深まったかなと思います。その上で具体的にURさんとMUJI HOUSE でどのような取り組みを行ったかを続いてご説明したいと思います。松本さんお願いします。
4.団地・まちなかでの活動
松本
さきほど川内さんから「インフラゼロハウス」のご紹介やこれを活用する共同研究を行うことについてのお話をいただきましたが、団地・まちなかでの活動ということで 、URが一緒に取り組むことになった背景や目的等について説明いたします。

URの前身である日本住宅公団は昭和30年に設立し、住戸を大量に供給しながら国の住宅政策を担ってきました。やがて住宅の数を追求する時代は終わり国の住宅政策の課題も変遷してきましたが、政策実施機関としての役割を担う私たちURもこれに対応する形で事業の軸足を移し、組織の形態や名前も変えてきました。

現在のURは、「都市再生」・「賃貸住宅」・「災害対応支援」の事業の3本柱としています。
まず「都市再生」ですが、まちは時代によって移り変わります。昔は重厚長大の産業だったのが今はソフト系に変わり、情報通信やインフラ、創造的な活動をできる環境の有無がまちの競争力を左右するようになってきました。
自治体さんとのまちづくりへの思いと、経済性を重視しがちな民間事業者のニーズが必ずしも一致しない場面も出てきます。
我々URは、地域の思いや世の中の動き、民間事業者の思いの調整役となり、あらゆることを想定しながら実現可能なプランに練りあげて再開発や公園整備などのまちづくりのコーディネートを担っています。
現在、関西における都市再生事業の代表的な取り組みは、JR大阪駅北側の『うめきたプロジェクト』です。ここグランフロント大阪の整備もそうですし、眼下に広がるグラングリーン大阪もこの秋に二次開園、来年度のグランドオープンに向けて整備を進めているところです。

次に「賃貸住宅」ですが、誰もが生き生きとくらせるように、地域に開かれた住まい・まちをつくり、管理を行っています。
例えば、まちの拠点として地域に欠かせない医療福祉施設を誘致したり、高齢者のお一人くらし、海外の方など、民間では入居にハードルが設けられてしまいがちな方々でも、条件が合えば平等に受け入れる役割をURは続けています。
こどもから高齢者の方まで多様なライフスタイルを持つあらゆる人が安心して自分らしく生き生きとくらせる住環境を。そんな思いで私たちURは住まいづくり・まちづくりを進めています。
3つ目の「災害対応支援」ですが、阪神淡路大震災や東日本大震災以降、能登半島地震への対応まで、地震大国日本で起こった大規模地震すべての復旧復興にURは携わってきました。
被災者の早期生活再建をはじめ、災害復興住宅の整備、コミュニティの再生までハードとソフトの両輪で、今日まで災害で培った知見のすべてを大規模災害からの復旧復興に注いでいるところです。直近では地方自治体さんの防災力向上の支援、災害に強いまちづくりに向けたサポートも行っています。
松本
URは「社会課題を、超えていく。」この言葉をコーポレート・アイデンティティとしています。

「社会課題」は大変幅広い言葉で、時代の流れや状況の変化でどんどん変わっていきます。
それを超えていこうとする我々は、常に何が課題なのか?自分たちに何ができるのか?を考え、対応できるよう変化をし続ける必要があると思っています。
特にまちづくりの重点課題として、少子高齢化、希薄化する地域コミュニティの形成支援、子育て世帯ほか多様な世帯が安心して住み続けられる環境整備、甚大化・頻発化する自然災害への備え・対策、地球温暖化・環境負荷への対応といった「社会課題」に日々向き合っています。
どの課題も一朝一夕に解消・改善できるものではありませんが、URは考えること、チャレンジすることを止めずに、これら「社会課題」に向き合い続けてまいります。
松本
事業3本柱の一つであるUR賃貸住宅の管理を掌る部門では「ゆるやかに、くらしつながる。」の事業メッセージを掲げています。

お住まいの方同士や地域との横のつながり。それから親子、子から子、子から孫へという世代間の時間的な縦のつながり。そういったものが形成されるUR賃貸の空間であること、住民のみなさまのライフステージの変化に寄り添いながら豊かな空間の中で、心地よく自分のペースで自分らしくくらせる場所・空間であるように、事業者として提供できるように、という思いを込めて事業に取り組んでいます。
さらに、子育てしやすい住環境の充実を図る「こどもつながるUR」という取組みも進めています。
団地の集会所や広場、共用空間を活用してこどもの居場所づくりを積極的に進めて子育て世帯の負担の軽減を図り、さまざまな世帯のみなさんがつながる住み良いくらし・まちづくりを目指してまいります。
団地とまちなかに“インフラゼロ”を置いてみた。(後編)につづく



