【MUJI×UR トークイベント】小さな集合体が育む団地のコミュニティ(後編)
MUJI×UR団地レポート | 2026.4.17
※このレポートは、2026年3月1日(日)に無印良品グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。
3.マーケットの学校とは?
松本
ここからは美央さんに「マーケットの学校」の話をしていただきたいと思うのですが、まずは三瀬さんから明石舞子団地を舞台に「マーケットの学校」をスタートしたきっかけについてご説明をお願いできればと思います。
三瀬
団地のコミュニティの活性化のために、地域のみなさんのお声をできる限り聞きながら、いろいろなイベントなどの取り組みをURが行ってきました。つまり、「我々が考えた団地の活性化策はこうですよ。皆さんどうですか?」というかたちです。

この方法だと100%地域の方々のニーズに応えられているかどうか常々疑問に感じていました。地域の方々の声を聞くだけでなく、自主性や主体性を持って関わっていただける企画がないかなあと思っていたときに、美央さんの「マーケットの学校」を知ったんです。

やってみてわかったんですが、「マーケットの学校」は地域の皆さんを強制的に巻き込むのではなく、いつの間にか皆さんが主体的に関わるようなメソッドになっています。このかたちで地域の皆さんの自主性・主体性を育んでいくと、自走化できるようになるんですね。

もちろん我々は、いつまでも寄り添って行きますが、どんどん皆さんの主体性が強くなっていくことを実感できました。
では、具体的にどのような方法なのかを美央さんから説明していただきたいと思います。
鈴木
ありがとうございます。では、「マーケットの学校」の話をしていきたいと思います。ちょっと不思議な話なので、よくわからなかったらぜひ後でどんどん質問してください。

まず「マーケットの学校」は、マーケット・マルシェ・市というのを勉強する場ではないし、つくっていく場でもないです。マーケットというのがまちを考えるのにちょうどいいツールなんですね。
例えば「どんな暮らしをしたいですか?」「どんなことを大切に団地の中で生きていきたいですか?」と聞かれてもわからないじゃないですか?「楽しく生きたい」とかそういう答えになっちゃいますよね。
そこで、具体的に考えていくためのツールとしてマーケットを使っています。「マーケットの学校」は、まちに興味があるさまざまな方々が、自分たちのまちや暮らしについてマーケットを通じて話し合う、対話型のワークショップです。

ただ対話をするだけでなく、対話の中で生まれる理想の暮らしを、マーケットの現場で自分たちの手で小さく実践して実現させます。
この取り組みは埼玉県の北本市で始まって、今までは自治体さんの仕事として3自治体でやってきました。北本市のマーケットの学校は、全国広報コンクールで内閣総理大臣賞をもらい、わかりにくいながらにも、「なんかこれ面白いんちゃうか?」と思ってもらっています。
なかなかわかりにくいので、皆さんに軽く追体験してもらうためにチラシをお見せします。

明舞団地は、とても素敵なところなんですよ。明石海峡に向かって坂になっていて、その明舞団地の素敵さを伝えるためにデザイナーさんに描いてもらった絵をチラシのメインイメージにしました。キリンも、団地の公園にあるものなんですね。
この場所でみんなが楽しくやっていくことを伝えようと思い、あったかい雰囲気で関わりやすいことを第一に考えてつくったチラシです。
チラシに入っている文言がポイントで、マーケットをやりたい方を集めたわけじゃなく、地域に関わるきっかけが欲しい方、暮らしを楽しみたい方、何か面白いことを探している方、マーケットの運営に興味がある方ということで、ゆるく広く声をかけて集めています。

そして講座では、最初に「あなたの好きなマーケットを教えてください」という質問から始めました。

こちらは講座の様子ですが、こうやって参加者が一人ひとり写真を持ってきてくれて、写真を見せながら「私はこういうことが好きなんですよ」と話をしていただきます。
これもさっき三瀬さんがおっしゃっていたように、「自分たちが主役で自分たちで変えていく」ということが大事なので、「参加者のみなさんは何を考えているんですか?」というところからスタートしています。
実際に参加者の方が持ってきてくださった写真を紹介します。

これは実際のマーケットの風景の中で「人が集まって楽器を演奏するのが楽しい。全然うまくないけど、集まってやるのが楽しい」と話してくださいました。
次の写真がこちらですね。

もうこれはマーケットじゃないですよね。
これは今日参加してくださっているKさんですね。Kさんは映画監督をやられていて、「映画をつくっているときに人が集まってきて、みんなで助け合っていくコミュニティの雰囲気が好き」と話してくださりました。
好きなマーケットを聞いたら人とのかかわりの中でのその人にとって大切な経験が見えてくるんです。
次にもう一つ。

これはマーケットでもなんでもないです。「餅つき」と書いてあります。
これを出してくださった方は高齢の男性の方で、「地域のイベントで自分はこれだけ参加するんや」って話していて、なんでかといったら、「餅つきは常にやることがあって、しゃべらなくてもいいから」と話してくださいました。
そのときにみんなハッとしました。まちのなかでしゃべらなくてもいい居場所がどれだけ少ないか、そしてそれを求めている人がいるという気付きを与えてくださいました。

こんな感じで「マーケットの学校」ではひたすらみんなでしゃべっています。みんなでしゃべっていると、わけがわからなくなるので、「この人がこんなこと言ったよ」というのをグラフィックレコーディングして、みんなで振り返ります。


これをやっているだけでも面白いんですよね。「疎外感がない」「言語以外の作業が必要」「目的がなくても行けるところがいい」とか、みんなでどういう場所をつくっていきたいかを話し合っていきます。

「あなたの好きなマーケットを教えてください」の次は、「マーケットがある日常について考えてみよう」。ここでは、自分がどういった暮らしをしたいかを話しています。

3回目くらいから、「明舞団地でマーケットをやるとしたら、どんなことがいい?」と話し合い、4回目で「やるとしたらどこでやるか?」を話し合い、5回目で「具体的にこんな人を呼ぼう?」という話をしたら、もう開催されます。これが不思議なんですよ。
3回目に話していたことで面白かったのが「ビアガーデンがあるといい」っていう話から、「男性の孤独が社会問題になっていて気になる」「外に出られる理由があるといい」とか「酔っぱらいのおじちゃんがそこらへんにいるのは、別に悪いことじゃないんじゃないか」という話が出てきたことです。そこから、じゃあ具体的にどういうことをするかを考えていくという感じですね。

「ちょっとだけ得意がかたちになる、小さな才能が開花するようなマーケットがいいよね」とか、「与えられることに慣れるって不健全」とか、いろんな言葉が出てきました。
そして、みんなで現地に行って場所を決めます。

そこは団地の中の大きい広場や公園じゃなく、どこの団地にでもあるような、団地の日常に寄り添える普通の場所なんです。イベントではなく、日常としてのマーケットを目指して場所も選びました。
実際に開催した写真がこんな感じです。

野菜やお花、ボードゲーム、コーヒーの販売に、健康相談や読書会だったり、大学生がマシュマロを販売してくれたり、たくさんの地域の魅力的なお店が集まりました。





近くの自家栽培の有機米コシヒカリを使ってクラフトビールも出店してくださいました。

このあたりの店舗の方々に声を掛けたら、「近所でこうやってお店を出せるのはうれしい」と言ってくださったんですね。「全然売れるかわからないし、人が集まるかもわからないよ」と言ったのですが、商業者さんたちは近所で販売できることに意味を感じてくださっていました。
同じ日に三宮で毎年開催されるマーケットがあったらしいんですけど、「地元がいいから」と言って、こっちに出てくださった方もいました。おしゃれとか有名とかよりも、「地元」「近い」「目が届く」ところを大事にされる方が多いのも希望だなあと思いました。
ローカルに場を開くことで生まれる可能性の一つなのかなあと思っています。
全体はこんな感じでした。

鈴木
そして、最後の振り返りのときに、私たちが「マーケットの学校」5回の講座と実践の中で気付いた、大切にしたいことをステイトメントにしてまとめました。

1つ目が「1人の素朴な夢からまちに広がる新しい世界」です。

大学の先生をやっている女性の方が「団地でビールを飲みたい!」とずっと言っていたんですね。
そうしたら他の参加者が「近所でクラフトビールの人知ってるよ」と言って、クラフトビールを販売している方を呼んでくださることになったんです。ビールを出せるようになったので、彼女が自分のゼミ生が出すお店を「おつまみの店にしよう」と提案してくださり、「調理は難しいから乾きものかな」と話していたのですが、団地の商店街に入っている焼き鳥屋さんの焼き鳥を宅配できることになったんです。
それがめっちゃおいしいんですよ。そうすると焼き鳥屋さんもうれしいじゃないですか。その焼き鳥屋さんも学生のことをすごく考えてくださって、いい関係ができました。
そうして彼女の「団地でビールを飲みたい」という夢がみんなの楽しい時間になりました。みんなで楽しくビールを飲んでいるこの写真には、私や三瀬さんも写っています。
彼女は「10年来の夢だった」と言っていました。
松本
これはお仕事中ですか?笑

鈴木
ビールを飲むのも仕事のうちです。笑

次に「目の前の人に心で動く」ことを大事にしたいと話しました。

大学生の方もたくさん関わってくださり、振り返りを書いてもらったんですけど、ある大学生が「他の大学生が、こどもがマシュマロを落としたときに、すぐに別のマシュマロをあげていたのが印象的だった」と言っていたんですね。
こどもがマシュマロを落としちゃうことってあるじゃないですか。そのときに、売っていた大学生がすぐに別のものをあげたんそうです。当たり前のことだと思いますが、もし売っている人がアルバイトの人だったらできなかったと思うんですよ。「商品をタダであげた」となってしまうので。でもそれってすごく不自然なことですよね。

「こどもがマシュマロを落としたから助けてあげたい」。そういう心に素直に動ける環境が大事だし、そういう場で豊かなことが起きていくし、そのこどもは幸せだったと思うんですね。
あったかい気持ちになったり、人を信じることにつながったり、大切な経験として残るかもしれない。そういうことが大事なのかなと思いました。
次に「不確実なことも大丈夫。動いてみると何かが起きる」です。

マーケットでKさんは読書会をやってくださったんです。私はマーケットで読書会をやったことがなかったけど、何やっても面白いやろうし「読書会いいですね!」と言ってやることになったんです。やってみてKさんどうでしたか?
K
読書会自体はコロナ禍の前に何回も開いていました。ガッチガチに準備をして、何分単位で何をしようというのを決めてやっていたんです。それに対して、今回は参加者の募集もしていない。その場にいる人を呼び込んで、「今から読書会しますので、ここにある本を1冊手に取ってください」って言ってやっていました。なので、最初はたぶん成り立たないだろうなあと思っていました。ところがどっこいですね、すごくよかったです。
鈴木
普段の読書会とは違うよさがあったんですよね。
K
そうですね。今まで50回、60回やってきた中で一番良かったです。それが本当に不思議でした。美央さんのマジックだなと思いました。
鈴木
振り返りの会のときに、「不思議」っていう言葉がすごい出てきたんですよね。
「不確実なことも大丈夫。動いてみると何かが起きる」っというのは、現代社会に欠如していることだと思います。「失敗しちゃいけない」「これをやってなんの意味があるのか」「人が集まるのか」とか、否定することってすごく簡単だし、自分自身もやめとこうと思うのはすごく簡単。

だけど、一歩動いてみるとすごく変わるし、この読書会で大学生の人生相談が起きたりもして、やっぱり人の温かさに触れられるのは、まちにとって大事なことなのかなと思います。
松本
読書会はみなさん別々の本を読むんですか?
K
ほとんど読まない。その場で本を手に取ってパラパラっと見るだけ。
鈴木
そこから人生相談につながったんですよね。
次に「私のこれまでが目の前にいる誰かを幸せにすると自信を持つ」です。

この写真の彼女は木のおもちゃやボードゲームを扱っているおもちゃ屋さんの店主さんなんですね。彼女はマーケット開催時間中ずっと各お客さんの対応をしていて4時間ボードゲームの解説をしていたんです。
私も「うちの子は小5だから、小5だとどれがいいですか?」って聞いたら模擬とかやってくれたりして。ボードゲームって頭も使うから4時間ずっとやるのってしんどいじゃないですか。でも彼女は「全然平気」っていうんです。彼女にとっては当たり前のことなんですが、これって彼女しかできないことだし、すごい数の人を幸せにしているんですね。
私もその日買って帰ったカードゲームがめっちゃ面白くて家ではまっています。自分で選ぶとはまらないものもあるけど、プロと一緒に話して選んだら違ったんですね。
でも彼女はそれについて「すごいだろう」というのではなく「別に別に」という感じなんです。他の方もみんなそうなんですよ。

Kさんもそうです。読書会をやれるのはKさんしかいない。そういうことにみんな謙虚ですけど、実は人を幸せにしている。一人ひとりの力を場にひらくことは、こういう場での希望だなあと思いました。
鈴木
次で最後ですが、「信じるをアップデートする」。

さっきの不確実っていうこともそうですけど、もっとみんなまちとか人を信じていいんじゃないかなと思っています。「失敗したら誰かに迷惑をかける」とか、そういうことをあまり考え過ぎないで、やってみるとつながっていく。自分に対しても他者に対しても、まちや地域に対しても、信じて自由に動くと面白くなると思います。
この写真に木の机が写っていますね。「マーケットの学校」はゆるゆるとやっているので、「ビール飲むのにちょうどいいんじゃないかと思って」と参加者の方がこの机を置いてくださったんです。
ちょっと余っている机もあったのですが、そこに誰かがチラシを置き始めたんですね。そうしたら他の人も「私も置いていい?」みたいになって、5団体のチラシが置かれました。普通に考えたらおかしな話ですよね。人がやってるイベントで急にチラシを置くというのは。

でも全然問題ないし、お互いに「やっていいんや」って信じている。「このまちこの場所では私がやっている活動のチラシを置いてもいいって思ってもらえる」というのは、「信じるをアップデートする」ことだと思いますし、みんなが自由にできるのが大事だと思います。
以上が5つのステイトメントです。

鈴木
ここまでが「マーケットの学校」の話ですけど、結局マーケットって何をしているかっていうのを簡単に紹介します。まずマーケットをやる際に出店者さんを探すことは、地域の魅力の発見だと思っています。

地域の魅力がマーケットの場として開かれると、魅力がビジュアルとして現れます。面白い読書会をやっている方がいらっしゃるのもそうだし、ボードゲームのお店があるとか、お花屋さんがあるとか、ビールがあるとか。魅力がビジュアルとして見えます。
そうすると人が集う場が生まれます。人はまちの魅力を知りたいから集まりますよね。皆さん旅行に行ったらマーケットに行きたくなるのは、そういうことだと思うんです。
それから、私も郊外育ちですが、「郊外とか団地とかってなんも魅力がない」とみんな思っているじゃないですか?でもそんなことないんですよ。そこにしかないパン屋さんがあったり、そこにしかない人がいたり、魅力は必ずあります。

その魅力を認知し始めるとイメージが変わり、つまらないと思っていたまちに対してのイメージがポジティブになります。
そして、その場所に行くと交流や体験が生まれます。カードゲーム一つ買うにしても、店主の方と話しながら買ったものは印象に残ります。交流や体験が生まれると、人は自分ごと化するようになる。自分のこととして捉えて自分もまちの一人として関わっていけると考えるようになります。
まちに対してポジティブなイメージが生まれて自分ごと化すると、「また来たい」とか「発信したい」とか「使いこなしたい」とか、まちを好きになって、「自分でまちを少しでも良くしていきたい。何かできるんじゃないか」という気持ちが生まれます。そういう気持ちをシビックプライドっていうんですね。
郷土愛と似ていますが、「自分がより良くしていける」と思えることがシビックプライドという言葉に含まれています。
私は『マーケットでまちを変える』という本を書いているんですけど、本当にマーケットでまちを変えることができると思っていますし、特に集まって住む団地において、集まって商いをするマーケットはすごく相性がいいと思っています。

マーケットでは誰もがまちを考え、まちに関与できることを体感できますし、団地シビックプライドの醸成のツールとして使えると考えています。

4.クロストーク:団地コミュニティの可能性
松本
ここからは「団地コミュニティの可能性」についてクロストークできればと思います。これについて、見通さんから美央さんにお聞きしたいことがありますのでよろしくお願いします。

見通
先程コミュニティの部分を簡単にお伝えしましが、花見川団地では商店街のリノベーションをして、ソフトではイベント運営団体の発足と、空きテナントに入ってもらう人集めをしました。

港南台かもめ団地では同じく、イベント運営団体の発足とクラブづくりを行いました。
泉北茶山台二丁団地では、同じくマルシェでの出店者を集め、中宮第3団地では、ハードのリノベーションを行うための実証実験イベントを行いました。
中宮第3団地をやり始めたときに、それまでと同じやり方をしようと思ったら全然できなかったんです。
それで手法を変えながら最終的にここに着地をしたのですが、美央さんだったら、それぞれの場所で手法を変えるのか、それとも「マーケットの学校」をやるのがいいのか、お聞きしたいです。

鈴木
「マーケットの学校」という業務で来たら「マーケットの学校」をやりますし、商店街を活性化しようという業務であれば商店街支援をやります。場所によってやることは全然違いますし、結局は人ですよね。
一人のすごく元気な人がいたら、その人を慕っている人が簡単に集まるパターンがありますし、そのような人がちょっとずついるパターンや、全然いないパターンもあります。それはほとんど偶然ですよね。

あとはまちが困っている度合いに応じて違うと思います。商店街で空き店舗が増えている状況と、全然テナントに困っていない状況では、人のやる気もやり方も違います。
困っていると人はすぐに動きますが、困っていないと人は動かないので。
だから中宮第3団地の場合は、「マーケットの学校」というよりは、「イベントをがつんと1回やりましょう」みたいな感じとか、面白そうな講師を呼んできて連続のトークイベントを開くとか、困っている度合いに合わせて手法を変えると良いかもしれません。
見通
ありがとうございます。僕が以前働いていたところでは、連続開催ゼミを実施して地域課題を解決するという手法で行なっていました。

それを花見川団地で落とし込もうとしたときに、「連続開催で人が集まらなかったらどうしよう」っていう怖さがあって、最終的に「自由にふらっと来れて楽しい場づくり」をしたんです。そうすると学生さんとか地域の人たちがいっぱい入ってきてくれて、そのときに人が大事というのを実感しました。
鈴木
「自由にふらっと来る」っていうのは、すごくいいじゃないですか。具体的にどこが良かったと思いますか?
見通
学生さんたちが「何か楽しいことをしよう」となって、そこからどんどん自転車乗りの人が集まったり、クリエイターの人が集まったりで、延べ100人くらいの学生さんが来てくれたところです。
鈴木
最初の学生さんへのアプローチはどうやったんですか?
見通
無印良品の店舗で働く学生さんが他の学生さんを呼んで集まっていったんです。
鈴木
なるほど!それは大事ですね。無印良品の社風やアイデンティティが好きというのがあるから。私もどこの地域に入るにしても知り合いに聞くんですよ。「このへんに面白い人いませんか?」って。聞きまくって、知り合いづてで声を掛けるようにしています。

ところで三瀬さん、今日私しゃべり過ぎたんですけど、私のプレゼンで何か補足などはありませんか?
三瀬
振り返り会をやった時に、「不思議」「なんでこうなったんだろう」という言葉が繰り返し出てきました。たぶん答えはないのですが、ずっと考え続けていくことが大事だと思っています。答えを見つけて同じことをやるようになるとみんな飽きてくると思うし。
「なんでかわからんけど楽しかったね」「次どうしよう?」というのをずっと進めていくのがいいと思います。

反省点としては、子育て世代の人がほとんど来なかったことが挙がりました。あとは、自治会さんは講座には来ていただいたんですけど、マーケットには直接関わっていただけなかったので、次は何らかのかたちで関わってほしいという声がありました。
参加者のみなさんに「反省点を次に生かそう」という姿勢があるのもすごいところだと思いましたね。
あとは「信じるをアップデートする」という言葉がありましたが、やはり講座の参加者の方がだんだんと美央さんを信じるようになりましたし、美央さんも参加者の方々の姿勢を見て信じられる人たちだと感じたと思います。
我々URもみなさんのことを信じて、「みなさんが望むことを実現できるように、できる限り動きます」とお伝えしました。それらがうまくいった要因なのかなと思っています。
松本
我々もスタートする時にワークショップみたいなかたちで意見を出し合うんですけど、言ったことに対してとにかく否定をしないというのを大事にしています。

先程読書会のお話がありましたが、否定するのではなく「まずは実践してみよう」というのが美央さんのマインドなのかな?と思いました。
鈴木
そうですね。「わからないことのほうが面白い」と思っているというのもあるかもしれません。「読書会やったらどうなるんだろう?」というのが面白いですし、このプログラムでは、最初に個人の豊かさとか、集団の豊かさとか、まちの豊かさを話して、実際に「参加者の特技でやりたいことをやっていこう」とういような話があったので、突然の読書会ではないんですね。対話と共有ができているので、自然と否定にならないのかもしれません。

松本
その人のバックグラウンドを知った上で、というのがあるからですね。
鈴木
そうですね、さっき「疎外感を感じない」という話をしたのですが、現状まちの中でイベントとかに行くと疎外感を感じちゃうというのがある。だからこそ、ちょっとわからないものを挿入しながら「ここはこういう場所」ってことをゆさぶって、可能性を探ることに意味がある、みたいな。

見通
港南台かもめ団地でも読書会のクラブがありますが、立ち上げた方に熱い思いがあったんです。「『初めての読書会』っていうクラブを立ち上げたいんです!」って。その人の秘めた思いを感じて応援したくなりました。

その読書会は自分が好きな本をお薦めし合う会で、2カ月に1回くらい行われています。参加者の熱いプレゼンを聞いて、自分では手に取らない本を読むきっかけになるのが面白いそうですよ。
僕は花見川団地に3年半くらい住んでいて、港南台かもめ団地も4年間くらい通い続けて、いろんな人と仲良くなりました。かもめ団地から駅までの間に7人くらい知り合いに会うんですよ。住んでいないのに。
花見川は住んでいるので、みんな知っている。そんなところからもうすぐ引っ越しをするんです。人が好き過ぎて故郷みたいになっているんですが、こういう活動ってどういうふうに引けばいいんでしょう?
鈴木
私は1回関わった地域は一生関わるって決めています。逆にいうとそんなにたくさんは関われないとも思っています。実際に今も一仲間として関わっている場所も多いですよ。
見通
たしかにそうですね。会社としての活動は終わっていますけど、人としてはつながっているので、そういう意味では引いてはないのかもしれないです。
鈴木
ところで、さっき本を薦めるという話がありましたけど、私はまちの中でもっと偶然を増やしていきたいと思っています。今多くの人が自分で意図した中で人生が進んでいると感じていて、意図していないことをまちや公共空間で増やしていければ、もっと人生が面白くなると思います。
「なんでだろう?」がいいっていうのはそういうことですよね。

「マーケットの学校」でも兵庫県立大学の和田先生が「学生が普段よりもめちゃくちゃ主体的やった」とおっしゃっていました。「でもなんでかわからない」って言うんです。
その「わからない」とか「偶然」とかコントロールできない部分をまちの中で増やしていくのが大事だと思います。
見通
そのためには会う回数を増やすというのもありますか?例えば、人と人が出会うこととか、魅力をより多く発見するとか。
鈴木
私はマーケットの一番大きい可能性は、物の交換をしているところにあると思っています。一方でコミュニティがつらいのは、あまりに強すぎるというのがあると思っていて。「何階に住んでいる〇〇さん」「〇〇さんのお母さん」というのばかりじゃなくて、買い物を通じたコミュニケーションって深くもできるし浅くもできる。
マーケットはそこらへんがいい塩梅ででき、関わり方の自由度が高いというのがあるかなと思います。
見通
かもめ団地でも「隣に住んでいる方は知らないけど、集会所に来れば誰かに会える」という声を聞きます。昔はお隣さん同士で醤油を貸し合うといった密なコミュニケーションがあったかもしれないですけど、今は共用部を介してのコミュニティの方が需要があるんじゃないかなと思いました。それこそSNSやメールとかでやり取りができるので、対面は共用部というクッションを挟むくらいがいいのかなとも思います。

鈴木
たしかに、私は人とコミュニケーションを取るのが好きですけど、隣の部屋の人がどうかは分からないから、ぐいぐい行くのも…と思ったりします。ちょっと外に出て、ちょっと話してみて、ちょっとずつ知っていくみたいな。それが、商いや共用部を介したコミュニケーションの方が面白いということなんだと思います。
松本
最後に伺いたいのですが、仲間の中で否定的な人が出てきたときに、その人に対して美央さんだったらどんな対応をされますか?
鈴木
話を聞くようにします。私はそういう人が好きなんです。そういう人ってまちに対して思いのある方で、過去にしんどい思いを経験されている可能性があるんですよ。だから予防線を張っていたりとか「そんなやり方じゃダメだ」とか言ってこられるんですけど。
でも、よくよく話を聞いていると、だんだんと相手も信頼まではいかないかもしれないですけど、「まあいいやつかもしれないな」くらいに思ってくれるところまではいけるので、あまり怖くはないですね。いつか仲間になってくれると思うし、それはいろいろなポイントで起こるんですよ。
三瀬
今回の講座の中でも、否定的とまではいわないですけど、ちょっと違った角度から意見される方もいらっしゃいました。美央さんは最後までずっと話を聞いて、「そうですね」から始まって、「そういう考え方もありますし、こういう考え方もあります」みたいな言い方をされていました。なので、皆さん安心して「自分の言いたいことを言える場なんだ」と感じたと思います。

5.最後に
松本
ではまとめに入りたいと思います。

我々MUJI×URの得意なところとして、ハードづくりとソフトづくりがあります。団地の中には利用されていない共用部がたくさんあるんですけど、それらをより身近で魅力ある共用部にリノベーションを行い、コミュニティの拠点として暮らしを豊かにしていけたらという思いで取り組みを行っています。
また、団地の周辺地域も巻き込みながら、人と人をつなぐ場にできたらいいなと思っています。このあたりについて、最後に美央さんのご意見をお聞きできればと思います。

鈴木
団地はすごくポテンシャルがあると思っています。私は公共空間の利活用も専門にしているんですけど、公共空間って基本的に行政の土地で用途が決まっています。道路は交通のための場所ですし、公園は都市公園法の中にあります。

一方、団地の中の共用部は、もちろんURさんのルールがありますけど、違う使い方をできる財産だと思います。しかも人が集まって住んでいる場所です。だから団地はめちゃくちゃ可能性があるし、すごく魅力的な場所で、実際に団地で育った人ってみんな団地が好きじゃないですか。
さっき話したように課題意識があるからこそ人は動き出すので、団地はすごくチャンスがあると思います。自分たちの手で自分たちのまちをよくしていくっていう、団地シビックプライドの醸成みたいなことを今後やっていきたいなと思いますし、そのツールの一つとしてマーケットは使いやすいと思っています。

松本
美央さんありがとうございました。
本日はご清聴いただきありがとうございました。


お集まりいただいたみなさま、ありがとうございました。
今後のMUJI×UR団地リノベーションプロジェクト・マーケットの学校の取り組みにご期待ください。



