【MUJI×UR トークイベント】小さな集合体が育む団地のコミュニティ(前編)

MUJI×UR団地レポート | 2026.4.10

※このレポートは、2026年3月1日(日)に無印良品グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

松本
本日は「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」のトークイベントにご参加いただき誠にありがとうございます。

今回は「小さな集合体が育む団地のコミュニティ」をテーマにお話ししていきたいと思います。ゲストにはオープラスアーキテクチャー合同会社代表で龍谷大学准教授の鈴木美央さんをお招きしました。
ところで「MUJI×UR」の活動をご存じの方はいらっしゃいますか??
皆さんご存じということでありがとうございます。

まずは登壇者の自己紹介をさせていただきます。鈴木さんお願い致します。

1. 登壇者紹介

鈴木
みなさんこんにちは。鈴木美央といいます。

私は元々、大規模建築の意匠設計の仕事をしていました。ただ、働いているうちに大きいものをつくることの弊害も見えてきました。今は、小さなものの集合体により、社会が良い方向に推進することに寄与できていないと思い、今は公共空間の活用、商店街支援、ビジョン策定、公民連携、まちづくりや都市計画に関わる仕事をしています。
それから『マーケットでまちを変える』という本をつくりました。この後お話しする「マーケットの学校」というのがマーケット・マルシェ・市場に関するお話になります。

私と団地の関わりについてですが、私は神戸市の落合団地というところで生まれました。私の家族は父の転勤で初めて関西に来ました。最初に大阪のアパートに住んでいたらしいのですが、そこでの暮らしが辛かったようで、落合団地に引っ越してからは「団地暮らしが天国のようだった」と大きくなってから何度も聞きました。私自身も、ついこの間まで埼玉の団地に住んでいて、そこで12年間子育てをしていました。

あとは団地の商店街の活性化とか、空き店舗で映画を上映したりとか、団地でマーケットをやったりとか。そういうことをしてきました。どうぞよろしくお願いします。

松本
ありがとうございます。
次にURの三瀬さん、よろしくお願いします。

三瀬
みなさんこんにちは。UR都市機構の兵庫エリア経営部で団地マネージャーをやっている三瀬(みせ)と申します。

団地マネージャーとは、今住んでいただいている方には愛着を持って長く住んでいただき、お住まいを探している方には私共の団地を選んでいただけるように、団地のハードとソフトの両方を磨いていく仕事です。
神戸市と明石市の団地が私の管轄で、66団地で33,000戸くらいあります。

どんなことをやっているかですが、例えば神戸市にある花山東団地や多聞台団地にはたくさんのALTという外国人の英語の先生に住んでいただいています。花山東団地では地域の皆さんと交流していただけるようなイベントを、多聞台団地では外国人の先生に日本の文化に触れてもらおうということで抹茶体験を企画して楽しんでいただきました。
それから震災復興でできたHAT神戸というまちがあります。そこが30年くらい経ちましたので、広場の改修をすることになり、地元の方々に話を聞きました。
すると「災害への意識が薄れてきているので、広場に防災機能を設けてほしい」というご要望をいただきました。それで、広場に「かまどベンチ」をつくり、実際に炊き出しの訓練を行っていただきました。
それからこの写真は「マンホールトイレ」に座って満面の笑みをたたえる私ですね。安心してください。下はちゃんとはいてますんでね。ということでよろしくお願いします。

見通
みなさんこんにちは。MUJI HOUSEの見通(みとおり)と申します。よろしくお願いします。

僕は今、千葉県の花見川団地というところに住んでいて、生まれは神戸市で、大学を卒業してすぐにデザインクリエイティブセンター神戸に入り、まちづくりのことを学んでいました。
その後、大阪の工務店に入り、そこで地域密着のものづくりやまちづくりを学んでいました。そういう経験を生かして今は「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」のコミュニティ形成業務を担当しており、今日はその話をさせていただければと思います。

松本
最後、私ですけれども、今日ファシリテートをさせていただきますMUJI HOUSEの松本といいます。

私は2014年にMUJI HOUSEに入社しました。それまでずっと設計事務所に所属していたのですが、結婚と同時に団地に住み始めて「団地っていいなあ」と思うようになりました。そんな中で団地の住戸のリノベーションを行っているMUJI×URのプロジェクトに興味を持ちMUJI HOUSEに入社しました。それからずっとMUJI×URの設計の仕事をしています。

皆さんの後ろにMUJI×URのモデルルームがありますが、若年層の方に団地に住んでもらいたいなあという思いのもと設計したものです。ぜひ見ていただけたらと思います。
最近では「MUJI×UR 団地まるごとリノベーション」というプロジェクトがスタートしまして、団地の共用部の設計・デザインもしております。

2. MUJI×URとは?

松本
はじめに「MUJI×UR」について簡単に説明したいと思います。

このプロジェクトは2012年にスタートしたもので、始めるにあたり「どんな団地で暮らしていけるといいだろうか?」というアンケートを取りました。その中で一番多かったのが、「間取りを自由にできるとよい」という回答でした。

そこで、自分の暮らしを間取りに合わせるのではなく、賃貸であっても自分の暮らしに合わせて間取りを変えていけたら新しい提案になるのではないかと考えました。
また、プロジェクトスタート当初も団地の空き家の増加や高齢化が社会問題になっていたため、子育て世代の方に住んでもらうにはどうすればいいのかを考えていく中で、「古いことはダメ」ではなく、「古いのがいい」という考え方や、「団地そのものが非常に日当たりや風通しがいい」ということを改めて知ってもらいたいと思いました。
あとURさんは約70万戸というたくさんの住戸を管理されていますので、新しい暮らしのスタンダードをつくれるのではないか?と考えました。

その中で「こわしすぎず、つくりこみすぎない」というコンセプトを掲げ、「生かす」「変える」「自由にできる」という3つを意識してリノベーションを行い、現在までに全国で1,400戸ほどを手掛けてきました。

最近はさらに範囲を広げた「団地まるごとリノベーション」をスタートし、団地の共用部のリノベーションや、地域のコミュニティ形成も行っています。

リノベーションというハードと、コミュニティというソフトをしっかり掛け合わせ、共用部に賑わいをつくっていこうという取り組みです。
そして、そういった取り組みをしっかり情報発信していこうとしています。

これは今「団地まるごとリノベーション」を行なっているエリアになります。千葉県千葉市の花見川団地、神奈川県横浜市の港南台かもめ団地、大阪府堺市の泉北茶山台二丁団地、大阪府枚方市の中宮第3団地で行ってきました。

ハードの取り組みでいきますと、千葉の花見川団地では商店街のリノベーションを行いました。元々はアーケードがかかっていて暗い印象だったんですが、屋根を取って明るい商店街にしました。さらに植栽も植え、木陰で涼めるようなストリートファニチャーも活用し、人が滞留できる場所をつくりました。

コミュニティについては見通さんからお願いします。

見通
はい、花見川団地のコミュニティ業務では、「活動者の発掘」や「住民交流機会の創出」を行ってきました。そのなかで、仲間づくりだったり、いわゆるキーマンのような人を探したりしました。2021年にスタートし、今も活動は続いています。

まず自分が入って何をしたかというと、団地にお住まいの方と、団地の外の方を集めて、「団地商店街の未来を考えるワークショップ」を開き、みんなでどうやったら団地を面白くできるかを毎月考えました。

それは今も続いていて、合計30~40回やっているんですけど、考えたことを「はなみがわ団地プチマルシェ」というかたちで実証実験し、グルグル回すような活動をやっています。
ワークショップには学生や商店街の方が参加してくれて、そうして集まった人たちが「花団もりあげ隊」という団体になり、団地を盛り上げようと活動を行っています。
千葉市さんやURさんや無印良品を展開する良品計画と4者協定を締結したり、自治会さん、商店会さんが入った7者協議会ができたり、どんどん関わっていく人の輪が広がっています。

松本
次に、横浜市の港南台かもめ団地の集会所のリノベーションです。

この集会所は団地の中心にあり、高いポテンシャルを感じていました。

ハードの改修と併せて集会所のオペレーションも見直すことにしました。団地の集会所は鍵を借りないと入れないものが多いですが、ここではいつ来ても開いていて、皆さんがラウンジでくつろげるようにしています。
入口でスリッパに履き替えるのもやめて、靴のまま入り、ラウンジを抜けてそのままデッキテラスに出られるようにしています。

事前に状況調査をしたり、住民の方の意見を聞いたりしてどう生かしていくのかを考え、このようなオープンな集会所に改修しました。

見通
ソフトについてですが、港南台かもめ団地では花見川団地と同じように仲間集めをしようとしました。商店街のように人が集まらなかったのですが、「かもめ会議」をずっと開催し、意見を集めた「かもめマルシェ」を実施しています。

集会所改修前後で大きな変化がありました。改修前は人が集まらなかったのですが、改修を終えた2024年の後半以降はどんどん人が集まるようになり、「かもめクラブ」というクラブ活動が行われています。
ここでのプロジェクトは2022年にスタートして今も続いています。

松本
次は大阪府堺市の泉北茶山台二丁団地です。こちらでは、外にある広場・旧土俵と集会所のリノベーションをしました。

広場をリノベーションするのはすごく難しく、床面に白いラインで円を描くことから始めました。あとはストリートファニチャーを設置して滞留できるようにしています。

これだけですが、「広場の中心」を視覚的に示すことが大事だということが後から分かりました。例えば、この円に沿ってフォークダンスをする人や自転車の練習をする際に円の上を走るこどもが現れました。

旧土俵は、かつてこども相撲などが行われ盛り上がったそうですが、近年は使われなくなっていました。この大屋根の下に入ると涼しくて過ごしやすいので、大屋根を生かした芝生広場にリノベーションしました。

集会所もリノベーションを行い、マルシェなどをした時に参加者さんがモチベーションを高く持てるようしつらえを整えていきました。

見通
泉北茶山台二丁団地は2023年から活動が始まりました。毎月何かを開催することはできなかったのですが、年4回くらい広場や旧土俵を活用した実証実験イベントを実施しました。

この団地の特徴は、近隣の団地にプレイヤーがいっぱいいらっしゃったことです。その方たちに協力してもらいながらイベントを実施し、泉北茶山台二丁団地のプレイヤーを集めました。

2024年からイベントが増え、毎月ワークショップやイベントが開催できるようになり、出店者さんを募集すると、団地にお住まいの方や近隣の方が集まるようになりました。そこから「ちゃや団2」という地域団体が立ち上がり、イベント等の活動を進めています。こちらも現在進行形です。

松本
MUJI×URのコミュニティの取り組みとしては次に紹介する団地が最後になります。枚方市の中宮第3団地で、こちらにはプール跡地がありました。URさんの団地にはプールがあることが多いです。このプール跡地を活用して賑わいを生み出せないかと考え、リノベーションを行いました。

時間をかけていろいろな実証実験を行い、最終的にプールサイドをベンチにした芝生広場に改修しました。

こちらの団地には、かつて管理サービス事務所だった場所が使われずに残されていたので、ここもコミュニティに寄与できるようにリノベーションを行い「キュウカンサ」というスペースにしました。近隣の大学の学生さんと共にDIYでつくったもので、デザインのモチーフはプール跡地と同じ六角形を用いています。

六角形の本棚をつくり、本を介したコミュニティづくりができないかとチャレンジしているところです。

見通
中宮第3団地は、泉北茶山台二丁団地と同じ2023年に始めて、3~4カ月に1回のペースでイベントを行ってきました。他の団地ではプレイヤーさんが現れたり、クラブができたりしたのですが、ここではハードに落とし込むための実証実験イベントを開催してきました。

実証実験イベントでプールにパズルを置いてみたところ、こどもたちに大人気で、積み木を置いたらさらにこどもたちが集まり、そばではお父さん・お母さんが見守っていました。その光景をきっかけに、プールサイドをベンチにすることにしました。
そして、プールで遊ぶおもちゃを収納する場所として「キュウカンサ」をつくりました。

松本
ここまでが「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」の話になります。

小さな集合体が育む団地のコミュニティ(後編)につづく