住み継がれる家には理由がある― 木造であること

無印良品の家づくり | 2026.4.27

家は、個人の所有物であると同時に、世代を越えて住み継がれていく「社会のインフラ」であるべき、と前回お話ししました。

この価値観は、いま世界が向き合っているESGという考え方と重なります。
環境に配慮し、社会と調和し、持続可能であること。
家も当然例外ではないはずで、無印良品の家では、いかにその責任を果たすかを問い続けてきました。

まずは、世代を越えて住み継ぐ、つまり「永く、快適に使える」ことで、建設・解体の頻度を抑制でき、環境負荷の低減という点でESGに貢献できます。
加えて、建物、特に構造材の素材によっても、素材そのものの製造時消費エネルギー・CO2発生の度合いや、解体後の廃棄物の循環性(再利用)なども変わってくることを、最初に家づくり事業を始める時点から考慮していました。

なぜ構造材に「木」を選んだのか

建物の構造を支える代表的な素材には、コンクリート、鉄、そして木があります。
その中で木だけが、持続可能性という観点で見ると、次元の異なる素材と言っていいでしょう。
それは、人が「つくる」のではなく、「育てる」素材だからです。

コンクリートや鉄は、人の手によってエネルギーを消費し、CO2を排出しながら大量に生み出されます。
一方で木は、光を受け、土に根を張り、長い時間をかけて、二酸化炭素を吸収しながら成長します。木材として利用できるまでに約50年かかると言われていますが、計画的に植林→伐採を繰り返すことで、木材としての必要量を確保することができるばかりか、その成長過程で景観や土砂災害防止などに寄与することにもなります。

さらに、家の構造材としての役目を終えたあとも、木は形を変えて生き続けます。
新築時にはない、味のある「古材」として再び建材として使われたり、家具や雑貨、ウッドチップの素材として活用されたりします。
それも難しければ、ペレット(燃料チップ)などに加工され、燃料として資源循環されるのです。
完全に“無に帰す”のではなく次の役割へと移行、再利用=リユースしやすい素材なのです。

無印良品は、生活雑貨においても「ReMUJI」という取り組みを続けてきました。
回収し、手を入れ、もう一度社会へ戻す。
ものを一度きりの消費で終わらせないという思想は、家づくりにも引き継がれています。
無印良品の家づくりにおいて木を選ぶことは、この思想の延長線上にあり、必然だったのです。

木の魅力を諦めない技術とは

しかし、木には弱点もあります。
自然素材であるがゆえに、均質ではないという点です。
同じ樹種であっても強度にはばらつきがあり、さらに柱や梁をつなぐ接合部は、加工の精度や経年変化によって性能が左右されます。
そのため従来の木造建築では、構造の安全性を確保するために、多くの場合、壁を一定量配置せざるを得ませんでした。

つまり、強さを求めるほど、空間は分断されていきます。
これでは永く使うためのアイデアの根幹である「一室空間」を実現できません。
この矛盾をどのように乗り越えるのか。
木を諦めるのか、それとも木の可能性を信じるのか。
その答えが、木の弱点を正面から受け止め、技術で補完するシステムを採用することでした。

無印良品の家では、木材に無垢材ではなく、工場で品質を均一化した集成材、いわゆるエンジニアードウッドを採用しています。
節やばらつきを取り除き、強度の安定した部分だけを組み合わせることで、素材としての信頼性を高めています。

さらに、構造の要となる接合部に鉄骨を埋め込んでいます。
木と木を単純に組み合わせるのではなく、精度の高い接合によって、力の流れを明確にしています。

こうして生まれたのが、木造でありながら精緻な構造計算を可能にする仕組み「SE構法」です。
許容応力度計算という考え方をベースに、建物全体の強度を数値として把握することで、壁に頼らずに、大きな空間・開口部を実現できるのです。

木を選んだのは憧れではなく責任

なぜ木にこだわったのか。木でなければならなかったのか。

住み継がれる家とは、単純な耐久性の話ではありません。
地震が多く資源の乏しい日本においては、構造が合理的であり、その素材が循環できることが求められ、その上で、そこに住まう人がずっと快適であり続ける必要があります。

木は、再生可能であり、循環の中にある素材であるがゆえに、未来とつながっていると私たちは考えました。

そして技術は、その可能性を現実のものへと引き上げてくれました。

無印良品の家が木でつくられる理由。
それは、木の持つ癒しや優しさへの憧れではありません。
未来に対して、責任を持つという意思の表れなのです。

川内 浩司
株式会社MUJI HOUSE元取締役商品開発部長。
「無印良品の家」の開発を統括し、ブランドの基盤を築く。
現在はフェローとして、開発者としての専門知見を生かし、豊かな暮らしのヒントや住まいの魅力を、コラムや動画を通じて住まい手へ発信している。