「知恵を組合せたレシピ」から考える暮らしの知恵その3

団地から考える暮らしの知恵100 | 2023.9.29

第四十一回
「知恵を組合せたレシピ」から考える暮らしの知恵 その3

前回に引き続き、今回も今まで提案してきた知恵を組み合わせることで、新しいライフスタイルの「暮らしの知恵 レシピ」となる提案をしたいと思います。

おさらいですが、これまでの知恵の多くは、今までにない新しいアイデアを考えながら、団地暮らしの可能性を追求してきました。団地特有の壁式構造という建築的な条件や、和室が多いという内装的な条件もアイデアを出すことでより良い団地暮らしができるのではと考えてきました。

前回までに、

暮らしの知恵 レシピNo.1 –芝生の畳と照明を組合せた屋内アウトドアライフ–
暮らしの知恵 レシピNo.2 –麻畳と照明を組合せた可変性のある暮らし–
暮らしの知恵 レシピNo.3 –団地でサウナ!木に触れる暮らし–
暮らしの知恵 レシピNo.4 –いつもの生活の中で、木に触れる暮らし–

の4つのレシピをご紹介しました。

第四十一回の今回は、今まで提案してきた知恵の中から組み合わせを考え、「間取りの可変性」をテーマに新しい「暮らしの知恵 レシピ」を考えてみたいと思います。

<暮らしの知恵 レシピNo.5 – 多彩な外したふすまの使い方 ->

※一般的な「ふすま」の強度ではデスクにはできません
※外した「ふすま」は捨てずに保管しておいてください

これまで「ふすま」に関する知恵はたくさん考えてきましたが、その多くが、
「外したふすまをどこに保管するのか?」または、
「外したふすまを他の用途に活用できないか?」ということでした。

例えば、第十三回「外したふすまの居場所」から考える暮らしの知恵では、外したふすま7枚を使って「テレワークスペース」を作ったり、ちょっとした「フック」を壁につけることで、ふすまを「壁に立てかけて保管」することができるアイデアを提案しました。

また、第六回「ふすまでON/OFFテレワーク」から考える暮らしの知恵では、コロナ禍の中、自宅でテレワークをすることが多くなったけれど、プライベートとの切り替えがうまくいかない人に向けて、押入の中に仕事道具を保管して「ふすま」で閉じることで、仕事をOFFとし、「外したふすま」を使って「デスク」や「ホワイトボード」に利用することで、仕事がONの状態になるといった、仕事とプライベートを明確にするアイデアを提案しました。

他には、第三十四回「団地暮らしの可変性」から考える暮らしの知恵では、そもそもふすまを外すことなく部屋と部屋をつなげることができないだろうか・・・ということで「回転式ふすま」の提案を行いました。「回転したふすま」を端に寄せるだけで間口いっぱいに空間をつなげることができます。

これらのように団地暮らしにおいて「間取りの可変性」を考えた時にふすまを外すという手法がとても有効であるが故に、「外したふすま」にも役割を与えたいと考えてきました。一方で、外したふすまをもう一度、違う場所で間仕切りとして使うことができたらどうでしょう。「ふすま」はずっと「ふすま」として存在し続けることができそうです。

<暮らしの知恵 レシピNo.6 – 外したふすまで、もう一度間仕切る ->

「ふすま」を外して、違う場所でもう一度「ふすま」として使うことで、間取りを変化させることができる

「外したふすまで、もう一度間仕切る」というとなんだか矛盾しているように思えますが、団地には元々たくさんの「ふすま」が存在していてその数の分だけ、「敷居と鴨居」が存在します。それらを利用して、ある一定の数の「ふすま」だけを用意して、それを移動することで、どんどん間取りを変化させることができそうです。

不要な外したふすまは別の用途で活用しつつ、必要な「ふすま」はもう一度「ふすま」として利用するという組み合わせで考えることで、外したふすまの使い道に困ることはなくなりそうです。

また、MUJI×URのPlan11(町田山崎団地)では、南側に面した3つの部屋を、ふすまを外すことで間口一杯に広くつなげることもできますが、そこに「ふすま」を1セット用意することで、「リビング+子どものスペース」として間仕切ったり、「子どものスペース+寝室」として間仕切ったりと、暮らし方に合わせて住む人が自由に選ぶことができます。

右と左の敷居と鴨居を利用することで、部屋を自由につないだり、仕切ったりすることができる

右側にふすまがあることで、広いLDK空間になっている

右側にあったふすまを左側に移動することで、広い寝室空間に変化する

このように「間取りの可変性」を可能にしているのは「ふすま」が住んでいる人でも自由に移動できる「物理的な軽さ」や敷居鴨居にはめ込むだけの「簡易な仕組み」がとても大事であることに気付かされます。

そして、これらが標準で備わっている団地はまさに、多様化するライフスタイルに柔軟に対応できる「理想の暮らしの住居」なのではないでしょうか。

いかがでしょうか? このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見をお待ちしております。