団地で住宅スゴロクのその先へ
団地再生物語 | 2019.3.12
今回は、老後の住まいについて考えたいと思います。
1970年代の日本では、住宅スゴロクという考え方がありました。独身のころは小さな賃貸アパートに住み、結婚して少し広い賃貸マンション、子どもが産まれたら分譲マンション、その後それを売却して、郊外の庭付き一戸建てで「上がり」、ゴールは1つでした。
まだ暮らしの考え方に多様性が少なく、みんなが同じ理想をもっていたのかもしれません。
しかし、郊外の庭付き一戸建ては引っ越した当初は理想的かもしれませんが、子どもが独立した老後になると、使わない部屋があったり、大きすぎて管理が大変であったり、体力低下で階段の登り降りが億劫になったりすることがありそうです。
そしてそもそも現代では、住宅スゴロクの「上がり」は1つではないのかもしれません。
終の棲家について場所、所有、住み方でそれぞれ考えてみます。場所では郊外に住む以外にも、田舎に住む。海外に住む。都会に住む。所有では、賃貸に住む。購入して住む。住み方では、1人で住む。家族で住む。シェアハウスやホテルに住む。というのもあるかもしれません。
最近、老後に一戸建てから団地に住み替えをする方が増えているようです。老後は体力の低下や病気が心配です。住みやすさを考えると、大きな広い住まいではなく程々の広さで、近くにスーパーなどの生活施設や病院がある団地が選ばれるのもわかる気がします。
老後の団地住まいには、引きこもりにならないような仕組みやイベントがあると良さそうです。例えば、団地内に気軽に入れるフードコートがあったらどうでしょうか。たくさんのお店があれば毎日行くこともできますし、顔を合わせる人や知り合いも多くなりそうです。
さらに運営側に目を向けてみると、以前のコラム「もしも団地の集会室をキッチンスタジオにできたら」で提案したような、団地内のキッチンスタジオを利用して、パンやお菓子やお惣菜をつくって団地のフードコートで売る、1つ1つのお店を団地に住む人が運営できると良さそうです。
もし、団地内で商いを手伝っていただける人たちが集まれば、子どもをあずけあったり、働くみなさんの時間を融通しあうことで、無理なく働くことができるかもしれません。小さくはじめる商いと、それを利用する人たちが団地のフードコートに集まる。食事は毎日のことです。「住む」「働く」「楽しむ」コミュニティが団地にできる仕組みがあれば、どの世代も楽しく暮らすことができそうです。
また、団地住戸の室内プランはたくさんのバリエーションがあっても良さそうです。
終の棲家は、いままでのさまざまな暮らしの集大成になります。自分に合った住まいで気持ちよく暮らしたいものです。
料理を大切にする人向けに大きなキッチン。料理をしない人には小さいキッチン。お風呂好きな人には大きな浴室。浴槽がいらない人はシャワールームにして、その分リビングを広く。モノが多い人向けに納戸があるプランなどなど。仕様も豪華である必要はないですが、気持ちの良いデザインだと大切に住みたくなります。
みなさんは老後の団地暮らしをどう考えますか。ご意見をいただければと思います。