行燈部屋をつかう

団地再生物語 | 2016.5.24

「行燈(あんどん)部屋」という言葉をご存知ですか? 古くは行燈をしまっておく部屋のことで、光の入らない暗い部屋が使われたようです。現代では、屋外に接する窓がない部屋のことをいうことが多いようです。イメージとしてはあまり良くなく、窓が無いので暗くて使いづらい雰囲気があります。

住宅やマンションを設計するときには、気持ちの良い空間とするために、一般的に寝室やリビングに光や風が入るように設計しますし、建築基準法でもその最低条件が決められています。しかし、敷地の形や諸々の条件により、一部の部屋に十分な光や風が入らないことがでてきます。その場合に行燈部屋となり、納戸や収納として使われることが多いようです。

陽当たり・風通しの良い団地の中でも、行燈部屋がでてくる場合があります。
下の図面をみてください。こちらの間取りは昭和30年代頃に建てられた団地の一室です。約50㎡程度で南北に窓があり、陽当たりや風通しがよいことがわかります。

建設当初のプラン
建設当初は、この大きさで十分だったのが、昭和50年代になると時代の変化もあり、面積の大きな間取りが求められてきました。

そこで、既存の間取りの南側に一部付け加えられるかたちで部屋が増築され、下の間取りになりました。
約65m²あります。全国に団地で同じような課題があり、たくさんつくられました。

その後、増築したプラン

増築したプランを詳しく見てみましょう。
面積が広くなった以外のメリットでは、南側の新しい和室が2面外に面しているので、明るく、風通しがとてもよいことがわかります。
また、増築されたユーティリティ部分に以前のプランではなかった洗濯機パンが設置されたので、洗面脱衣室が狭くならず、洗濯機置場が確保できたことが大きいです。
しかし、西側中央の部屋()が、行燈部屋となってしまいました。光が入りづらく、増築部分への動線になっています。

外から見た、増築プランの団地

この増築プランは、MUJI×UR Plan 05「個室が3つあるシェアプラン」として、リノベーションをしました。
現在、住まいのレポートは終了しましたが、大阪の新千里西町団地「団地のシェアルームに、無印良品で暮らしています」でご紹介していたプランです。
シェアプランとして提案をしましたが、この全国にある増築プランを、さらに進化させる方法はないでしょうか。西側中央の行燈部屋がポイントです。いくつか間取りを考えてみました。

行燈部屋という特徴から考えると、シアタールームとして考えてもよさそうです()。部屋の一部にプロジェクターをつりさげれば、壁一面の大画面で映画やスポーツ観戦などを楽しむことができそうです。
ダイニングとキッチンの南側のバルコニーからユーティリティルームへ、部屋と部屋が行き来できるよう2方向の動線を確保すれば(←→)、行燈部屋()が閉じていてもバルコニーを通って南側寝室へ行くことできます。

大きなウォークインクローゼットにして、様々なものをしまえる収納部屋としてものをまとめ、他の部屋をすっきりさせるということもありそうです。

玄関土間とつなげて大きな土間空間としてもよさそうです。キャンプ道具やゴルフ用品などアウトドアの道具をおいたり、趣味の自転車を整備したり、ワークスペースにしたりと多目的に使えそうです。

いっそ、この部分を大きなお風呂にしてしまっても面白そうです。一般的団地のコンパクトなお風呂ではなく、大きなお風呂にして落ち着いて気持ちよく浸かっていられるような空間にできたらどうでしょうか。小さな子ども向けのミニプールや水遊び場としても使えそうです。
バルコニーから2方向の動線を確保すれば(←→)、バスルームを通らずに南側寝室へ行くことできます。

キッチンとの間にある壁をいっそうのことなくして大きな空間としたらどうでしょう。そうすれば、光もたくさん入り、玄関入って大きなLDK空間にもできそうです。
バルコニーから2方向の動線を確保すれば(←→)、南側の部屋が独立した離れのワークスペースとして使うこともできます。

・・・などなど、アイディアは膨らみます。行燈部屋のデメリットをメリットへと、発想を少し変えることで暮らし方が大きく変わる可能性を秘めていそうです。
今回、この間取りアイディアのご意見をみなさまにお伺いしたく、住まいのかたちアンケートを実施することにいたしました。ぜひ、ご参加いただきご意見をお聞かせください。

住まいのかたちアンケート第3期9回「行燈部屋の使い方」についてのアンケート