小さな暮らしで考える、住む場所と働く場所

小さな住まい | 2017.11.14

これまで6回に渡り、「小さな住まい」の可能性について連載してきたこのコラム。
今回、無印良品のメールマガジンとウェブサイトをご覧になっているみなさんを対象に「小さな住まい」に関するアンケートを実施しました(アンケート回答数 12,530人)。それによって、いまみなさんがどんな住まいに住み、どんな思いで暮らしているのか、小さな住まいに期待していることを含め、これからのあるべき住まいかたの輪郭が少しずつ見えてきました。

アンケートの集計結果のなかで際立っていたのは、収入や職場など、仕事や働きかたについてでした。とくに、通勤についての課題も感じ取れました。

私たちは、どこに住みたいかという問い以前に「仕事の環境」つまり職場との距離や得られる収入などの問題が先立ちます。理想的な住まいと暮らしについて、いくら自由に想像できたとしても、会社勤めをしている以上、想像を現実に移し替えるときにフィルターが設けられているようです。

今回のコラムでは、みなさんがライフステージごとに経験する「住む場所」選びについて、小さな住まいの可能性と絡めて考えてみたいと思います。

長距離通勤への不満と自宅で仕事をするということ
アンケートの一部では、住まい(自宅)と職場の関係に関する2つの問いについて、みなさんにお答えいただきました。まずは「通勤」について。

自然の豊かな場所で暮らしたいが、毎日会社まで長い時間かけて通いたくはない
とてもそう思う 30% / そう思う 33% / ややそう思う 18% 合計 81%
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結果をみると、長距離通勤への大きな不満を垣間見ることができます。それと同時に、(あくまで想像ですが)満員電車通勤への不満も見え隠れしています。暮らしの場そのものが自然に囲まれて快適であることより、平日・週5日、満員電車に長時間揺られて職場に行き来する苦労を解消したい思いのほうが優先事項のようです。

こうした不満に対し、ひとつの解決策が、ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方「テレワーク」です。主に自宅で会社の仕事をすることで、通勤から解放され、また子育てや介護を抱える会社員にメリットがあるとされています。近年、国内でもソフトバンク社やリクルートホールディングス社などの大手企業などもこういった取り組みを開始しているようです。

職場に行かずに自宅でできる仕事をしたい
とてもそう思う 15% / そう思う 17% / ややそう思う 22% 合計 54%
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在宅での仕事を望む割合はおよそ半数で、比較的高いことがわかります。しかし、先程の「毎日会社まで長い時間かけて通いたくはない」が81%だったのに比べ3割近くトーンダウンしています。もちろん「自然豊かな環境で」と限定していないこともありますが、自宅でひとり働くより、職場で「Face to Face」のコミュニケーションを取りながら仲間と仕事することにメリットを感じているひとは意外と多いのかもしれません。

在宅で仕事することが会社で制度として認められていて、個人としてもメリットを感じるひとは試してみるのもいいでしょう。ただ、職業柄、難しいひともいるでしょうし、仕事とプライベートの切り替えができずに労働時間が長時間化するという問題も起こっているようです。

暮らしをダウンサイジングすれば、住む場所の選択肢は増える
会社勤めのかたで、通勤時間を減らすために考えられる方法は2つです。

1:自宅を職場に近いところに引っ越す
2:自宅に近いところに職場がある会社に転職する

今回は「1:自宅を職場に近いところに引っ越す」の観点で考えてみたいと思います。ここで問題になるのは、やはりお金のこと。職場のほとんどは地価の高い都心に集中しているため、職場に近い場所に転居するためには、イコール高額な賃料という代償を引き受けなければなりません。

ただ、その代償を払うのは「転居以前と同じ広さの住環境を求めるならば」という場合のみ。つまり小さな家に転居すれば、必ずしもコストアップにはならないどころか、これを機に思い切って環境を変えることでコストダウンすることさえ可能かもしれません。

住まいにかかるお金(家賃、住宅ローン)が増えるより、 小さな家にしてほかに使えるお金を増やしたい
とてもそう思う 12% / そう思う 25% / ややそう思う 26% 合計 63%
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家や土地が小さくても、都市の便利な場所で暮らしたい
とてもそう思う 10% / そう思う 19% / ややそう思う 24% 合計 53%
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この結果から、暮らしをダウンサイジングすることで家賃やローンなどの生活コストを減らし、都市の便利な場所に暮らしたいという傾向が見られます。実際、小さな家に住むことでどのぐらいコストダウンできるのでしょうか。

例えば日本一のオフィス街である東京・丸の内の職場にドア・ツー・ドア30分以内で通える賃貸物件を調べてみます。エリアは東京都内で、築年数は20年以内、最寄駅までのアクセス時間は10分以内、公共交通での移動時間を20分以内と条件を設定。ひと家族が住むことができる50m²を下限に、小さな家(50〜80m²)と大きな家(80m²〜)の物件を大手不動産サイトで比較しました。

小さな家は家賃10〜14万円の物件が豊富にある一方、大きな家の場合は16〜20万円の物件が主として出てきます。つまり、その差は6万円(もちろん、正式な統計結果ではありませんし、物件の状態や間取りの設定のしかたによっては異なる結果が出てくるでしょう。みなさんも好みの条件で比較してみてください)。

そもそも、50m²程度の部屋で快適に住むことができるのか。きっと、これについても議論があるでしょう。しかし、こんなアンケート結果も出ています。

家が小さくなれば、ものを捨てることができる
とてもそう思う 8% / そう思う 23% / ややそう思う 22% 合計 53%
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半数以上のひとが、家が小さくなればものを捨てることができる、と答えています。多少言いすぎかもしれませんが、モノの量は家のサイズに比例して増えていく傾向があります。もちろん住んでいる人数との相関も大きい。しかし、ハコのサイズが決まってしまえば、意外とその枠内で済ませてしまいます。

家の広さにかかわらず、なるべくものは多く持ちたくない
とてもそう思う 28% / そう思う 34% / ややそう思う 22% 合計 84%
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ものを豊富に持つことよりも、持つべきものを丁寧に選んでシンプルに暮らしたいという思いも感じ取れます。世のなかのこうした傾向を考えれば、職場に近い場所に、そう高額ではない家に住むことは難しいことではないのかもしれません。

今回のコラムでは、現在の仕事と職場を固定したうえで、職場の近くに転居する場合について考えてみました。ものをできるだけ少なくすることで小さな住まいに収まることができれば、都心で暮らし、わずらわしい通勤に悩まされることは少なくなる、というのがひとつの結論です。

しかし、いまひとつ考えなければいけないのは、仕事と働きかたそのものについてです。今回のアンケート結果で見えてきたのは、理想的な「住まいかた」と「働きかた」は密接な関係にあるということでした。みなさんはどのように感じ、お考えになるでしょうか?

次回のコラムでは小さな住まいが可能にする、自由な働きかたについて考えていきたいと思います。さらなるみなさんのご意見をお待ちしています。