「窓の家」の「窓」の機能と風について

コラム | 2016.10.25

前回のコラム「感じ良いくらしは細部にこそ宿る」に続き、今回は「窓の家」のメインテーマでもある、「窓」について考えてみます。

日本の家における「窓」の役割は、その気候風土上、多岐にわたります。太陽の光を採り入れて家を明るくする。冬に太陽の熱を採り入れて、暖かくする。夏は、風を通して暑さや湿気を抜く。そして、四季折々の美しい風景を家の中に採り込む。
伝統的な日本家屋は、柱と梁で建てられ、柱と柱の間に取り付けた障子や襖などを「戸」といい、この柱と柱の「間」の「戸」を「間戸(まど)」と呼んだのが、日本語の「まど(窓)」の由来と言われるほど、「窓」が重要な役割を果たしてきました。(コラム「日本の家はずっと無暖房住宅でした」参照)
しかし、現代の日本の住宅地は家が建て込み、採り込みたくない景色もあれば、陽が当たらない、風が抜けない窓もあります。またエアコンが発達した今、風景や光だけを採り入れ、熱を通したくない窓もあります。
無印良品の家の「窓の家」は、伝統的な日本家屋における、一つの窓が全ての役割を果たす、オールマイティなゼネラリストとしての「窓」ではなく、風を通す窓、光を採り入れる窓、そして、好きな風景を切り取る窓、というように、窓の役割を特化したスペシャリストとしての機能をもたせ、それぞれの「窓」の効果を最大限生かそうという、これまでの日本にはあまりなかった発想の家なのです。

最も特徴的なのは、「ピクチャーウィンドウ」と呼ばれる、大きな一枚ガラスの窓です。この窓には、細いフレームとガラス以外、なにも部品がなく、あたかも壁に大きな穴があいたかのように、外の風景をダイレクトに家の中に切り取ってみせます。
本来、窓に求められる全ての役割をまっとうしようと考えると、「通風」のために窓は開かなくてはなりません。しかし、開けるためには、開け閉めやロックをかけるためのハンドルが必要になり、このハンドルは、お気に入りの風景を鑑賞するためには、無粋な邪魔者になってしまいます。
そこで、「窓の家」では、とくにお気に入りの風景を切り取るための窓は、ピクチャーウィンドウ、つまり外を鑑賞する役割に特化して、開け閉めするという機能を思い切って放棄しました。だからこそ、「窓の家」から見る景色は、絵画のように美しく切り取られているのです。

しかし、そこで心配になるのが、「通風」です。
冬は死ぬほど(本当に凍死するくらい)寒く、夏は湿気も気温もそれほど上がらない北ヨーロッパなどとは異なり、私たち日本人は、空気の心地よい春や秋にはもちろん、夏でもできれば窓を開けて家に風を通したいという、気候風土から受け継がれてきた欲求があります。
「窓の家」は、家中の全ての窓を閉め切っていても、きちんと外の空気を必要なだけ取り入れる換気能力に長けています。しかしこの「換気」は、家の中のよどんだ空気を入れ替えることが目的で、外の「空気感」を感じるためのものではありません。むしろ、外気温度になるべく影響されずに綺麗な空気を取り入れようというものです。
私たち日本人が(冬以外に)欲するのは、「換気」ではなく、外の空気の「気流」や「清々しさ」を肌で感じることのできる「通風」ではないでしょうか。
そこで、「窓の家」では、景色を楽しむ役割に特化した窓とは別に、通風のための窓も計画的に配置するように配慮しています。

例えば、「鎌倉の家」は、以下のような窓の配置計画にしています。

1階リビングの窓と、吹抜けに面した窓は開きませんが、吹抜けと直接つながるダイニングには天井に届く位置に、玄関には床の位置にと、高さに変化をつけて開く窓を設けています。このように、窓の位置に高低差をつけると、より通風が取りやすくなるのです。窓の高さを自由な位置に設けても全体のバランスが破綻しないように計算され尽くされた窓の家のデザインは、通風にも一役買っているのです。また、必ず設けられる吹抜けは、家族をゆるやかにつなぐと同時に、1~2階の窓が連携して通風を取る役割も果たしています。

無印良品の家では、とくに通風計画が必要な場合は、季節ごと・地域ごとにデータ化されている「風向きチャート(風配図)」を参考に、通風窓の配置を決めてシミュレーションを行っています。

「鎌倉の家」地域の風向きチャート

そして、そのシミュレーションが以下です。

1階

2階

いかがでしょうか。「開かない窓」のピクチャーウィンドゥのまわりにも気流が生じていることがおわかりいただけると思います。

みなさんは、窓の役割を特化することについて、どのように考えられますか? ぜひご意見ご感想お聞かせください。