「鎌倉の家」の冷暖房をシミュレーションしてみたら驚きの結果に

住まいのかたち | 2016.8.23

鎌倉の「窓の家」は、南向きにこだわらない家
前回のコラム「『鎌倉の家』の間取りを考えてみました」では、「鎌倉の家」の間取りを3つ考えてご提案してみました。少々極端な住まいのかたちを想定して、「鎌倉の家」でどんな暮らしができるのか妄想してみたのですが、皆さんから予想を上回るたくさんのご意見やアイデアをいただきました。ありがとうございました。
いずれの間取りも、「窓の家」の設計コンセプトである「窓から何が見えるのか、何を見たいのか」を踏まえ、観て楽しむ「庭」とあわせて、サーフボードや砂浜で砂だらけの子供たちの服や靴を(何しろ海まで5分ですから)外で洗ったり干したりできる場所としての「庭」を、決して広くない敷地ながら、つくり出しているのが特長です。

このように自由に窓の位置を決めるだけではなく、窓の向き、つまり家の向きも好きな方向に向ける、という発想は、日本では今まであまりなかったのではないでしょうか。
日本では、なるべく真南に大きな窓を取り、冬は暖かい日差しを取り入れ、夏はその窓を開けて通風を確保するという、自然エネルギーを最大限に取り入れる、先人の知恵が今に受け継がれているからです。

では、今回の鎌倉の「窓の家」のように、「南」にこだわらず、窓を好きな位置に配置する家は、省エネルギーハウスではないのでしょうか。いえいえ実は、「窓の家」は、エアコンなどの機器をできるだけ使わずに快適に賢く暮らす家なのです。

「鎌倉の家」冷暖房エネルギーをシミュレーション
前回のコラム「『鎌倉の家』の間取りを考えてみました」でご提案した[3案:共働き夫婦+幼児の3人家族]のようなプラン。
このプランは、家と敷地の間に「すき間」をつくるために、建物を敢えて真南に向けずに、やや西を向いています。水まわりを除いて間仕切りがない上に、吹き抜けで家全体がつながっています。

このように間仕切りを設けずに、家族全体が緩やかにつながる間取りは、無印良品の家の基本的な一室空間の考え方ですが、このような間取りを初めて見た多くの方は、「冬寒いのでは?」とか、「冷暖房費が普通の家より余計にかかるのでは?」と懸念されるようです。

そこでこの[3案]の間取りを、気象庁の気象データ(アメダス)をもとに、快適な室温を維持するのに年間どのくらいのエネルギーが必要かを「+AIR」でシミュレーションしてみました。
無印良品の家の全棟温熱シミュレーション「+AIR」は、心地よさと環境性能に優れた住まいづくりをデータで把握できるしくみ。日ざしや断熱性能をコンピューター解析・数値化して比較し、室温維持に必要なエネルギー量を計算しています。

常に家中の温度を18℃以上27℃以下に保つために必要な、冷暖房の年間エネルギーは、「鎌倉の家」の場合、床面積1m²あたり[1]182MJ(メガジュール=エネルギーの単位)になっています。
一方、「省エネルギー対策等級」の「最高等級4」(※平成12年制定=平成25年改定「断熱等性能等級」等級4相当)の基準値は、[2]460MJ/m²・年 ですので、「鎌倉の家」はなんと「最高等級4」基準のたった40%のエネルギーで、1年中24時間、家中を快適温度に保てる家、ということになるのです。
ちなみにこれは、「鎌倉の家」のために特別なオプション仕様を追加したものではありません。標準の「窓の家」の基本性能プランでの算出です。

このシミュレーション結果を、暖房、冷房、月別に表したのが、下の表です。

日本では、冬(暖房期)の方が、夏(冷房期)に比べて室内外の温度差が大きいため、一般的には、暖房エネルギーの方が冷房よりはるかに大きくなります。しかしこの「鎌倉の家」では、暖かい熱を逃がさない高断熱・高気密性能が非常に高いため、逆に、暖房が冷房の1/2程度で収まっているのが良くわかります。
また、24時間、家中に冷暖房をかけても、暖冷房費(エアコン代)が年間で約26,000円(!)ですむ、というシミュレーション結果が出ているのです。
鎌倉の「窓の家」は、高断熱・高気密性能(ダブル断熱・トリプルガラスの採用)によって、魔法瓶のような効果を発揮しています。熱を逃がしにくいため、ほんの少しのエネルギーで、快適な室温が保てるのです。

歴史と、海と、そして快適温度(小さなエネルギーで)に囲まれて暮らす鎌倉の「窓の家」。
みなさんは、どのように思われますか?ぜひご意見、ご感想をお聞かせください。