暖かい住まいのつくり方を教えてください
リノベーションなんでも相談室 | 2024.12.17
せっかく大がかりなリノベーションをするのであれば、冬でも快適に暮らせる住まいにしたいと考えています。暖かい住まいをつくるための工夫について教えてください
冬がやってくると、なんだか住まいの寒さが気になってしまいます。窓の近くの冷え込みが厳しかったり、結露に悩まされたりと、「もう少し我が家が暖かかったらよいのに」と感じる方も多いのではないのでしょうか。リノベーションをするのであれば冬でも暖かい住まいをつくりたいものですが、どのような工夫をすればよいものなのでしょうか。
今回は、自身も高断熱リノベーションをしたマンションで暮らす、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、リノベーションで実現できる暖かい住まいのつくり方について解説してまいります。
住まいの暖かさは、健康と直結する
暖かい住まいのつくり方のお話をする前に、そもそもなぜ冬でも暖かい住まいをつくることが重要なのか、という点について考えてみましょう。さまざまな切り口がありますが、長い時間を過ごすことになる住宅ですから、まずは住まいの暖かさと健康の関係について着目してみます。
暖かい家の価値(1)風邪をひきにくくなる
近畿大学の岩前篤教授が2009年に実施したアンケート調査によれば、より断熱性能の高い家に転居した人ほど、転居前の住まいで抱えていた咳やのどの痛みといった風邪の症状が改善するという結果が出ています(図1)。室温が低いとさまざまな健康リスクが高まることは世界保健機関のレポートなどでも指摘されていますが、風邪という身近な問題においても住まいの質の影響を受けているのです。寒い家の健康リスクについては「寒い家は、体に悪いのでしょうか?」も参考にしてみてください。
暖かい家の価値(2)ヒートショックのリスクを低減できる
冬になると、主に高齢者の浴室での事故が多発します。古くからの日本人の暮らし方として、人がいるところだけを暖める「採暖」の文化がありますが、家の中での温度差が大きくなるため、浴室での事故が引き起こされてしまうのです。どこにいても暖かい住まいをつくることで、室内の温度差を小さくし、ヒートショックのリスクを低減することができるのです。
暖かい家の価値(3)健康寿命が延びる
国土交通省主導のスマートウェルネス住宅等推進事業で過去に行われた調査では、暖かい住まいに住む人は寒い家に住む人と比べて健康寿命が4歳延伸できるという報告をしています。この調査で暖かい家(温暖住宅群)と区分された住宅の脱衣所平均室温が14.6℃ということですから、より暖かい住まい(たとえば世界保健機関が推奨する18℃以上の住まい)であれば健康寿命がさらに延びることもあるかもしれません。
暖かい住まいのつくり方
家の中で健康・快適に暮らすためには、暖かい住まいをつくることが重要であることはご理解いただけたかと思います。それでは、暖かい住まいをつくるためにはどのような工夫をすればよいのでしょうか。誰でも手軽にできることから、リノベーションをする際のポイントまで幅広く考えてみましょう。
住まいづくりの工夫(1)たくさん暖房器具を置く
工夫と呼ぶには物足りなく思えるかもしれませんが、暖房器具を増やすことで暖かい住まいをつくることができます。特に、廊下や脱衣室・トイレといった、一般的には暖房がなされない空間に小型の電気式ヒーターなどを設置するのもよいでしょう(図2)。手軽にできる工夫ですが、これらの空間を暖めることができれば、家の中での温度差を小さくすることができ、ヒートショックのリスクを低減することにもつながるのです。ただし、あくまで対症療法ではあるので、ヒーターをオン/オフする煩わしさやランニングコストの高さについては目をつむる必要があります。
住まいづくりの工夫(2)断熱改修を行う
根本的な改善を目指すのであれば、お部屋全体の断熱改修を行うことがもっとも有効的です。熱は高い方から低い方へ移動する性質を持ちますから、冬においては、暖房で暖められた室内の熱が、より温度の低い外気の方向へ逃げていこうとします。それを食い止めるためには、壁や窓といった室内と外気との境目で熱が移動しづらい状態をつくり出すことが肝心であり、これこそが断熱という考え方です。以前のコラム「UA値とは、なんですか?」「マンションでも『断熱』は必要ですか?」などもご参照いただき、壁面への十分な断熱材の追加や内窓の設置などの断熱改修をきちんと行うとよいでしょう。
また、熱の移動という観点に加えて、室内の表面温度を高めるということも断熱改修を行うことの価値だといえます。「室温が高い = 室内が暖かい」と考えがちですが、必ずしもそうとは限りません。自分を取り囲む床・壁(窓)・天井の表面温度も体感温度を左右する要素となりますから、室温が高くても、周囲が冷たい状態であれば体感温度は低下してしまいます。断熱改修で室内の表面温度を高めることで、体感温度を高めることにもつながるのです(図3)。
住まいづくりの工夫(3)温度差を小さくする間取づくり
工夫(1)では、暖房器具を増やすことで室内の温度差を小さくする方法について触れましたが、大がかりなリノベーションを行うのであれば、そもそも大きな温度差が生じないような間取をつくることもできます。一般的なマンションでは、暖房を効かせる空間とそうでない空間が明確に分けられたつくりとなっているため、室内での温度差が生まれてしまうのです。それを解決するためには、空気や人の動線を考慮したつながりのある空間をつくることが大切です(図4)。人がいるところだけを暖める「採暖」ではなく、住まい全体を暖める、本当の意味での「暖房」を目指した間取づくりや空調計画を行うとよいでしょう。
今回は、リノベーションで実現できる暖かい住まいのつくり方について解説しました。リノベーションというと見た目のデザインばかりに注目しがちですが、寒い冬でも健康・快適に暮らすための工夫をすることもできるのです。2025年からは新築住宅の省エネ義務化が始まることもありますから、これからリノベーションを検討する方は、資産価値の維持という点においても、性能向上に目を向けてみるとよいでしょう。
無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、全戸温熱計算を行うなど、性能や快適性にこだわったリノベーションを提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。