リノベでアイランドキッチンにできますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2025.2.4

ご質問

いろいろなリノベーションの事例を見るなかで、アイランドキッチンに興味を持ちました。リノベをすればアイランドキッチンにすることができるのでしょうか

リビング・ダイニングとひとつながりの空間をつくることができるアイランドキッチンは、リノベーション検討者にとても人気があります。一般的な中古マンションでは壁で区切られたキッチンが採用されることがほとんどですから、リノベをする際にはぜひアイランドにしたいという方も多いようです。リノベーションによって、アイランドキッチンをつくることはできるのでしょうか。

今回は、自身もアイランドキッチンにリノベした住まいで暮らしていた、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、アイランドキッチンの特長やリノベの工夫について解説してまいります。

そもそも、アイランドキッチンとは?

まずはアイランドキッチンとはどのようなものか、というところからお話を始めましょう。キッチンのつくりは主に壁付・ペニンシュラ・アイランドの3つに分類することができます。図1の(b)ペニンシュラ型と(c)アイランド型はどちらも対面型という点では共通していますが、アイランド型の場合は、キッチンの四方すべてが壁に接しておらず、まさに「島」のように独立した配置となっているのです。

図1. キッチンの代表的なレイアウト

アイランドキッチンのメリットについても少し考えてみます。真っ先に思い浮かぶのはおしゃれな空間になりそうだということかもしれませんが、そのほかにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

メリット(1)リビング・ダイニングとのつながりがある
リノベ前の中古マンションの間取りを見ていると、多くのキッチンは壁で閉じられた場所に配置されており、リビングやダイニングの空間とはやや隔絶されたような印象を受けます。アイランドキッチンにすることで、リビング・ダイニングとキッチンが連続して置かれることになりますから、開放感のある広々とした空間に様変わりします(図2)。また、キッチンに立って料理をしながらリビングで遊ぶお子さまを見守ることもできるので、とくにお子さまが小さい時期などは安心感も得られるかもしれません。

図2. リビング・ダイニングとつながったキッチン

メリット(2)みんなでキッチンを囲める
アイランドキッチンの特長は、四方がいずれも壁に面していないということになります。つまり、キッチンのどの面にも人が立てるということですから、家族みんなで料理をしたり、友達と集まってお酒を楽しんだりと、わいわいとキッチンを囲むシーンが目に浮かんできます。実際、私がアイランドキッチンの住まいで暮らしていた時も、友達が来るとキッチンやダイニングに集まって、簡単な料理をしたりお酒をつくったりしながら楽しいひと時を過ごしたものです。

メリット(3)背面にまとまった収納を確保できる
キッチンのレイアウトを決める際に悩むことになるのが、食品ストックや食器、家電などの収納スペースです。アイランドキッチンの場合には、背面にまとまったスペースを確保することができますから、図3の事例ように扉付きのパントリーを設けるなどの工夫もしやすくなります。

図3. キッチン背面の扉付きパントリー

リノベでアイランドキッチンは実現できる?

アイランドキッチンの概要が確認できたところで、「リノベーションをすればアイランドキッチンにできるのか」というご質問にお答えいたしましょう。回答としては、多くの場合でアイランドにすることはできます。ただし、天井の高さが低くなったり、床に段差ができたりといった制約を伴うことも多々あるので、間取り全体とのバランスをしっかり考慮してキッチンの配置をご検討ください。

レイアウトの制約について少し補足をしますと、たとえば図4のようにキッチンの排水管がすぐ脇のPS(排水たて管が通っているスペース)に接続されているマンションがあったとします。平面的には図4(a)のような排水ルートとなっており、断面を見てみると図4(b)のように床のすぐ上に配管を通して排水たて管に接続されています。

図4. リノベーション前のキッチン排水ルート

このマンションにおいて、図5のようなアイランドキッチンにしようとする場合、排水の出口の場所は変わりませんから、図5(a)のようにキッチンとPSをつなぐ必要があります。また、アイランドキッチンでは配管を隠すための壁が無いので、二重床を組んで、コンクリート躯体とフローリングの間に排水管を通すことになります(図5(b))。みなさんお気づきの通り、二重床にしたことで元の状態よりも床が高くなり、床から天井までの高さは低くなってしまいます。排水管は逆流しないように勾配をつけて設置する必要があるため、キッチンと排水管の距離が離れれば離れるほど、床が高くなり、天井高は低くなるのです。

図5. アイランドキッチンの場合の排水ルート

排水たて管とキッチン排水管とが接続する高さなどの条件によっては、アイランドキッチンにすることで床が大きく上がり、天井高が低くなりすぎてしまうこともあります。それを避けたい場合には、キッチンのスペースだけ段差をつけるという方法も考えられます。最低限、排水ルートの部分だけ床の高さが確保できればよいので、そのほかの部分はなるべく床を上げずに天井高を確保しようという考え方です。図6の事例では、アイランドにしたいというご希望と梁下の高さなどの構造を踏まえて、キッチン部分のみ一段上げるようなレイアウトとしております。掃除の手間などは増えるかもしれませんが、少し高いところから部屋全体を見渡せるというのは気持ちがよいものです。

図6. キッチンに段差を設けた事例

アイランドキッチンのリノベ事例

最後に、私たちのリノベーション事例でもアイランドキッチンを採用しているものがたくさんありますので、いくつかご紹介させていただきます。そのほかにも多数の事例が掲載されておりますので、「MUJI INFILL 0」施工事例のページもあわせてご覧ください。

鎌倉市のこちらのお宅では、シンプルなキッチンと、同じ素材・同じデザインのテーブルをあわせて配置することで、奥行きのある大きなキッチンのような使い方をしています。

こちらの横浜市のお宅では、広々としたLDKのなかに、暮らしの背景としてなじむようなアイランドキッチンを配置しています。キッチンの背面に可動の棚を設け、好きなものを飾る場所としても活用しています。

練馬区にあるお宅では、キッチン・ダイニング・リビングがならぶ、明るい空間をつくっています。こちらのお宅も排水の兼ね合いでキッチンを一段高くするレイアウトにしているのですが、とても気に入っておられるようです。

今回は、アイランドキッチンについて解説しました。一度お部屋をまっさらな状態にするフルスケルトンからのリノベーションであれば、床の高さの調整もしやすいため、アイランドキッチンへの変更は比較的やりやすくなります。もちろん、マンションのつくりによっては実現が難しいこともありますから、「検討している物件はアイランドにできそうか?」「アイランド以外でも希望がかなえられる間取りはできないか?」など、一度プロに相談してみるとよいでしょう。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、使い勝手や性能にも気を配った、感じよい住まいづくりのご提案をしております。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

みなさんからのご質問もお待ちしています!/

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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