築10年、フルリノベは早いでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.8.27

ご質問

10年前に新築で購入したマンションに住んでいます。間取の使いにくさもありリノベーションを考えているのですが、スケルトンからの工事を行うにはまだ早いのでしょうか

リノベーションというと、ある程度築年数の経ったマンションで行われるイメージがあるかもしれません。特にフルスケルトンからのリノベーションとなれば、部分的なリフォームと比べて費用も時間も必要となりますから、築10年程度の比較的新しいマンションでどこまでやるべきかについては悩ましいところです。

今回は、築浅から築古まで幅広い年代のマンションをリノベーションしてきた、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、築浅マンションのリノベーションについて解説してまいります。

築20年以上が、大多数。

はじめに、一般的にリノベーションがよく行われる築年数について考えてみましょう。国土交通省がまとめている「令和4年度 住宅市場動向調査」によれば、過去に新築で購入した住宅のリフォームを行ったケースの平均居住年数は27.6年となっています。同調査はスケルトンリノベーションを対象にしたものではありませんが、このくらいの築年数になると、設備や配管などいろいろなところに不具合が生じてくるのかもしれません。以前のコラム「配管は古いままですか?」でご説明した通り、配管関係の耐用年数が30年程度となっておりますから、この調査結果は合点がいきます(図1)。

図1. 配管材料の種類と耐用年数の目安

リノベーションにフォーカスした情報も参照してみましょう。一般社団法人リノベーション協議会の2024年6月21日付のリリースを見ると、同協議会が定めた品質基準を証明する「R住宅」を発行した物件のうち、約半数が築31年以上となっています。築21年以上まで含めると全体の8割を超えてきますから、築浅マンションをリノベーションする人は多数派ではないことは間違いないでしょう。

私自身の経験としても、築10年以内のマンションでのスケルトンリノベーションに携わったケースは数えるほどしかありません。しかしながら、逆の見方をすれば、少数ではあるもののそれを求める人がいるということもまた事実なのです。

築浅でもリノベーションすべき場合

それでは、築浅のマンションでもフルスケルトンからのリノベーションをした方がよい場合としてはどのようなことが考えられるのでしょうか。いくつかのケースがありますから、ひとつずつ見ていきましょう。

ケース(1)断熱等の性能が不十分
築10年程度のマンションであれば性能は申し分ないものと考えたいところなのですが、物件によっては断熱・省エネ性能がこれからの水準を満たしていないこともあります。最近でこそ新築住宅の省エネ化が当たり前になっていますが、およそ10年前の大規模住宅の省エネ基準への適合率は驚くほど低いものでした(図2)。一般社団法人板硝子協会の調べによれば、2014年時点における新築マンションでのペアガラスサッシの普及率は約72%ということもわかっており、10年前の新築マンションでも約3割は性能の低いシングルガラスのサッシが使われていたことになります。暑さや寒さが気になる方や、断熱・省エネ性能をZEH水準まで高めたいという方は、比較的新しいマンションに住んでいても性能向上を含めたリノベーションをするとよいでしょう。

図2. 省エネ基準適合率の推移(国土交通省)

ケース(2)内装が激しく劣化している
居住者の暮らし方次第になりますが、10年もあればお部屋の中がはげしく傷むこともあります。小さなお子さまや元気なペットがいるご家庭では、あちこちが汚れていたり傷ついていたりすることもあるでしょう。家族の中にヘビースモーカーがいるようであれば、壁紙の黄ばみやにおいが気になるということもあるかもしれません。内装を表面的にきれいにするだけでもそれなりの費用や時間、労力がかかるようであれば、いっそのこと全面的なリノベーションを検討するのも悪くない選択です。

ケース(3)間取りが暮らしに合わない
築浅のマンションでも、「間取りがこうだったらもっと住みやすいのに」あるいは「部屋数と家族構成が合わない」などの不満を感じることはあるでしょう。キッチンやお風呂などの設備はそれほどボロボロにはなっていないとしても、そもそもの間取りや生活動線をもっとよくしたいという気持ちがあるのであれば、大掛かりなリノベーションを行ってもよいかもしれません。マンションの新築時には、効率的に部屋数を確保することが求められますから、狭く暗い玄関や廊下・ゆとりのない洗面脱衣室・細かく区切られた個室などの特徴が築年数にかかわらずあらわれます。限られた空間の中で自分たちらしく暮らしたいという方は、ぜひフルスケルトンからのリノベーションを検討してみてください。

今回は、築浅マンションのリノベーションについて解説しました。築10年程度のマンションでは、どこまで費用や労力をかけてリノベーションすべきかというのは本当に悩ましいところだと思います。いまの住まいの悩みやこれからの暮らし方の希望を踏まえて、軽微なリフォームで解決できる問題なのか、大掛かりなリノベーションをしないと解決できないものなのか、じっくりと検討してみてください。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、リノベーションの検討初期段階からのご相談を承っております。リノベーションの時期や規模、資金計画などでお悩みの方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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