配管は古いままですか?

リノベーションなんでも相談室 | 2022.10.4

ご質問

リノベーションで内装はきれいになると思うのですが、給水や排水の配管については新しくできるのでしょうか。それとも古いままなのでしょうか

古いお部屋でも新品同様に仕上げることができるリノベーションですが、配管・配線・下地のような目には見えない部分については不安を感じているかたも多いのではないでしょうか。いくら内装がきれいでも、漏水が頻繁に発生する家には住みたいとは思えませんよね。リノベーションでは、どこまで配管を変えることができるものなのでしょうか。

今回は、マンションのプロ(マンション管理士)である”こっしー”が、マンションリノベーションにおける配管更新について解説してまいります。

マンション配管の基礎

マンションのリノベーションで登場する配管にはいくつかの種類がありますから、まずはその種類について整理してみましょう。大きな分類のひとつ目が「共用配管」と「専有配管」での区別です。マンションの区分所有者みなさんのものか、自分だけのものかという違いですね。もうひとつ、「排水管」と「給水管」という区別もできます。マンション標準管理規約と照らし合わせて整理すると、図1のように、給水については水道メーターより室内側が専有部、排水についてはキッチンなどの設備から排水立て管までが専有部という扱いになります。リノベーションで更新できるのは専有配管のみですので、共用配管については、マンション全体での修繕工事が必要になります。

図1. 専有配管と共有配管の範囲

さらに踏み込んで、マンションで使用されている配管の種類についても見ていきます(表1)。かつては錆や腐食劣化による漏水が非常に起こりやすい亜鉛メッキ鋼管(白ガス管)が使用されていたのですが、ライニング鋼管がそれに取って代わるようになりました。ライニング鋼管も継手部分における腐食や漏水の発生が問題になりましたが、防食形継手の開発によりそれらの問題は大幅に改善されました。最近では、室内の給水管として架橋ポリエチレン管などの使用が一般的となり、腐食劣化や錆びの心配がなくなっています。

表1. 配管材料の種類と変遷

リノベーションで、配管を更新する

今回は「配管は古いままですか?」というご質問でしたが、ここまでご説明した通り、専有部の給排水管についてはリノベーションで新しくすることができます。表1を見ると、給排水管の耐用年数は概ね20~40年程度ですから、リノベーションをする際には給排水管を一新することで、長く安心して暮らせるお部屋に生まれ変わります。将来的なメンテナンス性も考慮して、給水については「さや管ヘッダー工法」という、各ヘッダーから水場まで分岐することなく直接配管する工法を採用するのもよい選択でしょう。

また、以前のコラム「古いマンションのデメリットを教えてください」でもご紹介した「スラブ下配管」のマンションについては、下階の天井裏に自室の排水管が通っているため、この部分の配管の扱いを管理組合に確認する必要があります(図2)。判例では共用部となっていますが、リノベーションの際にこの部分の更新を推奨するケースもあるなど、対応はマンションごとに異なります。

図2. スラブ下配管

フルスケルトンからリノベーションするのであれば、ほとんどのケースで給排水管を一新しますが、リノベーション済の物件を購入する場合などは注意が必要です。キッチンやお風呂といった水まわりの設備は取り替えているものの給排水管は古いままということも珍しくありません。古い配管を残すというのは時限爆弾を抱えているようなものですから、たとえ内装が素敵だったとしても、そのような物件は避けたほうがよいかもしれません。

マンション全体での、配管更新・維持管理

共用配管はリノベーションでは触ることができませんから、マンション全体としてどのようなメンテナンスや改修が行われているかという点にもしっかりと目を向けましょう。共用配管の維持・修繕で行われるものとしては、主に、排水管洗浄・排水管の更生工事・給排水管の更新工事の3つがあります。

排水管洗浄は1~2年ごとに定期的に行うメンテナンス工事です。高圧の洗浄水や専用のワイヤーなどを使用して、排水管内の詰まりを改善します。排水管の更生工事は、古くなった共用排水管を延命させる工事です。配管内の錆びや汚れをきれいにした上で排水管内をコーティングし、既存の配管を長持ちさせます。給排水管の更新工事は、共用の給水管や排水管を一新する工事です。配管を全て取り替える大掛かりな工事であるため、お金も時間もかかりますが、築30~40年を迎えるころには、少なくとも給水管の更新工事は実施したいところです。

これからマンション購入をご検討される方であれば、共用の給排水管の更新工事を既に行っているか、あるいは予定があるか、という点をあらかじめ確認できると安心です。更生工事で時間稼ぎをしつつ、更新工事に向けて修繕積立金を貯めていくというマンションもありますから、長期的な修繕計画や管理組合の財務状況をしっかりと把握しましょう。

今回は、マンションリノベーションでの配管更新について解説しました。リノベーションで更新できる配管と、マンション全体で取り組まなければいけないものとがありますから、その区分けをきちんと理解する必要がありそうです。マンション選びの際には、共用部の配管の修繕履歴や更新の予定についてあらかじめ確認しておくと、より安心して住まいづくりを進めることができるでしょう。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、フルスケルトンから配管などのライフラインも一新するリノベーションを提供しております。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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