2024年はマンションの買い時でしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.1.16

ご質問

そろそろマンションを購入しようと考えています。物価の高騰や金利上昇の懸念などがあるようですが、2024年はマンションの買い時なのでしょうか

2023年は、円安やエネルギー価格の高騰を背景に、長らく続いたデフレからインフレ局面への転換期となりました。不動産価格も高騰を続け、東京23区では上半期の新築マンションの平均価格が1億円を超えるなど、この先マンションを買えるのかと不安になった方も多いのではないでしょうか。そのような市況を踏まえての2024年は、マンションの買い時といえるのでしょうか。

今回は、自身も2023年に3度目のマンション購入を経験した、ファイナンシャルプランナーで宅地建物取引士の”こっしー”が、マンションの買い時について解説してまいります。

必要な時が、買い時です。

今回のご質問は「2024年は買い時か?」ということですが、結論を申し上げると、いつだって必要だと感じた時が買い時です。元も子もない回答になりますが、自宅の購入を検討しているということであれば、市況を気にすることなく、自分にとって必要なタイミングでマンションを購入するべきです。家族が増えて手狭になってきた、住みたい場所が決まった、暮らしに合わせた空間をつくりたいなど、ご自身の状況を踏まえて買うか否かの判断をしてみてください。

少々雑な回答になってしまった気がするので、具体的な数字も見ながら考えてみましょう。図1では、首都圏の新築マンション平均価格の推移を示していますが、リーマンショックのような経済クラッシュが発生した際でも、平均値でみれば5%程度の下落にしかなりませんでした。仮に現在値5,000万円の物件の購入を計画していて、大きな経済クラッシュが起こったとしても、せいぜい250万円程度の価格下落しか期待できないということです。毎月の家賃が10万円の方であれば、2年以内に下落局面に入れば得できるという計算になりますが、それを夢見て購入時期を遅らせるということにどれだけ価値があるでしょうか。

図1. 首都圏新築マンション平均価格の推移

このような解説をしていると、「いやいや、1990年バブルのような大暴落が起こる可能性もあるのではないか」と心配をする方もいるかもしれませんが、マンション価格の短期的な暴落については心配する必要はないでしょう。日本中の地価が高騰したバブル期とは異なり、現在は流動性・資産性の高い都心部において著しく価格が高騰している状況です。加えて、(一社)日本建設業連合会の2023年12月版のレポート(図2)のように、資材価格や人件費が高騰している事実もありますから、訳あって高いというのが現在の市況です。繰り返しになりますが、「底値で買いたい」「儲けたい」という考えではなく、家族構成や年齢、仕事の状況などを加味して、いま家を買いたいのか、買う必要があるのかという観点で検討してみてください。

図2. 資材価格と労務単価の状況

これから数年の中古マンション市況は?

「買い時は市況を気にするべきではない」という回答をさせていただきましたが、それでもこれから先のマンション市場がどうなるか、というのはとても気になるところではないでしょうか。あくまで個人的な考えにはなりますが、この先数年間の市況について予測してみようと思います。

予測(1)個人が売主の中古マンションは大きな変化無し
マンションの売買は、売主が不動産業者のものと個人のものとに二分することができます。前者は営利目的、後者は住み替えや相続などによる資産処分目的であることが一般的です。ここ数年の動きを考えるときに、後者については現在と変わらずある程度の高値水準での売買がなされると予想しています。需要減・供給過多という状態になれば価格下落の可能性が高まりますが、新築の高騰による中古購入者の増加、人口減少局面での都心部への一極集中など、数年単位で見たときには需要側が大きく減少する要素は無さそうです。都心・駅近などの好立地の中古はジリジリと価格上昇を続け、その他の大抵のマンションは価格維持という見立てをしています。

予測(2)表層だけの買取再販物件は価格下落
一方で、不動産業者が売主となるリフォーム済みの物件(買取再販物件)については、これまでの強気な値付けからの転換を迫られるのではないかと想定しています。コロナ禍以降、不動産業者によるマンション買取が進み、直近では買取再販物件の在庫数がコロナ前以上に積みあがっています(図3)。競争の過熱を背景に、高値買取りの事例が増えておりましたが、加熱しすぎた競争が一旦落ち着きつつあるのが現在の状況です。

図3. 売主物件の在庫推移

また、世界的な二酸化炭素排出量削減の潮流の中で、日本においても省エネ性能の優れた住宅への税制優遇がますます加速していく可能性があります。数年後には、買取再販物件においても、最低限の省エネ性能を有していないと一切の税制優遇を受けられないというような時代になっているかもしれません。そうなると、表層だけきれいにしたような買取再販物件については、高い売値を付けられないということになるでしょう。この数年で、ポータルサイトでよく目にする「リフォーム済み物件」においては、価格が下がる可能性は十分にあるのではないでしょうか。

予測(3)旧耐震物件の価格下落
もうひとつ、現行の耐震基準を満たさない、いわゆる旧耐震の物件についても、数年単位で見ると価格を落としていくかもしれません。一部の都市銀行では、すでに旧耐震物件を住宅ローンの対象から外しているところもありますが、他の都市銀行、地方銀行などもその流れに乗ってくることも考えられます。どの地域で、いつ大地震が発生してもおかしくないのが日本ですから、耐震化の促進と旧耐震物件の流通抑制が並行して進んでいくのではないでしょうか。もしも、住宅ローンが借りられない、あるいは、限られた金融機関でしか融資がおりないということになれば、不動産としての価値は自ずと低下することになり、売買価格の維持も難しいのではないかと考えています。

まとめると、中古マンション市場全体としては現在の価格水準を維持ないしは上昇する一方で、省エネ性の低い買取再販物件や、耐震基準を満たさない物件については価格が下落するという、二極化が進んでいくと予測しています。2024年についていえば、まだ二極化の過渡期にあたる時期でしょうから、価格下落リスクが低いものを選びさえすれば、大きく失敗することは無いのだろうと考えます。あくまで個人的な予測ですので、ご参考までに。

今回は、マンションの買い時と市況予測について解説しました。「マンションは暴落する」などと逆張りの意見を表明した方が面白いのかもしれませんが、当面はそのような事態にはならないでしょう。いずれにしても、市況のことは気にせず、必要だと思うタイミングで住宅購入を検討してみてください。以前のコラム「マンションの買いどきはいつですか?」「中古マンション価格は下がりますか?」でもいろいろな検証をしておりますので、そちらもあわせてご参照ください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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