1階住戸を買ってもいいでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2023.12.19

ご質問

購入を検討している中古マンションがあるのですが、1階のお部屋であることが気になっています。1階の住戸でも気にせず購入してよいものなのでしょうか

マンションなのに戸建住宅のように庭いじりを楽しめたり、下階への騒音を気にしなくてよかったりと、マンションの1階住戸には特別な魅力があるものです。その一方で、防犯面や水害への不安など、1階は避けたいと考える方もいらっしゃると思います。1階住戸を購入する際には、どのようなことに気をつけて判断するべきなのでしょうか。

今回は、みなさんのマンション探しのコンセプトづくりからお手伝いしている、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、マンションの1階住戸の特徴や選び方について解説してまいります。

1階住戸のメリット

まずは、言わずもがなですが、1階住戸のメリットについて検討してみましょう。階段やエレベーターを使わなくていいなど、いろいろなメリットが浮かんできますが、代表的なものとしては下記の3点があげられそうです。

メリット(1)室内からの騒音の心配が少ない
騒音問題は、周辺住戸や外部から自室内に入ってくる騒音と、自室内から外部に出ていく音に分けられますが、1階住戸は後者の騒音に対して強みを持っています。下階に住人がいませんから、生活音をさほど気にせずに暮らしていくことができるわけです。小さなお子さまがいるご家庭では、このような騒音の心配から、絶対に1階住戸がいいと希望する方も少なくありません。ただし、室内で飛び跳ねる音などの振動音は下階だけでなく周辺住戸にも伝わってしまいますから、集合住宅で暮らしているという意識は忘れないようにしましょう。音の問題については、「マンションの音の問題が心配です」も参考にしてみてください。

メリット(2)庭のある暮らしを楽しめる
専用庭付きの1階住戸では、植物を育てたり、ハンモックを置いてみたり、夏にはビニールプールを出して遊んだりと、マンションでありながら戸建住宅のようにお庭を楽しむことができます。あくまで共用部なのでお庭でのバーベキューなどは規約上難しいものの、季節によっては、お庭に簡単なテーブルや椅子を並べ、外での食事を楽しむというのも気持ちがよさそうです。なお、専用庭の管理は居住者がすることになりますから、雑草だらけにならないようにお気を付けください。

図1. マンションのテラス・専用庭

メリット(3)価格が比較的安い
エレベーターがあるマンションの場合、一般的には高層階になるほど売買価格が高くなります。逆をいえば、1階住戸はそのマンションの中では比較的お求めやすいお部屋ということですから、1階住戸を求める方にとっては嬉しいお話です。後ほどご説明するような1階ならではの懸念点はあるものの、それをクリアできるのであれば、1階住戸はねらい目といってもよいかもしれませんね。

1階住戸のデメリット

1階住戸のいいところがわかりましたから、ここからは1階住戸ならではの懸念点についても考えてみましょう。メリットについては3つご紹介しましたから、デメリットも代表的な3つに絞ってご紹介いたします。

デメリット(1)セキュリティ面が不安
マンションのいいところのひとつに、セキュリティの高さがあげられます。オートロックの存在もありますが、そもそも高層の住戸になると外から侵入しにくいというのは言うまでもありません。そんな中で1階住戸は侵入しやすい部屋位置となってしまいますから、空き巣に入られるのではないか、という不安を感じる方もいるでしょう。ところが、もしかするとそこまで心配することも無いのかもしれません。警察庁の統計資料を見ると、そもそも空き巣のような侵入窃盗の発生数が目に見えて減少していることがわかります(図2)。もちろん戸締りなど万全の備えは必要ですが、犯罪の内容が変わってきているということも頭の片隅に置いておくといいかもしれません。

図2. 侵入窃盗認知件数の推移

デメリット(2)浸水被害が不安
1階住戸の場合、戸建住宅と同様に河川の洪水等による浸水被害は心配になるところです。最近では、排水機能を超えた局所的な豪雨による内水氾濫なども問題になっており、マンションといえども水害の問題は慎重に考えた方がいいでしょう。自治体ごとに洪水や土砂崩れ等のハザードマップが作成されていますから、マンション購入の前にリスクを把握するようにしましょう。自治体の治水工事の状況などもあわせて見てみると面白いかもしれません。

デメリット(3)室内の寒さが心配
1階住戸で問題になるのが、冬場の寒さです。周囲を他の住戸に囲まれた中住戸と異なり、すぐ下が地面となる1階住戸では底冷えに悩まされる方も多いようです。比較的新しいマンションであれば、床面の断熱がなされ、リビングには床暖房が入っているものも増えていますが、リノベーション対象となるような中古マンションにおいては断熱が不十分であることがほとんどです。なんの工夫もせずに住みはじめると、冬場は少々暮らしづらさを感じるかもしれません。

1階住戸を選ぶコツ

今回のご質問では1階住戸の購入を念頭に置いているということですので、1階住戸を選ぶ際、それからリノベーションする際におさえるべきポイントについて、最後に考えていきましょう。

マンション購入の際に気をつけること
1階住戸を検討する際にまず調べるべきは水害などのリスクです。さきほどハザードマップを確認することの重要性について触れましたが、その方法はいくつかあります。各自治体のホームページから確認してもいいですし、国土地理院が提供している「重ねるハザードマップ」というWEBサービスを利用するのもよいでしょう(図3)。指定した場所の洪水リスクなどを地図上に表示することができるので、とても使い勝手がよいサービスとなっています。

図3. 国土地理院「重ねるハザードマップ」

また、1階住戸といっても、地面から少し下がった半地下に近い部屋位置の場合もあります。水害に見舞われるリスクが大きくなりますので、中古マンションであれば、過去の大雨の際の被害の有無などについて、売主様や管理会社の担当者などに確認するとよいでしょう。風通しが悪く、湿気がこもりやすいこともありますから、その点も売主様などにヒアリングできると安心です。

リノベーションで気をつけること
1階住戸で気持ちよく暮らすためには、冬の寒さ対策が重要になります。地面からの冷気の影響を受けやすく、かつ、高層階に比べて日射が入りにくいことも多くありますから、それらの特徴を踏まえたリノベーションを行う必要があります。具体的には、解体して出てきた床のコンクリート全面に断熱材を施工します。通常の中住戸であれば床の断熱は不要な場合がほとんどですが、底冷えに弱い1階住戸については、忘れずに床断熱を行いましょう。その他、外気と接する壁、窓についても正しく断熱施工を行うことによって、寒さに悩まされにくいお部屋にすることができます。マンションの断熱については、「マンションでも『断熱』は必要ですか」「UA値とは、なんですか?」などもあわせてご覧ください。

今回は、1階住戸の特徴について解説しました。1階ならではの心配事はあるものの、事前の調査やリノベーションの工夫によって、解決できることもありそうです。火災保険に水災保障を付ける、ホームセキュリティを検討するなど、1階住戸ならではのリスクへの対処方法は他にもありますから、「1階は絶対にNG」と決め込んで可能性を狭める必要はありません。ぜひ幅広い視野で物件探しをしてみてください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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