壊してみるまでわからないことはありますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2020.12.15

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「中古マンションをリノベーションでは、解体が始まってからわかることもあると聞きました。壊してみないとわからないこととしては、どのようなものがあるのでしょうか」。

おっしゃる通り、既存の建物を生かして工事を行うリノベーションでは、建物を新築する場合とは異なり、工事が始まってからはじめてわかることもあります。それ故に、リノベーションは手間がかかるし、難易度の高い工事だとよくいわれます。今回は、マンションのリノベーションにおいて、壊してみないとわからないこととは何なのか、解説してまいります。

まずは、わかることを調べます

壊してみないとわからないことについてお話する前に、事前に調べればわかることについて考えてみましょう。リノベーションの詳細な設計を始める前には、「竣工図書の確認」と「現地調査」を行います。竣工図書とは、マンションが建てられたときの図面集であり、間取の詳細、床や壁のコンクリートの厚み、天井の高さ、給排水管や排気のルートなど、建物の詳細なつくりを確認することができます。

現地調査は、文字通り、これからリノベーションをするお部屋の調査です。現地に赴き、コンクリート躯体・排水ルート・排気ルート等の構造を可能な限り把握し、お部屋の採寸や室内の状態の確認を行います。竣工図書で確認する内容と重なる部分も多いのですが、竣工図書と現地の様子に相違がある場合もありますし、竣工図書だけでは読み取れないことも多々あるため、現地調査が必要となります。

壊してみないとわからないことも、たくさん

竣工図書の確認や現地調査によって、ある程度のことが把握できれば、十分に詳細な設計を進めることができます。設計者もプロですから、明確にわからないことがあったとしても、おそらくこうなっているだろうという想定をもって設計を進めます。しかし、完全にその想定通りになるわけではなく、ご質問の通り、壊してみないとわからないことも多々あります。ここからは、解体をしてみてはじめてわかる主な内容についてご紹介いたします。

(1)雨漏り・漏水
解体後に、コンクリート面からの雨漏りや、共用の排水管からの漏水が見つかる場合があります。これらのトラブルは、程度がひどければ解体前の現地調査等でも発見することができるのですが、雨漏り・漏水の多くは、じわじわと広がるものですから、解体後にはじめて気づくことができます。なお、コンクリート躯体や共用配管はマンションみんなの持ち物(=共用部)ですから、これらの問題個所を直す際には、マンションの管理組合や管理会社に相談の上、マンション全体のお金を取り崩して対応します。

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図1. 共用排水管からの漏水

(2)コンクリート面のカビ
築年数の経ったマンションは、断熱性能が低いものが多く、なかにはコンクリート面が結露して、カビがびっしりと生えてしまうものもあります。完全にカビを除去することは困難なのですが、もしも解体後にカビが見つかった際には専門業者に依頼して対処し、それから工事を進めると良いでしょう。世の中には表層だけキレイにして販売されているリフォーム済のマンションも多く、もしかしたら見えないところでカビがびっしりというものもあるかもしれません。リフォーム済マンションの注意点については、「リフォーム済を買うのはどうでしょうか?」も合わせてご覧ください。

(3)天井などの高さ関係
設計段階である程度の想定をしながらも、壊してみてはじめて明確になるのが、高さ関係です。例えば、設計段階では玄関から室内に入る際に10cm床面が上がる想定だったけれども、実際には12cm上げる必要が出てくるということもあります。解体して現れるコンクリート躯体は必ずしもきれいで平らなものではなく凹凸が激しい場合もありますから、その凹凸を調整するために床面の高さに影響がでることになるのです。ほかにも、竣工図書や現地確認で詳細がわからなかった排水管のルートなどは、解体後にはじめてその実態がわかり、それを踏まえた床面の高さの調整を行うこともあります。

(4)詳細な寸法
コンクリート面の凹凸が問題になるのは、床面だけではありません。壁面のコンクリートも竣工図書と寸分の狂いもなく真っ平というものばかりではないため、解体後に設計段階からの変更が出る場合もあります。ですから、リノベーションを行う場合には、「このスペースには手持ちの家具を入れる予定なので、ここの寸法は絶対に守りたい」など詳細な打合せが必要になります。既存の構造を生かして内装をつくり変えるリノベーションでは、完璧を求めない、ある種のおおらかさが必要なのかもしれません。

(5)追い焚き設置の可否
古いマンションでは、追い焚きが設置できない場合もあります。もともと追い焚きが付いていないマンションの場合、リノベーションにより追い焚きが追加できる場合もあれば、できない場合もあるのです。追い焚きができるようにするためには、追加の配管が必要になるのですが、この配管のための穴が開いているかどうか、あるいは新たに開けることできるかどうかによって追い焚き新設の可否が決まります。

今回は、リノベーションを行う際に、解体してからわかることについて解説しました。もともとの建物の構造を生かすという、大きな制約のもとで空間をつくるのがリノベーションの大変さであり、醍醐味でもあります。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、一度すべてを解体する、フルスケルトンからの住まいづくりを行っています。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

みなさんからのご質問もお待ちしています!/

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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