リノベーション向きの築年数はありますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2020.12.1

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「中古マンションといっても、築浅のものから築年数の経ったものまで幅広いと思います。リノベーションに適した築年数はあるのでしょうか」。

これは気になるところですよね。品確法によれば、新築と名乗ることができるのは、竣工後1年未満で未入居の物件ということが条件となります。ですから、マンションの完成後1年を迎えたものはもれなく中古マンションとなるのです。内装の全面改修であるリノベーションを行う前提で考えた場合、どのくらいの築年数がちょうどよいのか、解説してまいります。

築25年が、ひとつの目安

マンションごとに立地が違えば、規模も違い、共用設備や住人の考え方も異なりますから、築〇年のマンションを買うべき!とは一概にはいえません。しかし、マンションの設備や構造、資産価値などを考慮すると、ひとつの目安となる数字が出てきます。それが「築25年」です。リノベーション前提で中古マンションを選ぶ際には、築25年以上が目安となる3つの理由をご紹介します。

(1)設備機器や配管の交換時期
まずは、単純に設備機器や床下の給排水管等が古くなっているということがあります。たとえば、給湯器は10年程度、キッチンやお風呂などは一般的に使用開始後15~20年前後で交換することが多いようです。新築時から使用している設備機器であれば、築25年を迎えるころにはちょうど交換すべき時期となります。また、マンションの床下には給水管や排水管が通っておりますが、1990年代後半のマンションの場合は給水管に鋼管が使われることが多く、主に継手部分で錆が生じやすいという問題があります。これらの給排水管も20~30年前後で交換すべきものですので、リノベーションと相性が良いのです。

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図1. 古い給水管の錆

(2)資産価値が安定する
資産価値という観点からも、築25年というのがターニングポイントになります。日本の不動産市場においては、不動産相場全体の変動を除けば、築年数が新しい建物ほど価格が高く、築年数を経るごとに価格が下がるというトレンドがあります。ただし、マンション価格が新築時から下落し続けてゼロになるということではなく、図2のように築20~25年程度で価格の下落が落ち着いてきます。資産価値について考える際には、価格の高い安いではなく、買ったときと手放すときとの価格の差が重要になりますから、築25年以上経過したマンションであれば、不動産資産としても安定していることがわかります。ただし、以前のコラムで触れたとおり、現行の耐震基準を満たさないマンションについては、将来的な資産価値についての不安がありますので、いくら古くても良いというわけではありません。

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図2. 経年によるマンション価格の変化

(3)管理状態の把握がしやすい
築年数を経て価格が安定すると説明しましたが、どんなマンションでも将来的に価値を保ち続けられるというわけではありません。しっかりと維持管理がなされたマンションであれば、この先20年後、30年後でも価値を保つことができるでしょうが、管理がずさんなマンションにおいては、将来的な資産価値を期待するのは難しいかもしれません。

マンションの管理の良し悪しを把握するために、築25年というのはちょうど良いタイミングです。健全な状態でマンションを維持するために、概ね12~15年に一度程度、建物全体の修繕工事(大規模修繕)が行われます。築25年というと、2回目の大規模修繕を行うか近々実施する予定がある、という時期になりますから、3回目、4回目の大規模修繕に向けた財政状況がどのようになっているのかを判断することができます。この先も安心して暮らしていけるマンションなのか否かの判断がつきやすくなりますね。

肝心なのは、見極めです

築25年のマンションであれば、新耐震基準にも適合していますし、オートロックが付いているものも多く、外観もさほど古臭い印象は受けないかもしれません。しかし、目に見えるきれいさと、財政状況などマンション自体の健全さとはイコールではありません。例えば、築25年を迎えるころには、マンション全体の給排水管やエレベーターの更新などを検討する必要が出てきます。いずれも費用の掛かる工事ですので、しっかりと修繕のためのお金が積み立てられていないと、その先のマンションの維持管理に負担をかけることになってしまいます。見た目はきれいだけど中身は…ということもありますから、中古マンションを選ぶときには、目には見えない管理状態も含めて判断する必要があります。中古マンションの詳しい見極め方についても、そのうち解説しようと思います。

今回は、マンションのリノベーションを行う際のちょうど良い築年数について解説しました。内装や設備の劣化が進み、不動産としての価格も落ち着きはじめるのが築25年ごろです。このころになると、マンションごとの管理状態にも差が出てきますから、長く安心して暮らせる住まいをつくるためにも、しっかりとマンションの良し悪しを見極めたいものです。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、中古マンション探しからリノベーションまでワンストップでサービスを提供しております。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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