
物件チラシの見方を教えてください
リノベーションなんでも相談室 | 2020.10.6
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。
今回お答えするご質問は、こちら。
「不動産屋さんから貰った物件のチラシやポータルサイトを見ると、物件価格や広さ以外にもいろいろな情報が載っています。きちんと物件を選ぶためには何を確認すればよいのでしょうか」。
マンションを探し始めると、不動産屋さんに相談に行ったり、ポータルサイトで物件情報を調べたりしますよね。不動産屋さんからは物件情報が書かれたチラシをもらえますし、チラシと同じような内容がポータルサイトの物件ページにも書かれていたりします。今回は、チラシなどに記載されている内容やとくに確認すべきポイント、チラシ上ではわからないことなどを解説してまいります。
マイソクに書かれていること
不動産屋さんに相談に行ったことがない方でも、不動産屋さんの店頭にチラシが貼ってある光景はイメージができるのではないでしょうか。このような物件の販売チラシは業界用語で「マイソク」と呼ばれ、不動産屋さんの営業マンはこのマイソクを使って、お客様に物件の紹介をしています。不動産会社ごとにフォーマットは異なりますが、例えば図1-(a)のようなもので、不動産ポータルサイトの物件情報ページにもほぼ同じ項目が掲載されています。


マイソクには何でも好き勝手載せてよいわけではなく、「景品表示法」や「公正競争規約」によって記載内容が決められています。嘘や誇張を排除し、記載すべき内容を統一することによって、一般消費者が守られるような仕組みとなっているのです。マイソクには大まかにどのようなことが書かれているのかを図1-(b)に示しました。あくまで物件を売るためのチラシですから、物件の魅力を伝える部分に多くのスペースが使われていることがわかりますね。
もう少し踏み込んで、記載されている細かな内容について見てみましょう。マンション売買の場合でいうと、記載されている内容は「マンションについて」「部屋について」「契約関連について」「その他」というかたちで分けることもできます。それぞれの主な内容について、表1にまとめます。
表1. マイソク記載内容の分類
マンションについて | ★所在地、★交通アクセス、★土地権利、★管理形態、★構造、建物階数、★築年月、用途地域、★総戸数、設備関係、分譲会社、施工会社、etc. |
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部屋について | ★間取図、★専有面積、★所在階、管理費、★修繕積立金、etc. |
契約関連について | ★物件価格、★現況、★引き渡し時期、★取引態様、etc. |
その他 | ペット飼育、オートロック、駐車場、周辺施設、etc. |
マイソクのなかで、見るべきポイント
勘の良い方は表1を見てお気づきかもしれませんが、★印のついた項目はマンションを選ぶ際にとくに確認したいポイントです。物件の情報を見ていると、どうしても価格や交通アクセス、お部屋の広さなどに目が行くと思いますが、それ以外にも確認しておきたいポイントはたくさんあるのです。マンション選びで押さえるべきなのに見落としがちな項目もありますので、それぞれ説明いたします。
1. 土地権利
「うわー、このマンション安い!」というものがあった場合、この土地権利が所有権ではなく借地権となっているかもしれません。借り物の土地の上にマンションを建てているという形態のため、土地の持ち分はありません。また、定期借地権と記載がある場合には、借地期限を迎えると建物を解体し、更地にして土地の持ち主に返却することになります。借地権のマンションを選ぶ場合には、そのメリット・デメリットを理解した上での判断が必要です。
2. 築年月
耐震基準については以前のコラム「新耐震・旧耐震とは、何ですか?」で触れたとおり、1981年6月1日以降に確認申請を受けたものが新耐震基準となります。気をつけなければいけないのは、マイソク上で書かれているものは築年月、つまりマンションが完成した時期になります。マンションを建てるために確認申請を行ってから完成するまでには1年以上の期間がかかる場合がほとんどですから、1981年に完成したマンションは基本的には旧耐震の物件になります。
3. 専有面積・修繕積立金・総戸数
この3つの項目は、マンションの今後の管理運営に関わる内容ですので、合わせて考えましょう。マンションを良い状態で維持するためには定期的な修繕が必要で、修繕のためには当然お金がかかります。お金が足りなくなると、必要な修繕が行えない、毎月支払う修繕積立金が大幅に増額するなどのおそれもあります。あくまで目安ではありますが、1㎡あたりの修繕積立金(毎月の修繕積立金÷専有面積)が200円を超えているかどうかを確認しましょう。また、総戸数が20戸程度の小規模マンションなどは、この水準では修繕費不足が予想されますから、もう少し割増しで考えたいとことです。
4. 所在階
リノベーションを行う場合には、所在階も重要です。最下階であれば床面の断熱も行うべきですし、最上階であれば天井面の断熱をするべきです。リノベーションをして、天井面をコンクリートむき出しの状態で仕上げたいという方もおりますが、その場合は最上階など真上に住戸が無いお部屋は避けましょう。天井面の断熱を全て取り去ることは物理的には可能ですが、劣悪な住環境になってしまいます。
ただし、マイソクだけではわかりません
マイソクに記載してある内容やとくに確認すべき点についてお話しましたが、じつは、マイソクだけでマンションの良し悪しは判断できません。例えば、マンションの今後の修繕計画や財政状況については、重要調査報告書や長期修繕計画案、総会議事録などの資料を確認する必要があります。ペットの飼育や楽器の演奏、リフォーム・リノベーションを行う際の制約については管理規約やマンションの設計図書を確認しなければなりません。
このように、マイソクやポータルサイト上の情報だけでわかることには限界がありますから、具体的にマンション購入に向けた検討をする場合には、より細かな情報について理解する必要があります。あくまでマイソク等の情報は一次的なものと捉え、信頼できる不動産屋さんなどに相談しながらすすめるとよいでしょう。
今回は、物件の販売チラシ、いわゆるマイソクの見方やその限界について解説しました。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、物件探しからのご相談も承っております。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。
\ みなさんからのご質問もお待ちしています!/

“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。