借りられるだけ借りていいのでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2020.4.21

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「これから住宅購入をするにあたり、住宅ローンの利用を考えています。銀行が貸してくれるという上限の金額を借りてもいいものなのでしょうか?」

資金計画についてのご相談ですね。何千万という大きな金額を、35年などの長期で借りることになる住宅ローンですから、少し慎重に考えてみても良いかもしれません。今回は、借りられる金額と返せる金額の違いという点について解説してまいります。

銀行が貸してくれるなら返せるはず、は間違い

結論からお伝えしますと、「銀行が貸してくれるなら、その金額までは借りても問題ない」という考えは正しくありません。銀行が貸してくれる上限額まで借りても生活に支障がないという方もいるでしょうが、低金利が続く現在では、多くの場合で『銀行が貸してくれる金額』>『無理なく返せる金額』という構図になります。「銀行が貸してくれるということは、それだけ借りても大丈夫ということです」というような説明をする不動産屋さんもいるかもしれませんが、鵜呑みにするのは少し危険です。なぜかというと、借りられる金額は機械的に決まる一方で、返せる金額は十人十色だからです。銀行からいくら借りられるかという目安は知っておいて損はないですが、それとは別に自分にとって適正な返済額はどの程度なのかをきちんと把握しておくべきでしょう。

機械的に決まる、借りられる金額

銀行ごとに内容の差こそありますが、主に下表のような4つの情報に基づいて、貸し出せる上限金額が決定します。勤務先や勤続年数に厳しい銀行、顧客情報をポイント化して判断する銀行などさまざまですが、いずれにしても借りられる金額は、借りる人の趣味や将来設計とは関係なくある程度機械的に決まります。

<借りられる金額を決める主な4要素>

年齢 何年間の住宅ローンが組めるのかが決まります。
完済年齢を80歳未満としている銀行が多く、例えば50歳だと35年ローンは組めません。
年収 借入額を計算するベースの数字となります。
給与所得者であれば源泉徴収票の税込み金額が該当します。
審査金利 銀行が審査を行う際に使用する金利です。
変動の場合、金利上昇に備えて3~4%程度を審査金利として用いる場合が多くあります。
返済比率 年収に対する年間の返済額の割合です。
30%以内、40%以内などの条件が銀行によって定められています。

一例を見てみましょう。30歳のご夫婦、ともに年収が400万円の場合、どれくらいの金額を借りることができるでしょうか。ここでは、フラット35で借り入れる想定で先ほどの4つの要素に当てはめてみます。年齢は30歳ですので、問題なく35年の住宅ローンが組めますね。お1人の年収は400万円なので、これが返済比率を計算する際の分母にあたります。2020年4月のフラット35実行金利(固定金利では、実行金利=審査金利)は、1.56%(期間35年・全額融資の場合)となっています。フラット35では、年収が400万円以上の場合、返済比率は35%以内に収めなさいという決まりがあります。その条件で借入可能額を計算すると、3,773万円という結果が出ます。ご夫婦それぞれで借りるとなれば、単純にその2倍の7,546万円までは借りられるということになります。返済額にして毎月約23.4万円となり、管理費や修繕積立金等が仮に毎月3万円とすると、毎月の住宅支出は26.4万円となります。

十人十色の、返せる金額

あなたの趣味は何でしょうか。自転車、音楽、読書、旅行などいろいろな趣味がありますよね。それでは、現在の家族構成は? 将来の家族計画は? 実家はどちらですか? どのくらいの頻度で帰省しますか? 質問をしだすとキリがないのですが、ここまでの数問においても、答えがすべて一致する人を見つけるのは至難の業だと思います。それくらい人それぞれ異なる生活を営んでおり、だからこそ住宅にかけられるお金も人それぞれなのです。自分にとって適正な返せる金額は、自分自身の暮らし方や将来設計、お金に対する価値観から導き出されるものですから、銀行が貸してくれる金額とは無関係なものなのです。以前のコラム「リノベーションのスケジュールを教えてください」でも触れたとおり、早めの段階でファイナンシャルプランナーなどと相談してみると良いかもしれません。おそらく先ほどの例のご夫婦も、7,546万円借りても大丈夫という結果にはならないはずです。

今回は、借りられる金額と返せる金額の違いについてお答えしました。ポイントとしては、借りられる金額を知っておいて損はないけれど、返せる金額とは直接は関係ないということです。結局は、自分自身の暮らし方や価値観から適正な予算を決めることが大切です。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、資金計画からのご相談も受け付けておりますので、ご興味を持たれた方はリノベーションセミナーや相談会にお越しください。

\みなさんからのご質問をお待ちしています!/

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

開催予定の「イベント・相談会・物件見学」