団地での子育て環境を考える

団地再生物語 | 2019.6.18

今回のコラムでは、団地での子育て環境を考えてみたいと思います。
子どものころの住まいや、周辺環境が鮮明に記憶に残っていませんか? 住まいでいえば、子ども部屋やそこから見える風景、キッチンやダイニング、リビングといった家族の様子から、階段の高さやフローリングの色まで細かいところまで記憶にある人もいるでしょう。また環境でいえば、遊んだ公園・学校・よく行ったお店などを思い出せるかもしれません。そう考えると、幼少期にどのような住まい・環境で育つかが、その後の住環境に大きく影響を与えるかもしれません。

団地が登場した当初の部屋は、40m²程度で家族が暮らせるように設計され、大量に供給されました。時代が進んでもファミリータイプの住戸がたくさんつくられ、子どもたちも団地の屋外空間でたくさん遊んでいました。
時代が進み、現在は、日本は少子高齢化といわれています。団地も例外ではなく、子どもが少なくなり、高齢者の一人暮らしも多くなりました。その結果、団地のなかでも使われていない施設や外部空間が多くみられるようになりました。もちろん子どもの数だけでなく、現代の子どもたちは勉強が大変であったり、ゲームやスマホといったツールが充実しているので、外で遊ぶことが少なくなっていることもあるかと思われます。

そういったことの影響か、現代の暮らしのなかでは、「モノ」より「コト」を大切にする考え方があります。
昔と違ってモノが充実している現代では、「モノ」を持っていることが普通になってきている反面、昔は人と人とでしていた遊びや体験といった「コト」が乏しくなってきており、外遊びの体験も貴重になってきているのかもしれません。
例えば、DIYの体験教室が流行っていると聞きます。日曜大工をしようとしても、どんな道具が必要で、どんな方法で行うかがわかりません。だけどやってみたい、子どもに体験させたいということなのかもしれません。

現在の団地の外部環境、大きな敷地があるのにも関わらず活用されていない空間や施設について考えてみます。もちろん敷地に余裕があるからこそ、住戸の陽当たりや風通しが良いということはありますが、それだけではもったいなさそうです。
URの町田山崎団地では、広い敷地を生かして広場で年1回、団地キャラバンという防災キャンプを行っています。そこでは、ただ単にアウトドア体験をするだけではなく、地震など災害時のいざというときに役立つ知識や、体験を得るためのイベントになっていて、団地の内外から毎年たくさんの人が参加されています。これも子どもたちに体験させたい楽しいイベントとして考えられているのかもしれません。

団地の屋外空間の活用としては、クラインガルデンという家庭菜園の貸出しや、住人が野菜の栽培から収穫、試食や販売などに参加できるビニールハウス農園がある、福岡県の日の里団地もあります。団地に住む人で、農業や市民農園の経験のある方が、子どもたちに教えることもできるかもしれません。
郊外の団地であれば、近くに山などの自然があることがあります。昔はそこで、子どもたちがカブトムシ・クワガタを採っていたことでしょう。外で遊べることの利点を生かせる団地であれば、団地の敷地内だけでなく、団地周辺の環境も取り込んで魅力的な自然空間で子育てができそうです。

田舎体験、アウトドア体験ができる、というのは子どもの情操教育としても良さそうです。
また、団地の集会所や空き施設を利用して、子どもの預かりサービスや児童館プログラムがあれば、共働き家庭にも役立ちそうです。

みなさんは、団地での子育て環境をどのように考えますか。ぜひご意見をいただければと思います。