デザインと機能を兼ね備えた、団地の「見切り材」
団地再生物語 | 2018.11.20
今回は、団地の住戸にある「見切り材」について考えてみたいと思います。「見切り材」とは、素材同士の継ぎ目に使う素材のことをいいます。
例えば、以前のコラム「団地に残る貴重なもの」では、ふすまを入れる床にある溝の部材「敷居」をご紹介しましたが、これは床素材の「見切り材」の1つです。
現代の住宅では、このような「敷居」などの床の「見切り材」を使用することは少なくなっており、フローリングでひとつにつながる床にしていることが多いようです。
団地では一般的に部屋同士の境目に「敷居」がありますが、ふすまを入れるのと同時に床を区切っています。
「見切り材」のメリットは、まず、部屋ごとに素材を変えることができます。床であれば、一方の部屋は畳、もう一方はフローリングにすることができます。素材が変わることで、どうしても数ミリの誤差はありますが、「見切り材」があることでその誤差による段差も感じづらくなります。
また、床のリフォームをする際には、部屋ごとのリフォームがしやすくなり、後々の手入れに柔軟性がでます。壁や天井も「見切り材」があれば同様にメンテナンス性が高まります。
「見切り材」は、デザインとしては空間の中に「線」としてあらわれます。素材としては、一般的に木材やアルミなどの金属が使われますが、団地では木材を使っていることが多いです。
天井に接している天鴨居(てんかもい)、床に接している敷居、壁に接している柱、に注目してみると、「見切り材」が線として床、壁、天井がそれぞれの素材で区切られていることがわかると思います。
MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトでは、見た目も古さを生かし、飴色に変化した「見切り材」をそのまま使用することで、空間のアクセントとなっています。
玄関には段差部分に上框(うわがまち)という「見切り材」があります。既存の団地では木材を使っていますが、玄関の印象を変えるために、そこを薄いアルミ材に変更しました。つまり機能性もありながら、デザイン面でも重要な役割をしている建材なのです。
団地では、後々手入れのしやすいつくり方で最初からつくっておくことで、コストをかけずに素材を変えていくことができる設計をしています。
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトでは、そういった見落としがちな素材の機能に着目して見直しながら、リノベーションした住まいにも引き継いでいきたいと考えています。
みなさんのご意見をぜひお聞かせください。